神様のお導き

ヤマト

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プロローグ

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 どこにでもいる平凡な社会人。そんなはずだった。夜道、不幸な事故に巻き込まれるまでは――。
 平凡だった僕に平凡ではない非現実的な事が起こった。それは、今流行りの異世界転生的なものだ。ほら、最近よくネット小説などで設定されているのあの設定だ。僕はあの手の漫画や小説もたまにたしなむ程度には触れているが、現実にあるものとして考えたことは無い。そりゃそうだ。そんなもの現実的に考えて起こりうるわけがない。妄想の中の産物だ。
 しかし、信じ難い事だが、それが今現実に起こっている。よくある展開として、交通事故に遭い、気がついたらめっちゃファンタジーな世界に転生していたというものだ。転生というか異世界に迷い込んだと言う感じではあるが。
 僕は今、とても言葉にはし難い、青く美しい水面が揺れる大きな湖畔に、生い茂る白い光を宿した木々に囲まれた絵画の様な世界に尻もちをついて呆然としている。確か僕は仕事の帰り道、不良に絡まれ、後ろから首元を引っ張られた後、頭をベンチの角にぶつけて気を失ったはずだった。
 で、気が付いたらこの幻想的な世界にいた訳。白い蝶々や見たことの無い動物がウロウロしている。僕の様子を窺うように見て、さ茂みの中へと去っていく。
「はぁ…」
 あまりに非現実的なことに頭がついていかず、溜め息のような感嘆のような吐息しか出てこない。頭をフル回転させろ。今ある状況を理解しろ。これは現実なんだ。夢なんかじゃない。そうだ、この世界の誰かに会えば、きっとちゃんと現実と受け入れられるはずだ。まずは人を探そう。そうしよう。
 そう思って、その場から立ち上がろうとした時だった。
「こんにちは」
「っ!」
 突然誰かに話しかけられた。こんな至近距離にいるのに気配や足音、何一つしなかった。その為、僕は驚いて勢いよく顔を上げてしまい、逆に相手を驚かせてしまった。
 声を掛けてきたのは女性で、目を疑う程の美貌の持ち主であった。僕は彼女の容姿を見て更に絶句する。まるで女神でも降り立ったような錯覚に襲われる。ゲームの世界からCGのキャラクターが現れたかのような、あまりにも整った目鼻立ち。眉目秀麗、容姿端麗。そんな言葉では表せないほどの美しさ。真っ白な髪はまるで絹のように美しく、空から降り注ぐ光を反射して、キラキラと輝いている。長い髪を後ろで一つに束ね、彼女から見て左側の髪は三つ編みに結ってある。その髪色と同じ真っ白なまつ毛。まつ毛の色が黒くないだけでこんなにも幻想的になるのかと。ふと気づいたが爪の色も髪と同じ白色だ。透き通った水面のような淡く色づく青色の瞳は、僕の姿を映し出し、戸惑ったように目を瞬きさせる。雪のように白い肌はきめ細かく、滑らかでまるで陶器のよう。ほんのりと頬を染める桃色は僅かな色気を帯び、色っぽくさえ見えた。左耳には金色のチェーンからぶら下がる赤い宝石のついたピアスをしており、髪の隙間からユラユラと揺れている。服はフード付きの真っ白なジャケットを羽織り、その下は和服だろうか。襟が赤く白い着物に、赤い袴を穿いている。靴は草履などではなく黒い革のブーツだ。この容姿で日本人――なのだろうか…?
「あの…?」
 彼女は困惑した様子で僕に話しかけた。僕が絶句したまま反応しなかったせいだろう。申し訳ないことをした。僕は慌てて「あっ、はい!?」と、返事をしたが、挙動不審になってしまい、声が裏返ってしまった。
 そんな僕の様子を見て、彼女はくすくすと笑い、優しい声音で「大丈夫ですよ」と、言ってくれた。
「こんにちは。私は白。貴方は?」
「えっ、あ、はい。僕は山上拓斗って言います。よろしくお願いします…」
「ふふ、よろしくお願いします」
 彼女は白さんというらしい。僕を安心させるように優しく笑って、僕の目線に合わせるように、その場にしゃがみ込んだ。
「あの、白さんは…日本人…なんですか?」
 僕はたくさんの疑問が浮かぶ中、とりあえずパッと思いついたことを質問した。
「日本語もお上手ですし…」
「……」
 すると、白さんは少し何か考えるように顎に手を置き、少しの間沈黙した。僕は何かまずいことでも言ってしまったのだろうかと不安になってしまい、「あ、あの…?」と、恐る恐る声を掛ける。白さんは「あぁ、すいません」と、一言置いてからこう言った。
「そうですね、ここら辺は説明が難しいし、長くなるので、もし宜しければ一旦私の家へいらっしゃいませんか? そこで聞きたいこと、出来る限りお答えしますよ」
 僕は頭をベンチにぶつけてからわからないことだらけだ。質問に答えてくれると言うし、彼女に悪意などはなさそうだ。ここで一人でいても仕方ないだろうし、僕は彼女の案に乗ることにした。
「は、はい! よろしくお願いします」
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