神様のお導き

ヤマト

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プロローグ

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 連れてこられたのはかなり大きな日本屋敷。何処までも塀が続いており、玄関だけでもかなり大きい。何百坪あるのだろうか。小さな家しか見た事のない僕には想像できない。しかし、こんなにも大きな家なのに古びた様子もなく、寧ろ新品同様の美しさのある家だった。こんなだだっ広い家を誰かが手入れしていると言うのか? 白さん一人では絶対に無理だろう。何人いればこの家の手入れは行き届くのだろうか。
 そんなどうでも良い疑問を浮かべながら、白さんに招かれて、大きな玄関をくぐると、突然、一人の男が白さん目掛けて突進して来た。
「白ー! おっかえりー! 待ってたよー!」
 声を弾ませ、緩みきった笑顔で白さんに抱きつくと、ちゅっちゅと忙しなく白さんの頬にキスをする。白さんは「やーめーてーくーだーさーいー!」と、顔を背けて、嫌々と全身で彼を拒絶する。
 見れば、彼もかなりの美形だ。光り輝く金髪で、前髪が長く、彼の右目を覆い隠している。白さん同様、髪色と同じ金色のまつ毛。。瞳は青空のように青く、縁が湖のように少し緑がかっている。不思議な色だ。白いロングジャケットに黒い着物なのだが、肩から長い布のようなものを提げていて、腰には黒いベルト。その下は袴ではなく、白いパンツ。黒い革の手袋をつけており、和洋折衷と言ったような格好ではあるが、僕がいた日本では…というか、僕がいた世界ではなかなか見ない格好だ。
 ――と、言うことは、やっぱりここは異世界?
 そんなことを考えながら、二人の様子を見ていると、やっと男を無理矢理引き剥がした白さんが、改めて僕に向き直って、彼を紹介してくれた。
「すいません、騒がしくて。こちら私の兄の優輝。私は優兄と呼んでいます」
 笑顔で紹介してくれた白さんとは裏腹に、初めて僕を視界に入れたであろう優輝さんは、心底嫌そうな顔をして、まるでゴミを見るかのような目で僕を見て、溜め息混じりに一言こう言った。
「は? ンだ、これ」
 最早僕を人間とは認識していないらしく、これ扱いだ。
「もう! 優兄! お客さんに向かって失礼でしょ!」
 白さんが優輝さんにプンプン怒ると、優輝さんはまた緩みきった笑顔で「ごめーん、はくぅ~」と、くねくねしながら謝った。どうも優輝さんは白さんに甘いと言うか、白さんのことが大好きらしい。優兄ということは多分兄妹なんだろうけど、家族として好きなのかどうなのか、そこはイマイチわからない。
「優兄、こちらは山上拓斗さん。先程湖のところに居たので連れて帰りました」
 僕のことを白さんが紹介してくれたけど、優輝さんは心底興味なさそうに「ふーん」とだけ言った。
「そんなことより白ぅー!」
 すぐに話を切り替えて、白さんと話を始めようとする優輝さんに、白さんは「もう!」と、怒ってから、今度は違う人の名前を呼んだ。
「銀ー! 申し訳ないけどちょっと手伝ってー!」
 白さんが遠くに向かって声を掛けると、今度は廊下の向こうから白さんと同じ白い髪の男が現れた。
「何ー…?」
 気だるそうに現れた銀と呼ばれた彼は、少し白さんに似ているように見えた。斜めにざっくばらんに切られた前髪に、襟足は肩につくぐらいの長さ。まつ毛の色はやはり髪色と同じ白で、爪も白。もしかしたら、この世界の人は髪とまつ毛と爪の色が一緒なのかもしれない。瞳の色は白さんと同じ薄い青。右耳には白さんと対になるように銀色のチェーンで繋がれた青色の宝石がついたピアスがユラユラと揺れていた。白さんと真逆で黒と青の色で纏められた服。襟の青い黒い羽織りに、和服と言って良いのかわからない黒いシャツ。黒いズボンを穿いていて、全体的には暗い。
 銀さんは頭をボリボリと掻きながら、白さんと優輝さんを一瞥する。それだけで状況を理解したのか、銀さんは無言で優輝さんの首根っこを掴む。
「ちょっ!? なにすんの! 銀!!」
 じたばたと暴れる優輝さんを目にもくれず、来た廊下を優輝さんを引っ張りズルズルと連れ去っていく銀さん。
「やーめーろー!」
 優輝さんの悲鳴も虚しく、優輝さんは銀さんの手によって、廊下の向こう側へと連れ去られて行った。
「ほんとすいません、騒がしくて…」
 申し訳なさそうに頭を下げる白さんに、こちらこそ申し訳なくなって、「いやいやこちらこそ!」と、僕は慌てて手を横に振る。
「先程の子は銀。私の双子の弟なんです」
「あっ! なるほど、どうりで似ていると…」
「ろくに紹介もできずすいません」
「いやいや、僕こそ急にお邪魔になったばっかりにすいません!」
 お互い謝ってばっかり居る二人に、僕と白さんは顔を見合わせて軽く笑った。
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