神様のお導き

ヤマト

文字の大きさ
57 / 173
続!0話目!チュートリアル②

0-9

しおりを挟む
 買い物リストを纏め、僕らは街へと繰り出していた。昨日桜が連れて行ってくれた街とは違って、今回は都会のような高層ビルが縦並ぶ、近代的且つSFチックな世界だった。桜が昨日言っていた、ビルがある街とはこの街のことだろうか。見たことも無い空飛ぶ乗り物を乗った人が、空中を目まぐるしく飛び回っている。ガラス張りのビルは高いものでは、雲の向こうへと消えているくらいだ。地震が起きたらヤバそう。街は店の呼び込みなんかも多く、活気的で見るもの全てに目が奪われる。
「うわー、凄いね」
「ここが一番品揃えが良いので、買い物する時は大抵ここに来るんですよ。ただ、僕はあまりこういった騒がしい街は好きでは無いですし、テラへの干渉は控えたいので、買い物したらすぐ帰りますが」
「そうなんだ…」
「まぁ、貴方が見て回りたいと思うのなら、誰かを誘えばきっと着いてきてくれますよ」
 そうは言うものの、アキラくん自身が着いてきてくれる訳では無く、本当にアキラくんはこの街にはあまりいたくないようだった。
「あのビルが大型スーパーになっています。あそこで買い物したら、さっさと帰りましょう」
「分かった」
 僕らはアキラくんが指を差した、大きなビルを目指して歩き出した。店に着くまでに、キャッチセールスや試供品の販売など、多くの人に声を掛けられ、確かに、こんなにも頻繁に絡まれるのは疲れるかもしれないと、内心苦笑いした。
 ビルの中に入ると街の外同様、中もとても賑やかで、たくさんの人が買い物をしていた。アキラくんの言っていた通り、品揃えはとても良く、右を見ても左を見ても、被ることなく色んな種類のお店がひしめき合っていた。
「うわー…」
 中には見たことの無いものも売っていて、僕の目には全てが新鮮に見える。
「今日は食材だけで良いので、この一階だけで全てが揃います。ここもかなり広いし、人混みが凄いので、なかなか地図を覚えるのが大変でしょうが、回数を重ねればいつの間にか覚えているものなので、気楽に一緒に買い物して下さい。もちろん、もっと静かな普通のお店もありますので、そちらで買い物するのも良いですけどね」
 僕は人混みでアキラくんからはぐれないよう気をつけながら、アキラくんが買い物をするのを見て回った。たまに加工食品などで、どちらが好みか聞かれたりして、多少の物選びには貢献したが、本当に着いて回っていただけだ。とても申し訳なく思いつつ、早く店を覚えるように頑張らねばと、強く意識した。

 ある程度の買い物を終えた頃、僕はある物に目を奪われた。
「あ~……!」 
 それは、濃厚そうなしっとりとした生地に、艶やかに煌めく飴色の表面、下はザックリとしたクッキー生地……! そう、チーズケーキだ!
「どうしたんですか?」
 僕がチーズケーキの並ぶショーケースの前で止まった事に気付き、アキラくんがそう声を掛けてきた。
「あぁ、いや、別に……」
 買い物に連れてきて貰っているのに、チーズケーキを見ていたら、強請っているように思われそうで、僕は慌てて何もないように手を横に振った。けれど、そんな僕の誤魔化しもあっさりと見透かされ、僕の目の前にあるチーズケーキを見て「あぁ」と、アキラくんは頷いた。
「チーズケーキお好きなんですか?」
 アキラくんの問いに、僕は何も嘘は吐けないと確信し、項垂れながら「うん」と、自嘲気味に返事をした。
「チーズケーキに限らず、僕、甘いものが好きなんだ」
 そう白状すると、アキラくんは少し表情を和らげた。
「それは奇遇ですね。僕も甘いもの好きですよ」
「え、ほんとに!?」
「えぇ。甘いものを食べる時は、心が癒されます」
 アキラくんもまさか甘いものが好きだったとは。イメージだけど、甘いものとか苦手そうだと思っていたので、同じ味覚の好みがあることに再び親近感を覚え、僕は嬉しそうに笑ってみせた。
「わかる! 甘いもの食べると、どんな疲れも一気に吹き飛ぶんだよね」
「えぇ。甘いものには、甘いものにしかない魔力があります。拓斗さんとは良い友達になれそうです」
「…………!」
 先程まで甘いものという共通の好みがあり興奮していたが、それよりもアキラくんが放った友達というワードに、僕は一瞬体を強ばらせた。友達……! 僕は会社に務め始めてから、仕事に追われる毎日で、家族はおろか、友達とも段々疎遠になっていた。こんな僕を同僚などではなく友達と思ってくれるのか。この世界でも、僕のことを友達と呼んでくれる人が出来るのか。アキラくんの何気ない一言に、嬉しさやら、恥ずかしさやらで僕の胸は震えた。
「チーズケーキ、せっかくですし買っていきましょうか。拓斗さんの部屋にもちゃんた冷蔵庫ありますよね?」
 アキラくんは僕の様子に気付いているのかいないのかわからないが、そう話を続けてくれた。友達というワードに喜んでいることを気づかれないように、顔がにやけるのを堪えて、何気ない振りをして返事をした。
「うん、あるよ! 昨日桜が買ってくれたんだ」
「そうですか。なら、僕は細かい場所に空間転移を使えるわけじゃないので、すいませんがチーズケーキは自分で持って、帰ったら冷蔵庫に入れて置いてくださいね」
「ありがとう…!」
「他にも食べたいものがあれば、買っていきましょう」
「良いの!?」
「もちろん」
 僕は色んなことに嬉しさを感じ、声を弾ませた。彼との何気ない買い物だけでも、それが忙しくしていた前の日々よりとても楽しくて、僕は終始ウキウキとした様子で彼と店の中を歩いて回った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...