神様のお導き

ヤマト

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1話目! 白の章 枯れない愛

1-1

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 僕は白さんに誘われて、街へと買い出しに来ていた。あれから一週間経ったところで、ある程度今の暮らしにも慣れてきた。
 今日買い出しに来ていたのは、この前アキラくんが連れてってくれたようなビル群の街とは真逆で、緑に囲まれ、とても穏やかで、田舎のノスタルジーな雰囲気に包まれた街だった。
 買い物は大したものではなく、ただ街の見学も兼ねての散歩のようなものだったので、別段特に生き急ぐわけでもなく、ゆるりと街を歩いていた。
 今日の白さんは外国の白い衣装に身を包み、口元を覆い隠す白いマスクを付けていた。マスクと言っても布で出来たマスクではなく、素材は何かわからないが、お面のようなもう少し固い素材で出来ていて、綺麗な彫刻も施されていた。
 どうも変身するのにも、想像力などが必要で、毎回普通の容姿の人を想像するのは難しく、美人か不細工、極端になって難しいらしいので、姿を隠す時は仮面を付けて歩いているらしい。仮面を着けている人はこの世界にはチラホラいるので、違和感こそないものの、それでも彼女の美しさは隠しきれていないが。
「穏やかで良い町ですね」
「ふふ、そうでしょう。田舎過ぎると言うわけでもなく、ある程度のお店は揃っていますし、不便はなく暮らせますよ」
「こういう場所で暮らすのもありかも知れませんね」
 僕は、将来住むかもしれない候補の町として、この町をリストに刻んだ。
 そんな時だった。僕は杖をついてあぶなっかしく歩く、一人のおばあさんに目がついた。おばあさんは杖で道を確かめるように叩き、ヨロヨロと歩いている。そこに角から現れた二人組の屈強な男性にぶつかられ、おばあさんはよろめき、その場に倒れ込んでしまう。
「おばあさん!」
 僕は咄嗟におばあさんの方へと駆け寄り、おばあさんの体をゆっくりと支えて、上半身を起こしてあげた。ぶつかった人も「すまん!」「大丈夫か!?」と、慌てておばあさんに駆け寄り、おばあさんを両脇から支えて、立たせてあげていた。
「マリーさんじゃないか」
「またおじいさんの墓参りに行くのか?」
 どうも男性たちはおばあさんと知り合いらしく、おばあさんにそう話しかけた。
 おばあさんは「えぇ」と頷き、また杖を握り直して!覚束無い足取りで歩き始めた。
「なぁ、あんた」
 突然、男性に話しかけられ、僕はギョッとして、目を瞬かせながら彼らに向き直った。
「マリーさんに着いてってやりたいが、俺たち仕事でさ。彼女、目が見えないんだ。もし良かったらで良いんだが、彼女に付き添ってやってくれないか」
「俺からも頼む。あの人は早くにじいさんを亡くしてて、頼れる人もいないんだ」
 二人の屈強の男性たちは見た目によらず、とても優しい心の持ち主らしい。おばあさんのことを軽く説明すると、僕に深々と頭を下げた。
 すると、後から来た白さんが僕の方を見た。あまり人とは干渉したくないみたいだけれど、僕もおばあさんをどうしても放っておけはせず、目で白さんに訴えた。助けてあげたいと。
 白さんは一瞬困ったような素振りを見せたが、小さく溜息を吐いて「良いでしょう」と、呟いた。僕はその言葉に目を輝かせ、「ありがとう!」と、白さんに一言お礼を言った。
「わかりました。おばあさんのことは僕らにお任せ下さい」
 僕は彼らにそう言うと、彼らも安心したように笑って、「悪いな」と、僕と白さんの方を軽く叩く。彼からしたら軽く叩いたつもりかもしれないが、僕らからすると、少し痛いくらいではあるが。
 男たちは僕らに軽く挨拶して、踵を返してその場から去って行った。
 僕らも彼らを見送ると、急いでおばあさんの方へと向かった。少し話し込んだとは言え、おばあさんは目が不自由らしく、ほとんどこの場所から移動していなかった。
「おばあさん」
 僕はおばあさんの横へ移動し、驚かさないように、少し声のトーンを落として声を掛けると、おばあさんは僕の方へと顔を向けた。
「初めて聞く声ね。貴方はだぁれ?」
 おばあさんは優しい声音でそう尋ね、やんわりと頬を緩ませた。どうもとても優しい人柄な人で間違いはないようだ。
「僕は拓斗です」
「おばあさん、初めまして。私は白」
 白さんも僕の後からちゃんと名を名乗り、目が見えないにも関わらず、きちんと一礼していた。
「タクトさんに、ハクさんね。良いお名前ね。私はマリー。初めまして」
 マリーさんは曲がった腰を更に曲げて僕らに頭を下げて挨拶してくれた。
「ところで、私に何か用かしら?」
「えぇ。先程ぶつかって来た男性方から貴女のことを頼まれて。目が不自由らしいですけど、どちらまで行かれるのですか?」
 白さんが手短にそう説明すると、マリーさんは「あぁ」と、何か納得したように頷いた。
「もう、私のことなんてほっといてくれても良いのに。優しい子たちね」
 優しい子たちというのは、きっとあの男性たちのことだろう。そりゃそうだ。あれだけ屈曲なガタイをしていても、マリーからしたら子供も同然。子と呼ぶのは極々自然なことだろう。
「でもね、貴方たちも用事があるだろうし、ご迷惑を掛けるわけにはいかないわ。私は大丈夫だから、自分の時間を大切にしてちょうだい」
 マリーさんはそう言ってにっこりと笑って見せた。なんて――なんて優しい人なのだろうか。この人を助けたい。あの男性たちがそう思ったのもわかる気がする。僕と白さんは顔を見合わせ、お互い小さく頷くと、僕はマリーさんに優しく返事をした。
「大丈夫ですよ。もう用事も終わってますし、僕らも貴女の助けになりたいんです」
 そう言うと、おばあさんは少し困ったように考える素振りをして、一頻り唸った後、口を開いた。
「そう? じゃあ、ご迷惑かもしれないけど、少しだけこの老人に付き合って下さる?」
 マリーさんの願ってもない返事に、僕は「とんでもない!」と、首を横に振った。
「僕らもそう言ってもらえて光栄です。よろしくお願いしますね」
「えぇ、こちらこそ」
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