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1話目! 白の章 枯れない愛
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僕と白さんはおばあさんの手を引きながら、おばあさんが教えてくれた道順通りに道を進んだ。その間、おばあさんは自分が若かった頃の話をしてくれたり、僕らの話を聞いてきたりして、楽しく歩いた。
だが、ひとつ気になることがあった。おばあさんは、時折、酷く咳き込むのだ。何かの病気かと聞いたが、おばあさんもわからないらしく、歳かねぇ…と、笑っていた。そんなおばあさんのことを、白さんは何か思ったのか、しばらくじっと見つめていた。
途中花屋さんにもより、マリーさんは一輪だけ花を買っていた。それは僕も知っている花で、黄金色に輝くのレモンマリーゴールドだった。
しばらく歩いたところ、緑が生い茂り、草花の緑の絨毯が生い茂るところに、それはあった。綺麗に手入れされたそれは、古びた様子も無く、美しい状態を保っていた。それは――お墓。墓石にはビリー・ゴールド、ここに眠ると書いてあった。
「あぁ、あなた……」
ゴールドということは、マリーさんは、マリー・ゴールドという名前なのだろうか。だとしたら、花の似合う彼女にはとてもピッタリな名前だ。だから、マリーゴールドの花を買っていたのか。
マリーさんはそのお墓を慈しむように、かと思えば悲しむように見て、涙を流した。マリーさんは杖も落としてその場に座り込み、先程店で買ったマリーゴールドの花を一輪添えて、顔を覆ってわっと泣き出した。
「ごめんなさい…。ごめんなさい……っ。私を許して……っ」
マリーさんの悲痛な声は僕の胸にまで突き刺さった。何がこんなにもマリーさんを悲しませているのか。何が苦しませているのか。僕にはわからなかった。けれど、白さんは何かに気付いているようで、ずっと黙って彼女を見つめていた。
「うぅ……。貴方は私を恨んでいるかもしれないけれど、私は今でも貴方を愛しているわ……ごめんね……」
マリーさんは肩を震わせしばらく泣いていた。僕はマリーさんの肩を摩ることしかできず、ずっとマリーさんの傍に寄り添った。
しばらく泣いて、マリーさんはすっきりしたのか、苦笑しながら僕の手を取り、ゆっくり立ち上がった。
「みっともない所を見せてごめんなさいね」
「いえいえ! そんな。誰だって家族や恋人を亡くされたら悲しみますよ」
僕は気の利いた言葉ひとつ言えず、そんな当たり障りの無い言葉しか返せなかった。
すると、今度はずっと黙っていた白さんが口を開いた。
「失礼ですが、ご主人と何かあったのですか……?」
白さんには何もかも分かっているように見えたが、僕にもわかるように敢えて質問してくれたのだろうか。
白さんに質問されて、マリーさんは「えぇ…」と、ぽつりぽつりと事情を僕たちに話してくれた。
「もう何年も前のことです。主人は……昔は、木こりをやっていました。でも、私は目が悪いでしょう? 私の目は、手術しないと治らないもので、手術には莫大なお金が必要でした。……ゲホッ……ゴホッ……すいません。……木こりではなかなかそんな大金得られませんでした。だから、主人は私のために軍隊へ入ったんです」
マリーさんは時折咳き込み、それに対して謝りながら話してくれた。軍隊へ入る――ここまでくれは、話の道筋は粗方わかる。
「主人は、戦闘もろくにした事がなく、そのまま帰らぬ人となりました……。うっ……うぅ……ひっく……あの時、私が、主人を止めていればっ……私のためにって、無理に笑顔を作って笑ってくれたんです……っ。私が、あの優しさに甘えたからっ……だからっ!」
マリーさんは感極まって、嗚咽を漏らしながら泣きじゃくった。
「大丈夫ですよ、もう大丈夫……」
僕はずっと背中をさすり、彼女が泣き止むまで何も言わず、ただただ待った。白さんもポケットからハンカチを出して、彼女の目から流れる涙を優しく拭った。
「辛いことを聞いて申し訳ありません……。けれど、貴女がここに来る理由はそれだけじゃないですよね……?」
白さんは、やはり何かを知っている様子で、彼女を刺激しないように、なるべく優しい声音でそう尋ねた。
「えぇ……っ。ゴホッ……。そうです……。実は、一ヶ月程前からでしょうか……。毎日悪夢を見るんです……。主人が私のせいで死んだのだと罵り、首を絞める夢に――」
「そんな……!」
僕はそれを聞いて、驚きの声を上げた。
「最初は私も罪悪感のあまり、悪い夢を見ただけだと思ったんですけど、毎日、毎晩、同じ夢を見るんです……。馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが、それは本当のことで……ゲホッ……きっと、主人が私のことを憎むあまり、そんな夢を見るようになったのだと……。私ももう長くはありません……。だから、死に近くなったことで、より鮮明に彼の気持ちを感じ取れるようになったのでしょう……」
そう悲しみに暮れながら語る彼女の背中は、小さく震えていた。最愛の人に先立たれ、更にはそんな殺されかけるような夢まで見るなんて……。
僕は、なんとしても彼女を助けたい。そう思った。僕には何も出来ないけれど、それでも、どうか、どうか――神様……。
だが、ひとつ気になることがあった。おばあさんは、時折、酷く咳き込むのだ。何かの病気かと聞いたが、おばあさんもわからないらしく、歳かねぇ…と、笑っていた。そんなおばあさんのことを、白さんは何か思ったのか、しばらくじっと見つめていた。
途中花屋さんにもより、マリーさんは一輪だけ花を買っていた。それは僕も知っている花で、黄金色に輝くのレモンマリーゴールドだった。
しばらく歩いたところ、緑が生い茂り、草花の緑の絨毯が生い茂るところに、それはあった。綺麗に手入れされたそれは、古びた様子も無く、美しい状態を保っていた。それは――お墓。墓石にはビリー・ゴールド、ここに眠ると書いてあった。
「あぁ、あなた……」
ゴールドということは、マリーさんは、マリー・ゴールドという名前なのだろうか。だとしたら、花の似合う彼女にはとてもピッタリな名前だ。だから、マリーゴールドの花を買っていたのか。
マリーさんはそのお墓を慈しむように、かと思えば悲しむように見て、涙を流した。マリーさんは杖も落としてその場に座り込み、先程店で買ったマリーゴールドの花を一輪添えて、顔を覆ってわっと泣き出した。
「ごめんなさい…。ごめんなさい……っ。私を許して……っ」
マリーさんの悲痛な声は僕の胸にまで突き刺さった。何がこんなにもマリーさんを悲しませているのか。何が苦しませているのか。僕にはわからなかった。けれど、白さんは何かに気付いているようで、ずっと黙って彼女を見つめていた。
「うぅ……。貴方は私を恨んでいるかもしれないけれど、私は今でも貴方を愛しているわ……ごめんね……」
マリーさんは肩を震わせしばらく泣いていた。僕はマリーさんの肩を摩ることしかできず、ずっとマリーさんの傍に寄り添った。
しばらく泣いて、マリーさんはすっきりしたのか、苦笑しながら僕の手を取り、ゆっくり立ち上がった。
「みっともない所を見せてごめんなさいね」
「いえいえ! そんな。誰だって家族や恋人を亡くされたら悲しみますよ」
僕は気の利いた言葉ひとつ言えず、そんな当たり障りの無い言葉しか返せなかった。
すると、今度はずっと黙っていた白さんが口を開いた。
「失礼ですが、ご主人と何かあったのですか……?」
白さんには何もかも分かっているように見えたが、僕にもわかるように敢えて質問してくれたのだろうか。
白さんに質問されて、マリーさんは「えぇ…」と、ぽつりぽつりと事情を僕たちに話してくれた。
「もう何年も前のことです。主人は……昔は、木こりをやっていました。でも、私は目が悪いでしょう? 私の目は、手術しないと治らないもので、手術には莫大なお金が必要でした。……ゲホッ……ゴホッ……すいません。……木こりではなかなかそんな大金得られませんでした。だから、主人は私のために軍隊へ入ったんです」
マリーさんは時折咳き込み、それに対して謝りながら話してくれた。軍隊へ入る――ここまでくれは、話の道筋は粗方わかる。
「主人は、戦闘もろくにした事がなく、そのまま帰らぬ人となりました……。うっ……うぅ……ひっく……あの時、私が、主人を止めていればっ……私のためにって、無理に笑顔を作って笑ってくれたんです……っ。私が、あの優しさに甘えたからっ……だからっ!」
マリーさんは感極まって、嗚咽を漏らしながら泣きじゃくった。
「大丈夫ですよ、もう大丈夫……」
僕はずっと背中をさすり、彼女が泣き止むまで何も言わず、ただただ待った。白さんもポケットからハンカチを出して、彼女の目から流れる涙を優しく拭った。
「辛いことを聞いて申し訳ありません……。けれど、貴女がここに来る理由はそれだけじゃないですよね……?」
白さんは、やはり何かを知っている様子で、彼女を刺激しないように、なるべく優しい声音でそう尋ねた。
「えぇ……っ。ゴホッ……。そうです……。実は、一ヶ月程前からでしょうか……。毎日悪夢を見るんです……。主人が私のせいで死んだのだと罵り、首を絞める夢に――」
「そんな……!」
僕はそれを聞いて、驚きの声を上げた。
「最初は私も罪悪感のあまり、悪い夢を見ただけだと思ったんですけど、毎日、毎晩、同じ夢を見るんです……。馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが、それは本当のことで……ゲホッ……きっと、主人が私のことを憎むあまり、そんな夢を見るようになったのだと……。私ももう長くはありません……。だから、死に近くなったことで、より鮮明に彼の気持ちを感じ取れるようになったのでしょう……」
そう悲しみに暮れながら語る彼女の背中は、小さく震えていた。最愛の人に先立たれ、更にはそんな殺されかけるような夢まで見るなんて……。
僕は、なんとしても彼女を助けたい。そう思った。僕には何も出来ないけれど、それでも、どうか、どうか――神様……。
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