神様のお導き

ヤマト

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2話目!銀の章 アダマス

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 僕は銀さんに連れられて、たくさんの屋台の食べ物を食べた。焼きそばやたい焼きに似た食べ物などもあって、少し親近感を覚える。
「屋台のご飯ってなんでこんなに美味しんだろ!」
「ん~、雰囲気じゃない? 雰囲気も含めて屋台の味って感じ~」
「あっはは! そうかも」
 銀さんでもそういうことは思うんだな。僕は楽しくなって、顔をほころばせて笑った。
 そうやって食べ歩きをしていると、「よっ! そこの二人組の兄ちゃん!」と、店の人に声を掛けられた。何かと思い、僕と銀さんは咄嗟にその声の聞こえた方へと顔を向ける。視界の先にあったのは、たくさんの商品が並べられた射的屋だった。
「どうだい! 一回やってみないかい!」
 元気のある店主に僕は少し圧倒されながらも、銀を見た。先程から食べ歩きはしていたが、こう言った遊ぶ店には足を止めてはいなかった。
「どうするの?」
 僕がそう銀さんに聞くと、銀さんは僕を一瞥だけして、射的屋のコルク銃を手に取った。
「おっ、やる気だねぇ!」
「言っとくけど、俺、凄いよ」
 銀さんは、店主にお金を払い、コルク銃を構えた。玩具の銃だと分かっているのに、それでも銃を構える銀さんは、とても迫力があってカッコよかった。
 銀さんは無言で商品が並ぶ棚に狙いを定めると、一発、また一発と、何の迷いもブレもなく、ポンポンと商品を倒していく。
 その正確さとスピードに、僕も店主も圧倒され、ポカンと口を開いて固まってしまう。あっという間に全ての商品が銀さんの手によって倒されてしまい、そこでハッと我に返った店主が、「うわぁー!」と、叫んだ。
「こりゃ驚いた! まさかこんなにも早く全部倒しちまうなんて! うちも商売上がったりだねぇ!」
 それでも嫌な顔一つしない店主には驚いたもので、これは商人の鏡だと僕は思った。
「まぁこんなたくさん商品貰っても仕方ないし、俺とこいつの二つ分だけくれたら良いよ。俺もそこまで鬼じゃないから」
「えっ!? 良いのかい!? なんか俺から呼び込んだのにすまないねぇ!」
「ん」
 銀さんは特に店主の為を思って言った訳でも無さそうで、本当に全部貰っても仕方ないからそう言った風だった。
 銀さんは僕に目線をやると、店主が並べてくれた、たくさんの商品たちを指差した。
「好きなの貰えるみたいだし、先に一つ選びなよ」
 僕は銀さんに促され、乱雑に並べられた商品、一つ一つに目を通した。せっかく銀さんが取ってくれたんだから、ちゃんと真剣に良いものを選びたい。並べられてる商品は、やはり子供向けの屋台だからか、人形や玩具、ぬいぐるみなどが多かった。それでも大人に向けた商品もチラホラあって、僕はその中で一際存在感を放つ鳥のモチーフをしたブローチに目が惹かれた。
「おっ! お客さん、目が高いねぇ! それは天空を守護する鳥の精霊をモチーフに作られた代物でね。身につけてると、その精霊に守られるって話だよ」
「へー……!」
 僕は店主の話を聞いて、ますますそのブローチに惹かれた。色んな角度から見てみても、細部まで綺麗に作り込まれており、目の部分は、赤い宝石が嵌め込まれている。銀さんも横からそのブローチをマジマジと見ていたが、鑑定結果、とても良いものなのか、銀さんにも「いいんじゃない」と、勧められた。
「その目に嵌め込まれてる宝石も良いものだし、確かにそのブローチからは精霊の加護を感じる」
「兄ちゃん、わかるのかい!?」
「ん、まぁね。そのスーツにも似合いそうだし、それにしたら?」
 銀さんのお墨付きももらったことで、僕は「うん、そうする!」と、声を弾ませて返事をし、早速、着ていたスーツの襟にそのブローチを付けてみた。
「ど、どう? 変じゃない? 着負けしてない?」
 僕はどうにも、自分が平凡な容姿であることに、必要以上に自覚を持っていて、何を着るにも服に負けてないかとかを気にしてしまう。そんなこと気にしないで、好きなものだけ着れば良いのはわかっているのだけれど、それもなかなか叶わない。
「おっ! 良いねぇ! 兄ちゃん似合ってるよ!」
「うんうん、似合う似合う」
 店主は凄く勢い良く褒めてくれるが、銀さんは本当にそう思ってるかわからない、抑揚のない声で淡々と褒めながら、手を軽く叩いてくれる。どう受け取ったら良いのかわからないが、褒めるのが苦しいほど似合っていない訳ではなさそうだし、僕は満足して店主と銀に礼を言った。このブローチは思い出の記念になるだろう。大切にしようと密かに心に誓った。
「銀さんは何を選ぶの?」
「ん?」
 僕が商品を選び終わり、今度は銀さんが選ぶ番になった。銀さんは「ん~……」と、少し唸った後、直ぐにある一つの髪留めを手に取った。
「あれ? 女物のようだけど……」
 銀さんも髪は長いが、手に取った髪留めは女性向けのもので、銀さんには似合いそうにない。髪留めには白く輝く宝石の花がいくつも並べられており、繊細な装飾がされている。
「ん、白に良いかなって」
「!」
 あんなに白さんから離れたがっていたのに、銀さんはやっぱりなんだかんだ白さんのことを大切に思っているのだろう。気分転換に遊びに来たというのに、結局白さんのことを考えている。僕は、そんな銀さんを見て、心がホクホクとして微笑ましくなり、うっかり頬が緩んでしまった。
「何、その顔」
 それが銀さんの気に障ったのか、僕は銀さんから片手で両頬を押さえつけられ、銀さんに謝る羽目となった。
「イデデデデ! ごめんなひゃい!」
「ん」
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