神様のお導き

ヤマト

文字の大きさ
66 / 173
2話目!銀の章 アダマス

2-1

しおりを挟む
「拓斗、今から出掛けるよ」
「えっ!?」
 皿洗いを終えた頃、突然銀さんにそう言われ、僕は思いもしない誘いにギョッとして目を丸くした。
 聞き間違いかな?
 そう思うくらい意外な誘いだった。そもそも銀さんは必要以上に外には出たがらないし、一人の方が好きそうな上、ましてや同行者に白さんではなく、僕を選ぶだなんて。どんな風の吹き回しだと目を丸くしていると、銀さんが苦虫を数匹噛み潰したような表情をして、事の経緯を話してくれた。



 銀は部屋の前に置いてある洗濯物の入った洗濯カゴをそのままにしていることがある。そうすると、すぐさま隣の部屋の白が来て、銀を叱る。
「銀、ちゃんと洗濯物は畳まなきゃダメよ」
 一人で必要以上にゴロゴロしている時も――
「銀、そろそろ少しは動いた方が良いよ」
 先程ご飯を食べている時も――
「銀、好き嫌いはダメ! 陽菜もちゃんと食べてるでしょ」
 端に寄せていたピーマンを無理矢理食べさせられた。
 そして、叱らない普段の時も――
「銀、一緒にゲームしましょ!」
「銀、一緒に買い物に行きましょ!」
「銀、一緒に釣りに行きましょ!」
「銀、一緒にお菓子を半分こしない?」
「銀、一緒に寝ましょ!」
「銀、一緒にお風呂に入りましょ!」

 などなど、常に銀にベッタリなのである。



「ってなわけで、そろそろ限界。さっきも一緒にギター弾かないか言われたけど、今日は拓斗と街に出掛ける約束してるって言って逃げてきた……」
「そ、それは御愁傷様……」
 普段はしっかりしている白さんだが、どうも双子の弟である銀さんには激甘らしく、話を聞く限り、銀さんは定期的にガス抜きをしているらしい。正直、あんな綺麗なお姉さんに毎日甘やかされてるのは羨ましい限りだ。白さんにゾッコンLOVEな優輝さんは、このことをどう思っているのだろうか……。
「拓斗、街見学とかしたいでしょ。俺が良いとこ連れてってあげる」
「え、良いんですか!?」
「ん。まぁせっかくだからね。アキラに拓斗と俺の分、晩飯要らないのと、晩の皿洗いよろしく言っといて」
 そんなわけで、僕はひょんな事から銀さんとテラの街へ出かけることとなったのだ!



 銀さんが連れてきてくれたのは、アキラくんが連れてきてくれたビル群の街とはまた違った活気のある街だった。どこもかしこもお祭り騒ぎで、露店や屋台が立ち並び、店の主が皆他の店に負けじと大声で客の呼び込みをしている。ここは大きな商業の街と言った感じだった。露店以外にもサーカスや手品の舞台、アクションヒーローショーのようなテーマパークのようなものもあった。
「うわぁ……! すごいね! めっちゃ楽しそう!」
 見ているだけで目が楽しい。銀さんは満足そうに少し目を細めた。
 銀さんはと言うと、この前白さんが着けていたマスク同様、色違いの黒いマスクを着けていた。口元が隠れて表情こそ読み取りづらいが、銀さんも楽しんでいるようだった。
「なんか少し意外です」
「え、何が?」
 僕がそうポツリと呟くと、銀さんは不思議そうにそう聞き返してきた。
「いや、なんかこういう騒がしいところ、銀さんってあんまり好きそうじゃなかったから……」
「あー、ね」
 銀さんは「んー」と、少し間を開けてから、その疑問に答えてくれた。
「正直、普段は騒がしいのとか、あんま嫌いだよ。でもあぁやって付き纏われて、派手に気分転換したい時は、普段とは違う、こういう賑やかな所に来たくなるんだよねー」
「あぁ、それはなんかわかります。普段と違う環境に身を置きたくなりますよね」
「それー」
 銀さんはうんうんと僕の意見に賛同して、小さく首を縦に振った。
「あと、ずっと思ってたけど、敬語とか面倒臭いから、敬語じゃなくて良いよー。呼び方も呼び捨てで良いし。まぁ君がアキラみたいに敬語キャラなら話は別だけどー」
 くぁ……と、銀さんはマスクの下で大きな欠伸をして、僕に気を遣ってか、はたまた本当に面倒だと思ってか、そう言ってくれた。
「え、でも……」
 と、突然そんな提案をされて、しどろもどろになる僕だが、銀さんは「いーからいーから」と、僕に拒否権を与えてくれなかった。
「じゃ、じゃあ……うん。で、でも、急に呼び捨てとかできないし、もう銀さんで慣れちゃったから呼び方は銀さんのままで!」
 今までさん付けで呼んでいた人を、急に呼び捨てで呼ぶのは凄く緊張する! 僕は銀さんの好意を無下にしてしまったような気がして、少し挙動不審になってしまった。
「あははー、ワタワタしておもしろーい」
 本当に面白いと思っているのかわからないが、銀さんはあまり表情を変えず、そう僕をからかった。
「じゃあ、取り敢えず、街回ろっか。食べ歩きしよー」
「あ、はい! あっいや、うん!」
 僕がタメ口に慣れるのは大変そうだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

処理中です...