神様のお導き

ヤマト

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2話目!銀の章 アダマス

2-7

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 開かれた手のひらには、何も――なかった。
 あまりのショックにジンは言葉を失い、周りにいた子供たちも落胆に肩を落とした。
 ケイはジンを慰めるように、ジンの肩を優しく叩く。ジンは肩を震わせて、溢れ出る泪を止めることが出来なかった。瞳からポロポロと大きな雫が地面を濡らし、小さなシミを作っていく。
「お、俺……」
「いいんだ、大丈夫だ。な?」
 ケイはジンを後ろから優しく抱きしめて、ジンをあやすよあにポンポンと手でジンの体を軽く叩く。
 悲しみに暮れるジンの肩から、ケイは目で銀さんと僕に「行ってくれ」と、伝えた。
 僕らは絶望に泣くジンを背に、少し気まずい気分になりながらもその場を後にした。



「はー……やっと解放された」
 ジンたちから少し離れたところで、銀さんはすこぶる疲れたと肩甲骨を回しながら、そう言った。
「大変だったね。でも、なんであんなことしたの?」
 僕は銀さんに聞かねばならないことがある。そう、先程のゲームでのことだ。
「あんなことって?」
 銀さんは僕の質問に対し、とぼけたようにそう言った。わかっているくせに。
「さっきの、あれ。両手、何も持ってなかったよね?」
 そう、つまり、最初からどちらを選んでも、ジンはハズレを引かされることになっていたのだ。
「あれは、流石に酷いんじゃないかな」
 希望を持たせるだけ持たせて、どっちもハズレじゃあ、最初から希望なんて持たせてあげない方が良かった。
 でも銀さんは悪びれた態度を取ることもなく、飄々とした態度でこう言った。
「ふーん? 拓斗は俺が悪人に見えるんだ?」
「えっ!? いや、そこまで言ったつもりは――」
 銀さんの気にでも障ったのだろうか。自分を悪人だと言う彼に、僕は慌ててそのことを訂正しようとした。が――
「嘘嘘~」
 気の抜けた表情のまま僕にデコピンする彼に、僕は「も、もー!」と、軽く怒ってみせておいた。
「拓斗はわかりやすくて面白いね。でも、大丈夫。今頃さっきの子たちも、俺に感謝してる頃だろうしね~」
「…………? 感謝?」
 僕は銀さんの言葉の意図がわからずに、思わずそう聞き返した。



 足早に銀と拓斗が去って行った頃、悲しみに暮れるジンは、自身の涙を拭いながら、片手は悔しさでズボンの裾を握り締めていた。そこで、初めて自分のズボンのポケットに違和感があることに気付く。
 ジンは鼻を啜りながら、その違和感を確かめるべく、自身のズボンのポケットの中へと手をやった。すると、そこには――
「これ……」
 ポケットの中から拾い上げたそれは、ある一通の紙切れと先程銀が見せびらかしていた宝石だった。
「えっ!? あ…えっ!? に、兄ちゃん、これ!」
 ジンは驚きのあまり、戸惑ってケイの方へ慌てて振り返り、手の中にある宝石と紙切れをケイに見せた。ケイもなぜここに宝石があるのかとびっくりして、ジンからそれを受け取ると本物かどうか素人なりに確かめた。
「た、多分、本物だ……」
 震える声でそう言うと、周りの子達は好奇の目でそれを見て「なんでなんで!?」と、一斉に質問を投げかけた。
「待て待て待て待て! 落ち着け!」
 ケイはわっと盛り上がる子供達を一旦宥めて、今度は宝石とは別に添えてあった紙を、もう片方の手で拾い上げた。
「ケイ兄、なんか書いてあるのか!?」
 すっかり泣くのも忘れて、ジンがケイに質問する。ケイはその紙に書いてある文字を、ゆっくりと読み上げた。
「拝見、スラムの皆様へ――。どう? びっくりした? 君たちに直接宝石渡しても、感謝されて付き纏われたり、お礼したいとか言われても嫌だし、ちょっとした手品でジンのポケットの中に宝石を忍ばせてもらったよ。宝石を売ったお金は自分たちの娯楽に使うも、事業の資金にするも、使い方は自由だよ。でもそれで失敗しても、その後のことまでは責任取れないから自己責任でよろしくね。マーキュリーの人には、もう君たちが宝石売りに行くこと伝えてあるから、人目や身分も気にせず、さっさと店に向かってね。――正義のヒーローより」
 手紙を読み終えて、暫く一同は放心状態でポカンとしていた。しかし、ジンが真っ先に正気に戻り、歓喜の声を上げる。
「う……うぉおおおおおおお!?」
 その雄叫びにも似た声に、皆も我に返って、同じように嬉しさに満ちた叫び声を上げた。
「こ、これって夢じゃないよな!?」
「正義のヒーローはやっぱり正義のヒーローだったんだ!」
「ありがとう! かっこいいお兄ちゃんたち!」
 口々歓喜の声を上げ、皆、体全体を使って喜びの気持ちを表現する。最後まで放心状態だった、ケイも「は、はは……」と、徐々に正気を取り戻しながら、ジンや他の子供達に抱きつかれていた。
「でも、まだ換金できてないからな! どれくらいになるかわからないけど、喜ぶの換金してからだ」
 自分に言い聞かせるようにそう言うケイに、皆それぞれの予想の金額を口にする
「百万円かな!?」
「そんな高いものくれるかな!? 十万円とかじゃない?」
「いや、もしかしたら一千万かもよ!」
「えー! ホントに一千万だったらどうしよう!」
 勝手に期待が膨らんでいく子供達に、ケイは覚悟を決めた表情で、「よし!」と、気合いの一言を放った。
「ちょっと行ってくるから、お前たちはここで大人しく待ってろよ! 絶対だぞ!」
 ケイにそう念を押され、ジンが代表して、「任せろ!」と、胸を張ってそう言った。



 マーキュリーにて。
「あ、あの、これ、売りたいんですけど……」
 緊張のあまりギクシャクと体を揺らし、震える手で受付の人に宝石を渡す。
「あぁ、お待ちしておりました。お電話で伺っております。今から鑑定しますので、少々お待ちくださいね」
 受付の人は、慣れた手つきで宝石を受け取り、特殊な機械を通して宝石をしっかりと鑑定していた。
 そして――
「お待たせいたしました。金額が金額なので小切手をお受け取り下さい」
 ケイは、息を飲んで震える手でその小切手を受け取る。見たいような、見たくないような、そんな矛盾する気持ちを抑え、勢い良くその小切手の数字を見た。
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