神様のお導き

ヤマト

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3話目!碧の章 行け!コミックマーケット

3-6

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「…………」
 僕は碧ちゃんへとちらりと目線を向ける。碧ちゃんはショックのあまり、まだ固まっていた。
「碧ちゃん、碧ちゃん」
 僕はショックで呆ける碧ちゃんの肩をユラユラ揺らして、碧ちゃんを正気に戻させると、碧ちゃんに相談してみた。
「碧ちゃん、なんとか出来ないかな……?」
 何せ、今回のコミケを一番楽しみにしていたのは彼女自身だ。碧ちゃんもこんな形でコミケが終わることは望んではいないだろう。それどころか、この街にいる人みんなが危ないのだ。生きて帰れるかどうかという瀬戸際まで来ている。
 碧ちゃんは僕の言葉に正気に戻り、ハッとした様子で僕を見た。
「えっと、今、何が……?」
「あの映像見て……」
 何が起こったか理解できないという碧ちゃんに、僕は説明するより見せた方が早いと、映像に映った魔物を指さした。それを見て皆が嘆いている様子も見て、碧ちゃんは一気に今の状況を理解した。
「こ……れは……」
「あの魔物のせいでコミケは一時中止。それどころか、この街にいたらみんなあいつにやられて死んじゃうかもしれない。この場所にいる絵師さんもレイヤーさんもお客さんもみんな死んじゃうかもしれないんだ……」
「…………」
 碧ちゃんは再び黙って、その映像をじっと見つめた。
「みんな……死ぬ……?」
 碧ちゃんが何を考えているのかはわからない。だけど、碧ちゃんの目が変わったのが分かった。いつも水面のように透き通って綺麗だった碧ちゃんの目の底が、赤く揺らめく怒りの色へと変わっていったのだ。
「碧、ちゃん……?」
 僕は碧ちゃんが心配になり、そう碧ちゃんの名前を呼ぶと、碧ちゃんは何かのスイッチが入ったかのように、急に動き出した。
「あの!」
 コミケで僕らが並んでいたレイヤーさんの方へ、突然声を掛けたかと思うと、レイヤーさんに顔を近付けて詰め寄った。
「あいつを倒したら、写真集! 売ってくれますか!?」
 碧ちゃんの問に、レイヤーさんは凄くびっくりした様子で声も出せずに、うんうんと勢い良く首を縦に振った。
「わかりました!」
 碧ちゃんは僕に荷物を預けると、ギラリとし表情と目付きで僕にこう告げた。
「ちょっと一瞬行ってきます」
 普段からは想像も出来ないようなドスの効いた声と眼差しに、僕もレイヤーさんと同じく無言で首を縦に振らざるを得なかった。どう考えても今の碧ちゃんにノーと言える度胸はない。ノーという理由も無いわけだけれど。
碧ちゃんは言葉通り、突然走り出すと、スタッフさんの「お客様、その場では待機をお願い致します!」という静止を振り切り、扉の向こうへと消えていった。
 そして、それを見送り画面へと視線を戻すと、そこには既に碧ちゃんらしき人物が映っていた。
 碧ちゃんは目から鼻まで覆い隠す仮面をつけており、服装は針山家でいう和洋折衷の正装のような衣装。着物とスカートが一体になったような青い衣装に身を包み、彼女は空中に浮かんで、真正面から魔物と対峙していた。
『なんということでしょう! 新たに謎の少女が応援に来てくれました! 彼女は宙を浮いています! 一体何者なのか!』
 アナウンサーの実況の中、互いに睨み合う碧ちゃんと魔物。魔物の大きな目はギョロリと碧ちゃんを捉えた。大きさだけで言ったら、蟻と象ほど違う。魔物の無数の触手が碧ちゃん目掛けて襲いかかろうとした時――碧ちゃんは右手を前に出し、パチン、と指を鳴らした。その瞬間、魔物が急激に膨れ上がって、一瞬のうちに爆発したのだ。爆発と言っても、火薬などで爆発したというわけではない。中から大量の水を注がれた風船のように割れたのだ。粉々に弾け飛んだ体の一部は水の泡となり消えていき、中から溢れ出た雫は辺り一面、大きな水滴となり天から降り注ぐ。そして、それが地面に落ちて更に小さな水滴を生んでいく。不思議なことに、碧ちゃんの周りにだけその水滴は降り注がず、碧ちゃんは濡れることなく、その場から水に溶けるように姿を消した。
 あまりに一瞬の出来事に、皆思考が追いつかず、しばらく無言で固まっていたが、カメラマンに肩を叩かれたであろうアナウンサーが我に返って、再び実況を始めた。
『な、なんと言うことでしょう! 今、一体何が起こったのでしょうか! 少女に数多の触手が襲いかかろうとした時、突然、魔物粉々にが弾け飛んだのです! 今のは魔法でしょうか!? 少女もいつの間にか姿を消しております! 彼女は一体何者だったのか! 我々は助かったと思って良いのか! 我々は今回の事件の謎に迫ります!』
 アナウンサーがそこまで言うと、CMに変わった。そこまで息をつく暇もなく、皆モニターに食いつくように静かに映像を見ていたが、魔物が倒されたことに一斉にワッと歓声を上げた。
「やったぁああああ! 魔物が倒されたぞー!」
「ってことはコミケ再開!?」
「うぉおお! 謎の少女ありがとうー!」
「愛してるー!」
 皆、口々に謎の少女こと碧ちゃんを褒め称え、自分の事ではないにせよ、少し鼻が高くなった。
『みなさん落ち着いてください! もうしばらくそのままでいて下さい! 上に連絡が取れましたら、どのタイミングでコミケを再開するか検討致しますので!』
 スタッフさんも先程以上の盛り上がりを見せる会場の誘導が大変そうだった。
「あはは、コミケ再開できそうで良かった」
 賑やかになった会場を見て、僕も安心しきって、緊張の糸が切れたように笑っていると、いつの間にか帰ってきた碧ちゃんがいて、「そうだね」と、僕のセリフに答えていた。
「うわ!? 碧ちゃん!?」
「ただいま」
「お、おかえり……」
「魔物やっつけたよ」
 碧ちゃんは満足そうに僕にピースサインを向けた。僕はそれに対して、「やったね」と、拳を作って碧ちゃんへと向けた。碧ちゃんは一瞬、首を傾げたが、どうするか理解して、碧ちゃんも同じように拳を作り、僕の拳にコツンとぶつけてお互いに笑い合った。
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