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3話目!碧の章 行け!コミックマーケット
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次は壁サーのレイヤーさんと言うこともあって、レイヤーさんもとても綺麗な方だった。なんのコスプレをしているのかはわからないが、多分何かのキャラクターのコスプレをしている。僕からしたら、ラフな格好をしているお客さん以外、みんなコスプレをしているようにも見えるけど。
碧ちゃんはさっきよりも緊張した面持ちで、列に並んでいたが、列が近づくにつれて、再び目をぐるぐると回していた。このレイヤーさんは一人一人にちゃんと挨拶して色々言葉を交わしたりしているせいか、一人一人の待ち時間も少し長かった。
そして、その長きに渡る緊張が終わろうとしていた。
碧ちゃんは目の前の憧れのレイヤーさんを前にして石像のように固まった。がんばれ、碧ちゃん。
「あっあっ……あばばばばば……」
最早言葉にもなっていない。
「い、いつも可愛いなぁって……おもおもっ思って……」
碧ちゃんがギクシャクしながらも、精一杯の勇気を振り絞って話しかけようとしたその時だった。事件は起こった。
『緊急事態発生。緊急事態発生。街の外にて、危険度Sの魔物が出現しました。施設の外にいる方は速やかに館内に避難してください。又、館内ではパニックにならず、スタッフの指示に従って、落ち着いて待機していてください』
「みなさん、お静かに! 落ち着いてその場から動かず、待機してください。一旦サークル内での買い物はお控え下さい! 繰り返します――」
館内に突然緊急の放送が流れると、すぐさまスタッフが現れて、皆をその場から動かないよう支持する。今回の騒動に驚いたのは、それは売り手も買い手も同じことで、レイヤーさんは「すっ、すいません」と、戸惑った様子で碧ちゃんに謝った。
「これからどうなるかわかりませんが、一旦避難誘導に従いましょう」
それは、この騒ぎが終わるまで、碧ちゃんはレイヤーさんの写真集を買うことが出来ないということを表していた。碧ちゃんは今度はショックで、仏像のように固まっていた。
僕もスタッフさんの指示に従い、その場に邪魔にならないようにしゃがみこみ、落ち着いて辺りを見渡した。
この世界、変わった生き物とかはいたけど、魔物とかいるんだな。
僕はそれがみんなより身近ではないため、逆に周りより冷静でいられた。魔物と言われても、見たことも無いのだから現実味がないのだ。当たり前だ。僕はそのまま周りの声に聞き耳を立てると、皆口癖に心配の声を上げていた。
「Sクラスってことは、大魔道師とか呼ばなきゃすぐには倒せないんじゃないか」
「今日のコミケはもう終わりかな……」
「終わり所か俺達も生きて帰れるかわかんないんじゃねぇのか……」
「え、まだあのアニメ見終わってないし死にたくねぇよ……」
緊張感があるのかないのかわからない絶望の声。耳をすませても皆、同じようなことを呟きながら不安に耐えていた。そして、今度はあるひとつの話題に染められていく。
「ねぇ、あれ見て……」
「え、あれが今街の近くにいるの……!?」
「やだ、怖いよ……」
どうやら、皆、何かを見ているらしく、皆の視線や指を差す方向へと視線を向けると、それは天井近くに設備してあった、巨大モニターの映像だった。どうもその映像は、その街の外の映像を映しているらしく、一人の勇敢なニュースキャスターとそのカメラマンの手によって映し出されているらしい。
『大変です。みなさんご覧下さい。街の外に巨大な謎の生物が現れました! あのような魔物、見たことがありません。天変地異の前触れでしょうか! 今、数多の戦士によって、討伐を試みようとしていますが、全く歯に立ちません!』
その映像には、見たことも無い、巨大な生物が映し出されていた。大きさは山一つ分くらいあるだろうか。ギョロりとした大きな目玉が一つ。薄いまぶたにだけ覆われて、何度も瞬きを繰り返す。その目玉からタコのような無数の触手を生やし、それが手探りで何かを探すように山を抉り取りながら進んでいる。更に目玉の裏側からは大きな翼が六つ生えており、その翼が一振される度にとんでもない強風が巻き起こっていて、戦士と呼ばれる人も、立つことすらままならず、遠くへと吹き飛ばされていた。映像からは、「大魔道師を呼べ!」だの「軍隊はまだか!」だの「アーダルベルト隊長へ連絡しろ!」と、僕にはよくわからないが、おそらく、かなりの強者であろう人への救援を待つ声が聞こえてきていた。
「六神柱呼ぶレベルとかもう終わりだ……」
「あんな魔物、勝てるわけがねぇ……」
さっきまで、あんなにも楽しげで賑やかだった会場が一気に絶望に支配される。もう誰もコミケの話をしている者はいなかった。
「神様、助けて下さい……」
「お母さん、お父さん……ごめんね」
神様に祈る者や、家族に別れを告げる者、それだけで今回の騒動がとんでもないレベルのものだと窺える。魔物を見たことの無い僕でも、あの映像に映る生き物は相当凶悪なものだと感じ取れる。それをすぐに倒せるのは――
碧ちゃんはさっきよりも緊張した面持ちで、列に並んでいたが、列が近づくにつれて、再び目をぐるぐると回していた。このレイヤーさんは一人一人にちゃんと挨拶して色々言葉を交わしたりしているせいか、一人一人の待ち時間も少し長かった。
そして、その長きに渡る緊張が終わろうとしていた。
碧ちゃんは目の前の憧れのレイヤーさんを前にして石像のように固まった。がんばれ、碧ちゃん。
「あっあっ……あばばばばば……」
最早言葉にもなっていない。
「い、いつも可愛いなぁって……おもおもっ思って……」
碧ちゃんがギクシャクしながらも、精一杯の勇気を振り絞って話しかけようとしたその時だった。事件は起こった。
『緊急事態発生。緊急事態発生。街の外にて、危険度Sの魔物が出現しました。施設の外にいる方は速やかに館内に避難してください。又、館内ではパニックにならず、スタッフの指示に従って、落ち着いて待機していてください』
「みなさん、お静かに! 落ち着いてその場から動かず、待機してください。一旦サークル内での買い物はお控え下さい! 繰り返します――」
館内に突然緊急の放送が流れると、すぐさまスタッフが現れて、皆をその場から動かないよう支持する。今回の騒動に驚いたのは、それは売り手も買い手も同じことで、レイヤーさんは「すっ、すいません」と、戸惑った様子で碧ちゃんに謝った。
「これからどうなるかわかりませんが、一旦避難誘導に従いましょう」
それは、この騒ぎが終わるまで、碧ちゃんはレイヤーさんの写真集を買うことが出来ないということを表していた。碧ちゃんは今度はショックで、仏像のように固まっていた。
僕もスタッフさんの指示に従い、その場に邪魔にならないようにしゃがみこみ、落ち着いて辺りを見渡した。
この世界、変わった生き物とかはいたけど、魔物とかいるんだな。
僕はそれがみんなより身近ではないため、逆に周りより冷静でいられた。魔物と言われても、見たことも無いのだから現実味がないのだ。当たり前だ。僕はそのまま周りの声に聞き耳を立てると、皆口癖に心配の声を上げていた。
「Sクラスってことは、大魔道師とか呼ばなきゃすぐには倒せないんじゃないか」
「今日のコミケはもう終わりかな……」
「終わり所か俺達も生きて帰れるかわかんないんじゃねぇのか……」
「え、まだあのアニメ見終わってないし死にたくねぇよ……」
緊張感があるのかないのかわからない絶望の声。耳をすませても皆、同じようなことを呟きながら不安に耐えていた。そして、今度はあるひとつの話題に染められていく。
「ねぇ、あれ見て……」
「え、あれが今街の近くにいるの……!?」
「やだ、怖いよ……」
どうやら、皆、何かを見ているらしく、皆の視線や指を差す方向へと視線を向けると、それは天井近くに設備してあった、巨大モニターの映像だった。どうもその映像は、その街の外の映像を映しているらしく、一人の勇敢なニュースキャスターとそのカメラマンの手によって映し出されているらしい。
『大変です。みなさんご覧下さい。街の外に巨大な謎の生物が現れました! あのような魔物、見たことがありません。天変地異の前触れでしょうか! 今、数多の戦士によって、討伐を試みようとしていますが、全く歯に立ちません!』
その映像には、見たことも無い、巨大な生物が映し出されていた。大きさは山一つ分くらいあるだろうか。ギョロりとした大きな目玉が一つ。薄いまぶたにだけ覆われて、何度も瞬きを繰り返す。その目玉からタコのような無数の触手を生やし、それが手探りで何かを探すように山を抉り取りながら進んでいる。更に目玉の裏側からは大きな翼が六つ生えており、その翼が一振される度にとんでもない強風が巻き起こっていて、戦士と呼ばれる人も、立つことすらままならず、遠くへと吹き飛ばされていた。映像からは、「大魔道師を呼べ!」だの「軍隊はまだか!」だの「アーダルベルト隊長へ連絡しろ!」と、僕にはよくわからないが、おそらく、かなりの強者であろう人への救援を待つ声が聞こえてきていた。
「六神柱呼ぶレベルとかもう終わりだ……」
「あんな魔物、勝てるわけがねぇ……」
さっきまで、あんなにも楽しげで賑やかだった会場が一気に絶望に支配される。もう誰もコミケの話をしている者はいなかった。
「神様、助けて下さい……」
「お母さん、お父さん……ごめんね」
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