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3話目!碧の章 行け!コミックマーケット
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コミケ当日。僕らはアキラくんにお昼ご飯が要らないことや、僕は申し訳ないが仕事は帰ってからの分しか出来ないことを伝えると、いざ戦場へと向かった。僕がいた頃のコミケと同じようなものかはわからないが、当時と変わらないことを想定して、朝から家を出発して、開園前から会場にいる。会場には既に沢山の人が列を成しており、早めに来て正解だったと、僕達はほっと胸を撫で下ろした。ゲートで会場の地図のついた冊子を貰い、開園するまでに、どこのサークルを回るのか丸をつける。
「え、えっと、この絵師さんとコスプレイヤーさんは絶対行きたい!」
普段より気合いを入れておめかしした碧ちゃんは、この会場にいる誰よりも輝いていて、正直一緒にいるのが申し訳ないくらいめちゃくちゃ可愛い。
「これはどっちも壁サーだね。他の同人誌も買いたいだろうけど、まずはその二つのサークルを優先して行った方が良いかも」
「かべさー?」
「ええっと、この世界でも同じかはわからないけど、大きなサークルっていうか、人気なサークル? とかは、主催者から壁際に配置されることがあって、早く並ばないとすぐ売り切れちゃったりするかも」
「そ、そうなの!? じゃ、じゃあ、ここ先に回る!」
僕と碧ちゃんは目当てのサークルにある程度優先順位をつけると、あとは開園時間まで静かに待機した。
そして――。
「列が動いた! 見て、コスプレイヤーさんもウロウロしてる!」
碧ちゃんは興奮気味に辺りを見渡して、開園されたことを知る。僕らは自分たちが入場するや否や、人混みを上手く掻き分けながら、お目当てのサークルへと向かった。その間も、碧ちゃんはすれ違うコスプレイヤーさんたちに大興奮しており、あっちやこっちやと忙しなく目が動いて大変そうだった。色々と。
一番最初に行こうと決めていた壁際のサークルに行くと、もう既にかなりの行列が出来ていた。僕は最後尾の看板を見つけて、碧ちゃんを連れてそこへ行く。そして、その最後尾の看板を持つ人から「持ちますよ」と、その看板を受け取り、僕らが最後尾となる。それは後から来た人も同じことで、最後尾の人に看板を渡し、看板はどんどん後ろへと回る。
「最後尾看板とかあるの知らなかった」
「うん、大体はその看板があるから、最後尾に並ぶ時はちゃんと忘れずに、最後尾の人から受け取ってね」
「わ、私一人だったら、声掛けれなくて、そもそも並べなかったかもしれない……! 拓斗くんと来て良かった」
興奮していても人見知りには変わらりなかったようで、ガクガクとしながら周りの人を見詰めて怯える碧ちゃん。こんなことでも頼りにしてもらえるのは嬉しいことだ。ここに来てからというもの、みんなから教えてもらうばかりで、僕は誰かに何かを教えたりすることはなかったし、勿論、頼りにされてるようなこともなかった。だから、こういう風に言ってもらえることはとても嬉しい。
「僕も、碧ちゃんとコミケに来れて良かったよ」
これは、心からの気持ちだ。碧ちゃんは、それをどう受け取ったのかはわからないけれど、それを聞いて、にっこりと微笑んでくれた。
そして、とうとう僕らの順番が来ようとしていた。あと一人で僕らの番になろうというのに、碧ちゃんは緊張でワタワタし過ぎて、軽くパニックになっている。
「どどどどうしよう! みんな何か話してる! なんか話した方が良いのかな!? 言いたいことはたくさんあるけど、何話したら良いかわからないよ! そもそも私なんかが話し掛けても良いのかな!? う、うわーん!」
碧ちゃんは緊張で今にも泣き出しそうだ。けれど、時間というものは待ってはくれない。パニックになったまま僕らの番を迎え、碧ちゃんは突然、スン……と、落ち着きを取り戻した。
「コレ、全部一冊ズツクダサイ」
まるで抑揚のないロボットのように同人誌を指差す碧ちゃん。それ以上は何も喋れないようで、震えた手つきで財布を開けて、小銭を取り出していた。しかし、脳内はパニックだった。なぜそれがわかるかと言うと、碧ちゃんは僕の脳内に向かってメッセージをめちゃくちゃに飛ばしてきていたからだ。
(たたたた助けて拓斗くん! どどどどうしよう! 緊張して何も喋れないようー! 毎日SNS見てますとかだけでも言いたいよー! うわーん! 助けてー!)
涙ながらの彼女のSOSに、僕は碧ちゃんの声を代理して、代わりにサークルの方に「毎日シャベッター見てます。更新される絵いつもとても素敵で待ち受けにもしてます。これからも応援してます」
彼女から受信した言葉を一字一句そのまま伝えると、サークルの方も嬉しそうに笑ってくれて、「ありがとうございます~!」と、言ってくれた。碧ちゃんはそれだけでも嬉しかったのか、固まっていた顔がみるみるうちにパァっと明るくなり、幸せそうに笑っていた。
お会計もちゃんと小銭だけで終え、碧ちゃんは終始ルンルン気分で歩いていた。
「うふふ~良かった~! あの絵師さんにありがとうだなんて言って貰えちゃった~! 今日来て良かった~!」
碧ちゃんは今までのどんな日よりもご機嫌だった。心做しか、碧ちゃんの周りから花が飛んでいるような幻覚さえ見える。
「良かったね、碧ちゃん」
「うん! 全然拓斗くんのおかげだよ! ありがとう!」
満面の笑みでそんな風にハッキリとありがとうと言って貰えるとは思っていなくて、僕は少し照れて、頭を掻いた。
「じゃあ、次はレイヤーさんの写真集だね」
「うん!」
僕らは同人誌をしっかりとカバンへしまい、次なる戦場へと向かった。
「え、えっと、この絵師さんとコスプレイヤーさんは絶対行きたい!」
普段より気合いを入れておめかしした碧ちゃんは、この会場にいる誰よりも輝いていて、正直一緒にいるのが申し訳ないくらいめちゃくちゃ可愛い。
「これはどっちも壁サーだね。他の同人誌も買いたいだろうけど、まずはその二つのサークルを優先して行った方が良いかも」
「かべさー?」
「ええっと、この世界でも同じかはわからないけど、大きなサークルっていうか、人気なサークル? とかは、主催者から壁際に配置されることがあって、早く並ばないとすぐ売り切れちゃったりするかも」
「そ、そうなの!? じゃ、じゃあ、ここ先に回る!」
僕と碧ちゃんは目当てのサークルにある程度優先順位をつけると、あとは開園時間まで静かに待機した。
そして――。
「列が動いた! 見て、コスプレイヤーさんもウロウロしてる!」
碧ちゃんは興奮気味に辺りを見渡して、開園されたことを知る。僕らは自分たちが入場するや否や、人混みを上手く掻き分けながら、お目当てのサークルへと向かった。その間も、碧ちゃんはすれ違うコスプレイヤーさんたちに大興奮しており、あっちやこっちやと忙しなく目が動いて大変そうだった。色々と。
一番最初に行こうと決めていた壁際のサークルに行くと、もう既にかなりの行列が出来ていた。僕は最後尾の看板を見つけて、碧ちゃんを連れてそこへ行く。そして、その最後尾の看板を持つ人から「持ちますよ」と、その看板を受け取り、僕らが最後尾となる。それは後から来た人も同じことで、最後尾の人に看板を渡し、看板はどんどん後ろへと回る。
「最後尾看板とかあるの知らなかった」
「うん、大体はその看板があるから、最後尾に並ぶ時はちゃんと忘れずに、最後尾の人から受け取ってね」
「わ、私一人だったら、声掛けれなくて、そもそも並べなかったかもしれない……! 拓斗くんと来て良かった」
興奮していても人見知りには変わらりなかったようで、ガクガクとしながら周りの人を見詰めて怯える碧ちゃん。こんなことでも頼りにしてもらえるのは嬉しいことだ。ここに来てからというもの、みんなから教えてもらうばかりで、僕は誰かに何かを教えたりすることはなかったし、勿論、頼りにされてるようなこともなかった。だから、こういう風に言ってもらえることはとても嬉しい。
「僕も、碧ちゃんとコミケに来れて良かったよ」
これは、心からの気持ちだ。碧ちゃんは、それをどう受け取ったのかはわからないけれど、それを聞いて、にっこりと微笑んでくれた。
そして、とうとう僕らの順番が来ようとしていた。あと一人で僕らの番になろうというのに、碧ちゃんは緊張でワタワタし過ぎて、軽くパニックになっている。
「どどどどうしよう! みんな何か話してる! なんか話した方が良いのかな!? 言いたいことはたくさんあるけど、何話したら良いかわからないよ! そもそも私なんかが話し掛けても良いのかな!? う、うわーん!」
碧ちゃんは緊張で今にも泣き出しそうだ。けれど、時間というものは待ってはくれない。パニックになったまま僕らの番を迎え、碧ちゃんは突然、スン……と、落ち着きを取り戻した。
「コレ、全部一冊ズツクダサイ」
まるで抑揚のないロボットのように同人誌を指差す碧ちゃん。それ以上は何も喋れないようで、震えた手つきで財布を開けて、小銭を取り出していた。しかし、脳内はパニックだった。なぜそれがわかるかと言うと、碧ちゃんは僕の脳内に向かってメッセージをめちゃくちゃに飛ばしてきていたからだ。
(たたたた助けて拓斗くん! どどどどうしよう! 緊張して何も喋れないようー! 毎日SNS見てますとかだけでも言いたいよー! うわーん! 助けてー!)
涙ながらの彼女のSOSに、僕は碧ちゃんの声を代理して、代わりにサークルの方に「毎日シャベッター見てます。更新される絵いつもとても素敵で待ち受けにもしてます。これからも応援してます」
彼女から受信した言葉を一字一句そのまま伝えると、サークルの方も嬉しそうに笑ってくれて、「ありがとうございます~!」と、言ってくれた。碧ちゃんはそれだけでも嬉しかったのか、固まっていた顔がみるみるうちにパァっと明るくなり、幸せそうに笑っていた。
お会計もちゃんと小銭だけで終え、碧ちゃんは終始ルンルン気分で歩いていた。
「うふふ~良かった~! あの絵師さんにありがとうだなんて言って貰えちゃった~! 今日来て良かった~!」
碧ちゃんは今までのどんな日よりもご機嫌だった。心做しか、碧ちゃんの周りから花が飛んでいるような幻覚さえ見える。
「良かったね、碧ちゃん」
「うん! 全然拓斗くんのおかげだよ! ありがとう!」
満面の笑みでそんな風にハッキリとありがとうと言って貰えるとは思っていなくて、僕は少し照れて、頭を掻いた。
「じゃあ、次はレイヤーさんの写真集だね」
「うん!」
僕らは同人誌をしっかりとカバンへしまい、次なる戦場へと向かった。
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