神様のお導き

ヤマト

文字の大きさ
77 / 173
3話目!碧の章 行け!コミックマーケット

3-4

しおりを挟む
コミケ当日。僕らはアキラくんにお昼ご飯が要らないことや、僕は申し訳ないが仕事は帰ってからの分しか出来ないことを伝えると、いざ戦場へと向かった。僕がいた頃のコミケと同じようなものかはわからないが、当時と変わらないことを想定して、朝から家を出発して、開園前から会場にいる。会場には既に沢山の人が列を成しており、早めに来て正解だったと、僕達はほっと胸を撫で下ろした。ゲートで会場の地図のついた冊子を貰い、開園するまでに、どこのサークルを回るのか丸をつける。
「え、えっと、この絵師さんとコスプレイヤーさんは絶対行きたい!」
 普段より気合いを入れておめかしした碧ちゃんは、この会場にいる誰よりも輝いていて、正直一緒にいるのが申し訳ないくらいめちゃくちゃ可愛い。
「これはどっちも壁サーだね。他の同人誌も買いたいだろうけど、まずはその二つのサークルを優先して行った方が良いかも」
「かべさー?」
「ええっと、この世界でも同じかはわからないけど、大きなサークルっていうか、人気なサークル? とかは、主催者から壁際に配置されることがあって、早く並ばないとすぐ売り切れちゃったりするかも」
「そ、そうなの!? じゃ、じゃあ、ここ先に回る!」
 僕と碧ちゃんは目当てのサークルにある程度優先順位をつけると、あとは開園時間まで静かに待機した。



 そして――。
「列が動いた! 見て、コスプレイヤーさんもウロウロしてる!」
 碧ちゃんは興奮気味に辺りを見渡して、開園されたことを知る。僕らは自分たちが入場するや否や、人混みを上手く掻き分けながら、お目当てのサークルへと向かった。その間も、碧ちゃんはすれ違うコスプレイヤーさんたちに大興奮しており、あっちやこっちやと忙しなく目が動いて大変そうだった。色々と。
 一番最初に行こうと決めていた壁際のサークルに行くと、もう既にかなりの行列が出来ていた。僕は最後尾の看板を見つけて、碧ちゃんを連れてそこへ行く。そして、その最後尾の看板を持つ人から「持ちますよ」と、その看板を受け取り、僕らが最後尾となる。それは後から来た人も同じことで、最後尾の人に看板を渡し、看板はどんどん後ろへと回る。
「最後尾看板とかあるの知らなかった」
「うん、大体はその看板があるから、最後尾に並ぶ時はちゃんと忘れずに、最後尾の人から受け取ってね」
「わ、私一人だったら、声掛けれなくて、そもそも並べなかったかもしれない……! 拓斗くんと来て良かった」
 興奮していても人見知りには変わらりなかったようで、ガクガクとしながら周りの人を見詰めて怯える碧ちゃん。こんなことでも頼りにしてもらえるのは嬉しいことだ。ここに来てからというもの、みんなから教えてもらうばかりで、僕は誰かに何かを教えたりすることはなかったし、勿論、頼りにされてるようなこともなかった。だから、こういう風に言ってもらえることはとても嬉しい。
「僕も、碧ちゃんとコミケに来れて良かったよ」
 これは、心からの気持ちだ。碧ちゃんは、それをどう受け取ったのかはわからないけれど、それを聞いて、にっこりと微笑んでくれた。

 そして、とうとう僕らの順番が来ようとしていた。あと一人で僕らの番になろうというのに、碧ちゃんは緊張でワタワタし過ぎて、軽くパニックになっている。
「どどどどうしよう! みんな何か話してる! なんか話した方が良いのかな!? 言いたいことはたくさんあるけど、何話したら良いかわからないよ! そもそも私なんかが話し掛けても良いのかな!? う、うわーん!」
 碧ちゃんは緊張で今にも泣き出しそうだ。けれど、時間というものは待ってはくれない。パニックになったまま僕らの番を迎え、碧ちゃんは突然、スン……と、落ち着きを取り戻した。
「コレ、全部一冊ズツクダサイ」
 まるで抑揚のないロボットのように同人誌を指差す碧ちゃん。それ以上は何も喋れないようで、震えた手つきで財布を開けて、小銭を取り出していた。しかし、脳内はパニックだった。なぜそれがわかるかと言うと、碧ちゃんは僕の脳内に向かってメッセージをめちゃくちゃに飛ばしてきていたからだ。
(たたたた助けて拓斗くん! どどどどうしよう! 緊張して何も喋れないようー! 毎日SNS見てますとかだけでも言いたいよー! うわーん! 助けてー!)
 涙ながらの彼女のSOSに、僕は碧ちゃんの声を代理して、代わりにサークルの方に「毎日シャベッター見てます。更新される絵いつもとても素敵で待ち受けにもしてます。これからも応援してます」
 彼女から受信した言葉を一字一句そのまま伝えると、サークルの方も嬉しそうに笑ってくれて、「ありがとうございます~!」と、言ってくれた。碧ちゃんはそれだけでも嬉しかったのか、固まっていた顔がみるみるうちにパァっと明るくなり、幸せそうに笑っていた。
 お会計もちゃんと小銭だけで終え、碧ちゃんは終始ルンルン気分で歩いていた。
「うふふ~良かった~! あの絵師さんにありがとうだなんて言って貰えちゃった~! 今日来て良かった~!」
 碧ちゃんは今までのどんな日よりもご機嫌だった。心做しか、碧ちゃんの周りから花が飛んでいるような幻覚さえ見える。
「良かったね、碧ちゃん」
「うん! 全然拓斗くんのおかげだよ! ありがとう!」
 満面の笑みでそんな風にハッキリとありがとうと言って貰えるとは思っていなくて、僕は少し照れて、頭を掻いた。
「じゃあ、次はレイヤーさんの写真集だね」
「うん!」
 僕らは同人誌をしっかりとカバンへしまい、次なる戦場へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

処理中です...