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5話目!桜の章 恋情フォルティッシモ!
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そして、とうとうカマルさんのダンスの幕が開ける。
最初は僕のダラブッカが出だしだから僕も凄く緊張した。僕は僕に出来ることが少ない。桜みたいに彼らに何かをしてあげれることはほとんどない。だから桜が言う音楽への気持ちの込め方をみんなに聞いて自分なり考えた。僕はその気持ちを込めて、タラブッカを鳴らした。
僕がダラブッカで演奏し始めたのを合図に、カマルさんは先程の長方形の大きな布を後ろから両手で広げ、両手を広げたままふわりと回る。布が軽やかに舞い、まるで夜空を浮かび上がらせるようだった。スカートを翻し、妖艶な腰つきで腰をくねらせる。そして、王子たちも演奏に入る。伝統的な音楽とリズムの中で、カマルさんは華麗に舞い、その姿は蝶さながらだった。そして、布をバッと床に捨て去ると、カマルさんは両手を掲げ、笑顔を崩さないまま激しく腰を振ってくるりくるりと舞踊った。ここからが本番だ。黒く美しい髪を靡かせて、右へ左へと軽やかに動き回る。鳥の羽のような滑らかな動きで手を操り、幻想的で情熱的な舞を惜しげも無く披露する。これが、カマルさんの踊り。僕らの奏でる音色に合わせて、美しく舞い踊る。
その踊りの熱に倒れている兵士も玉座に座る王妃様も感嘆の声を上げる。国王も目が釘付けになり、もう抵抗することすら忘れているようだった。
そして、五分程の夢の時間はあっという間に過ぎて、踊り終え、深々とお辞儀するカマルさんに大喝采と歓声が湧き上がった。
「素晴らしいー!」
「最高だった!」
「なんて美しいんだ!」
いつの間にか体が動くようになっていた兵士たちを見て、僕は不思議に思って桜を見た。桜はウィンクをして、小声で教えてくれた。
「カマルの踊りは人を魅了する。カマルの踊りに釘付けになり夢中になってるのに、体の自由を奪う必要なんてないでしょ?」
確かに桜の言う通りだ。きっと皆、体が自由になっていたのも気付かずに、夢中でカマルさんの踊りを見ていたに違いない。それこそ国王や王妃だって。
「素晴らしかったわ。貴女の踊り、とても幻想的で、妖艶で、魅了的で。一時の良い夢を見させて貰いました。ありがとう」
パチパチと拍手をする王妃にカマルさんと王子は顔を見合わせ、嬉しそうに抱きしめあった。
「ありがとう母上!」
「光栄です! 王妃様! 」
二人が喜ぶ中、肝心の国王はというと――
「…………」
苦い顔をして、何か葛藤しているようだった。
「確かに、確かに君の舞は素晴らしいものだった。歌と踊りを愛する我が国に恥じないものだ。しかし、やはり王族でもない者を嫁にするとなると……。サイラスよ、愛など後からついてくるもの。一度隣国の姫と会ってから考えても――」
国王がゴニョニョと口ごもっていると、突然、謁見の間一体に怒声が響き渡った。
「あなた!!! いい加減にしてッ!!!」
その声は王妃の者で、その圧倒的な迫力に国王どころか、王子もカマルさんも周りの兵士たちもギョッとして驚いていた。きっと、普段彼女はこんな大声で怒る人では無いのだろう。凍りついた雰囲気がそれを物語っている。
「貴方、息子とカマルさんのこの決意を見てもまだそんなこと言うの!? そもそも、愛は後からついてくるなんて、よくもまぁその口で言えたものね!?」
「え、あ……」
「貴方、忘れたとは言わせないわよ! 私に一目惚れして、毎日毎日、胸焼けするような甘~いポエムを送ってきたことを! 私が断っても諦めずに何度もアタックしてきたじゃない!」
王妃の怒涛の叱責に、国王は口を挟む暇もなく狼狽えた。それを聞いて、王子はびっくりした様子で国王に聞いた。
「え、それは本当ですか!? 父上」
「う……あ……」
「ほら、本当のことを言ってあげなさい!」
「う……ほ、本当だ。私は社交場で会った姫の妻に一目惚れして、毎日アタックした……。断られても諦められずに、ずっとアタックし続けて、やっと結婚してもらえたんだ……」
細々と語る国王に、王子は少し笑いながら「知らなかった」と、微笑んだ。
「じゃあ、父上、私の気持ちが分かるでしょう? 私は父上が母上を諦められなかったように、私もカマルのことを諦められないくらい好きなんだ。愛しているんだ。だから、認めて欲しい。僕らの関係を――」
「私からもお願い致します。私が彼に釣り合わないことくらい重々承知です。けれど、それでも彼と一緒にいたい! 心からお慕い申し上げております!」
互いに手を繋ぎ、誠意を込めて精一杯お願いする二人に、王妃は「あなた」と、国王を促した。国王は観念したように一度うなだれたあと、気を取り直してゴホンと咳払いした。
「わかった。私の負けだ。君たちの交際を認めよう」
とうとう折れてくれた国王に、王子もカマルさんも手を取り合って喜んだ。それを見て、周りの兵士たちも祝福の拍手を送る。
「しかし、だ」
だが、そんな和やかなムードでも、国王はまだ何かあるようで口を挟んだ。
「カマルくん。君は王族ではない」
「はい……」
「王族には王族の暮らしがある。今までのような生活は送れないと思え」
「はい。それも承知の上です」
「王族同士の社交も国民への挨拶もやらなければならない事はたくさんある。それにはまず品のある礼儀作法も学ばねばならない。毎日レッスン漬けになるぞ」
「かまいません! 何としてもやり遂げてみせます!」
「うむ、分かれば良いのだ……。……サイラス、カマルくん、おめでとう」
国王は気難しそうな顔をやっと和らげて笑ってくれて、二人に拍手を送った。とうとう国王にも王妃にも正式に認められ、王子はいても立ってもいられず、カマルさんを抱き上げてくるりと一回転した。
「やったー! 父上ありがとう! カマル、私たちは認められたんだ!」
「ええ! ええ! うふふふふふふ」
幸せの雰囲気に満たされたこの結末。それは、僕が思い描いていたよりもずっと素晴らしいものだった。チラリと桜を見れば、桜は満足気に腕を組んで笑っていた。
最初は僕のダラブッカが出だしだから僕も凄く緊張した。僕は僕に出来ることが少ない。桜みたいに彼らに何かをしてあげれることはほとんどない。だから桜が言う音楽への気持ちの込め方をみんなに聞いて自分なり考えた。僕はその気持ちを込めて、タラブッカを鳴らした。
僕がダラブッカで演奏し始めたのを合図に、カマルさんは先程の長方形の大きな布を後ろから両手で広げ、両手を広げたままふわりと回る。布が軽やかに舞い、まるで夜空を浮かび上がらせるようだった。スカートを翻し、妖艶な腰つきで腰をくねらせる。そして、王子たちも演奏に入る。伝統的な音楽とリズムの中で、カマルさんは華麗に舞い、その姿は蝶さながらだった。そして、布をバッと床に捨て去ると、カマルさんは両手を掲げ、笑顔を崩さないまま激しく腰を振ってくるりくるりと舞踊った。ここからが本番だ。黒く美しい髪を靡かせて、右へ左へと軽やかに動き回る。鳥の羽のような滑らかな動きで手を操り、幻想的で情熱的な舞を惜しげも無く披露する。これが、カマルさんの踊り。僕らの奏でる音色に合わせて、美しく舞い踊る。
その踊りの熱に倒れている兵士も玉座に座る王妃様も感嘆の声を上げる。国王も目が釘付けになり、もう抵抗することすら忘れているようだった。
そして、五分程の夢の時間はあっという間に過ぎて、踊り終え、深々とお辞儀するカマルさんに大喝采と歓声が湧き上がった。
「素晴らしいー!」
「最高だった!」
「なんて美しいんだ!」
いつの間にか体が動くようになっていた兵士たちを見て、僕は不思議に思って桜を見た。桜はウィンクをして、小声で教えてくれた。
「カマルの踊りは人を魅了する。カマルの踊りに釘付けになり夢中になってるのに、体の自由を奪う必要なんてないでしょ?」
確かに桜の言う通りだ。きっと皆、体が自由になっていたのも気付かずに、夢中でカマルさんの踊りを見ていたに違いない。それこそ国王や王妃だって。
「素晴らしかったわ。貴女の踊り、とても幻想的で、妖艶で、魅了的で。一時の良い夢を見させて貰いました。ありがとう」
パチパチと拍手をする王妃にカマルさんと王子は顔を見合わせ、嬉しそうに抱きしめあった。
「ありがとう母上!」
「光栄です! 王妃様! 」
二人が喜ぶ中、肝心の国王はというと――
「…………」
苦い顔をして、何か葛藤しているようだった。
「確かに、確かに君の舞は素晴らしいものだった。歌と踊りを愛する我が国に恥じないものだ。しかし、やはり王族でもない者を嫁にするとなると……。サイラスよ、愛など後からついてくるもの。一度隣国の姫と会ってから考えても――」
国王がゴニョニョと口ごもっていると、突然、謁見の間一体に怒声が響き渡った。
「あなた!!! いい加減にしてッ!!!」
その声は王妃の者で、その圧倒的な迫力に国王どころか、王子もカマルさんも周りの兵士たちもギョッとして驚いていた。きっと、普段彼女はこんな大声で怒る人では無いのだろう。凍りついた雰囲気がそれを物語っている。
「貴方、息子とカマルさんのこの決意を見てもまだそんなこと言うの!? そもそも、愛は後からついてくるなんて、よくもまぁその口で言えたものね!?」
「え、あ……」
「貴方、忘れたとは言わせないわよ! 私に一目惚れして、毎日毎日、胸焼けするような甘~いポエムを送ってきたことを! 私が断っても諦めずに何度もアタックしてきたじゃない!」
王妃の怒涛の叱責に、国王は口を挟む暇もなく狼狽えた。それを聞いて、王子はびっくりした様子で国王に聞いた。
「え、それは本当ですか!? 父上」
「う……あ……」
「ほら、本当のことを言ってあげなさい!」
「う……ほ、本当だ。私は社交場で会った姫の妻に一目惚れして、毎日アタックした……。断られても諦められずに、ずっとアタックし続けて、やっと結婚してもらえたんだ……」
細々と語る国王に、王子は少し笑いながら「知らなかった」と、微笑んだ。
「じゃあ、父上、私の気持ちが分かるでしょう? 私は父上が母上を諦められなかったように、私もカマルのことを諦められないくらい好きなんだ。愛しているんだ。だから、認めて欲しい。僕らの関係を――」
「私からもお願い致します。私が彼に釣り合わないことくらい重々承知です。けれど、それでも彼と一緒にいたい! 心からお慕い申し上げております!」
互いに手を繋ぎ、誠意を込めて精一杯お願いする二人に、王妃は「あなた」と、国王を促した。国王は観念したように一度うなだれたあと、気を取り直してゴホンと咳払いした。
「わかった。私の負けだ。君たちの交際を認めよう」
とうとう折れてくれた国王に、王子もカマルさんも手を取り合って喜んだ。それを見て、周りの兵士たちも祝福の拍手を送る。
「しかし、だ」
だが、そんな和やかなムードでも、国王はまだ何かあるようで口を挟んだ。
「カマルくん。君は王族ではない」
「はい……」
「王族には王族の暮らしがある。今までのような生活は送れないと思え」
「はい。それも承知の上です」
「王族同士の社交も国民への挨拶もやらなければならない事はたくさんある。それにはまず品のある礼儀作法も学ばねばならない。毎日レッスン漬けになるぞ」
「かまいません! 何としてもやり遂げてみせます!」
「うむ、分かれば良いのだ……。……サイラス、カマルくん、おめでとう」
国王は気難しそうな顔をやっと和らげて笑ってくれて、二人に拍手を送った。とうとう国王にも王妃にも正式に認められ、王子はいても立ってもいられず、カマルさんを抱き上げてくるりと一回転した。
「やったー! 父上ありがとう! カマル、私たちは認められたんだ!」
「ええ! ええ! うふふふふふふ」
幸せの雰囲気に満たされたこの結末。それは、僕が思い描いていたよりもずっと素晴らしいものだった。チラリと桜を見れば、桜は満足気に腕を組んで笑っていた。
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