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6話目!黒乃の章 記憶の足跡
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「みゃみゃ! どういう風の吹き回しかみゃ? まぁ手伝ってくれるなら有難いのみゃ」
「うん、僕らで良ければ力を貸すよ」
黒猫は足を止めてくるりと回り、僕らの方へのトコトコと駆け寄ってくる。その姿はとても愛らしい。黒乃も遅れて僕の後ろからやって来て、また黒猫に視線を合わせるようにその場にしゃがみ込んだ。
「黒乃、ホントに良いの?」
「何がだ?」
「僕の選択に従うって言ってたこと……」
「あ? 男に二言はねぇよ。それに、たまには寄り道するのも悪くねぇだろ」
黒乃は心底どうでも良さそうに大きな欠伸をした。桜もそうだけど、黒乃もけっこうサッパリした性格で、人助け……もとい猫助けなどに躊躇いなどはないようだ。僕は安心して黒猫に向き直った。
「おみゃーらはみゃーの言葉が分かるみたいだし助かるみゃ。褒美はネズミか魚か鳥で良いかみゃ?」
「うっ! そ、それは遠慮するよ……」
「みゃんだ、美味しいのに……」
「そ、それより!」
このままでは黒猫のペースに飲まれてしまい、永遠に褒美の話で話が拗れそうになるから、僕はすぐさま話題を変えた。
「場所も明確に分からないのに、どうやって家まで帰ろう?」
僕は顎に手を当てて、うんうんと頭を悩ませた。そして、黒猫が首輪をしている事に気付く。シンプルな細長い赤い首輪だ。
「首輪……。首輪に住所とか書いてないかな?」
「迷子札ってやつか」
黒乃が黒猫の首輪を軽く引っ張って内側を確かめた。けれどこの手の細長いタイプの首輪には住所など書くスペースもなく、ただの無地の布の首輪であった。
「ま、だろうな」
黒乃にはそれがわかっていたようで、フンと鼻を鳴らして、首輪から手を離した。
「どうしよう……」
「そんな悩む必要ねぇよ。言ったろ? 助けてやるって」
「え、でも――」
黒乃は突然黒猫の額に手を当てて、黒猫の瞳をじっと見つめた。目の奥が今ギラリと光った気がする。黒猫も何かを察したのか、毛がゾワワッと逆立って、カチコチに固まってしまった。
「なるほどな」
先程の一連の流れで、黒乃は何か分かったようで、一人納得した様子で呟いた。黒猫も黒乃の手から解放されて、やっと緊張が解けたのか、弱々しく項垂れていた。
「なんか凄く怖かったにゃ……毛みゃみがゾワッとしたみゃ……」
心中お察しします。
「さっきこいつの記憶の中を盗み見た。家の場所は分かった。すぐそこの街の住人だ」
「え」
「間違いねぇ。あっちの方だ」
僕と黒猫は黒乃が指差した方へと視線を向けた。さっきの一瞬で 家の場所を特定したというのか。視線の先には道しか無かったが、この森林を抜けると街ががあるのだろう。僕らは黒乃の言葉を信じて、そこへ向かうこととなる。
「善は急げだ。ランニングがてらにさっさと行くぞ」
「え、うん。でも猫は?」
一緒に歩いて連れていくの?
そう思ったけれど、黒猫はいつの間にか黒乃の肩に後ろ足を掛けて、頭の上にへばりついていた。
「みゃぜだか知らみゃいが、体が勝手にこいつにしがみついてしまうみゃ」
「面倒臭ぇからこいつには体の自由を奪って、俺の頭にしがみついててもらう」
「そ、そっか」
僕は黒乃の頭にしがみつく黒猫は何が起こったかわからずに、キョロキョロとしていたが、僕はそんな黒猫に抱きつかれる黒乃を見つめて、少し羨ましく思うのであった。
僕も猫に抱きつかれたい……。
そして、僕らは程なくして街に着いた。街まで少しの距離だったけれど、いつものペースではなく、黒乃のペースでランニングしたことにより、街に到着した頃には僕はもうヘトヘトだ。膝に手をついて、前のめりに項垂れて、ハァハァと息を切らす。
「ふふん、やっぱりお前もまだまだだな」
黒乃は何故か自慢げに鼻を鳴らし、勝ち誇っていた。正直、あんなハイペースで息一つ乱していないのは凄いと思う。
「このニンゲンの方はだらしないのみゃ」
「うっ……」
黒猫にまでバカにされ、僕は一人、酷く落ち込むのであった。
それにしても――
「すごいね、綺麗な港町だ」
この街は大きな海の港があり、船が何隻も停まっている。太陽の光で照らされた海は、キラキラと星空のように輝き、光を反射している。街はレンガ造りでオレンジ色の屋根が多く、ヨーロッパに来たみたいだ。漁師の人達が引き揚げた魚を市場で売りさばいたり活気のある街だ。
「みゃー。懐かしいみゃ。みゃーも昔はこの街であの魚をたくさん取ってるオッサンたちから魚を分けてもらってたみゃ!」
黒猫は網の中にいる沢山の魚を見て目を輝かせながらそう言った。
「あれ? ってことは、元々は野良猫だったの?」
僕がそう聞くと、黒猫は「みゃ?」と、小首を傾げた。
「みゃーは元々外で生きていたみゃ。そしたら、知らないニンゲン共に捕まって、その後変な針とか刺されて嫌な思いをしたみゃ。それから、色んなニンゲンの見世物にされて、その時にあの子と出会ったのみゃ」
あの子とは黒猫の元の飼い主のことだろう。そうか、彼女は元々野良猫だったのか……。
「うん、僕らで良ければ力を貸すよ」
黒猫は足を止めてくるりと回り、僕らの方へのトコトコと駆け寄ってくる。その姿はとても愛らしい。黒乃も遅れて僕の後ろからやって来て、また黒猫に視線を合わせるようにその場にしゃがみ込んだ。
「黒乃、ホントに良いの?」
「何がだ?」
「僕の選択に従うって言ってたこと……」
「あ? 男に二言はねぇよ。それに、たまには寄り道するのも悪くねぇだろ」
黒乃は心底どうでも良さそうに大きな欠伸をした。桜もそうだけど、黒乃もけっこうサッパリした性格で、人助け……もとい猫助けなどに躊躇いなどはないようだ。僕は安心して黒猫に向き直った。
「おみゃーらはみゃーの言葉が分かるみたいだし助かるみゃ。褒美はネズミか魚か鳥で良いかみゃ?」
「うっ! そ、それは遠慮するよ……」
「みゃんだ、美味しいのに……」
「そ、それより!」
このままでは黒猫のペースに飲まれてしまい、永遠に褒美の話で話が拗れそうになるから、僕はすぐさま話題を変えた。
「場所も明確に分からないのに、どうやって家まで帰ろう?」
僕は顎に手を当てて、うんうんと頭を悩ませた。そして、黒猫が首輪をしている事に気付く。シンプルな細長い赤い首輪だ。
「首輪……。首輪に住所とか書いてないかな?」
「迷子札ってやつか」
黒乃が黒猫の首輪を軽く引っ張って内側を確かめた。けれどこの手の細長いタイプの首輪には住所など書くスペースもなく、ただの無地の布の首輪であった。
「ま、だろうな」
黒乃にはそれがわかっていたようで、フンと鼻を鳴らして、首輪から手を離した。
「どうしよう……」
「そんな悩む必要ねぇよ。言ったろ? 助けてやるって」
「え、でも――」
黒乃は突然黒猫の額に手を当てて、黒猫の瞳をじっと見つめた。目の奥が今ギラリと光った気がする。黒猫も何かを察したのか、毛がゾワワッと逆立って、カチコチに固まってしまった。
「なるほどな」
先程の一連の流れで、黒乃は何か分かったようで、一人納得した様子で呟いた。黒猫も黒乃の手から解放されて、やっと緊張が解けたのか、弱々しく項垂れていた。
「なんか凄く怖かったにゃ……毛みゃみがゾワッとしたみゃ……」
心中お察しします。
「さっきこいつの記憶の中を盗み見た。家の場所は分かった。すぐそこの街の住人だ」
「え」
「間違いねぇ。あっちの方だ」
僕と黒猫は黒乃が指差した方へと視線を向けた。さっきの一瞬で 家の場所を特定したというのか。視線の先には道しか無かったが、この森林を抜けると街ががあるのだろう。僕らは黒乃の言葉を信じて、そこへ向かうこととなる。
「善は急げだ。ランニングがてらにさっさと行くぞ」
「え、うん。でも猫は?」
一緒に歩いて連れていくの?
そう思ったけれど、黒猫はいつの間にか黒乃の肩に後ろ足を掛けて、頭の上にへばりついていた。
「みゃぜだか知らみゃいが、体が勝手にこいつにしがみついてしまうみゃ」
「面倒臭ぇからこいつには体の自由を奪って、俺の頭にしがみついててもらう」
「そ、そっか」
僕は黒乃の頭にしがみつく黒猫は何が起こったかわからずに、キョロキョロとしていたが、僕はそんな黒猫に抱きつかれる黒乃を見つめて、少し羨ましく思うのであった。
僕も猫に抱きつかれたい……。
そして、僕らは程なくして街に着いた。街まで少しの距離だったけれど、いつものペースではなく、黒乃のペースでランニングしたことにより、街に到着した頃には僕はもうヘトヘトだ。膝に手をついて、前のめりに項垂れて、ハァハァと息を切らす。
「ふふん、やっぱりお前もまだまだだな」
黒乃は何故か自慢げに鼻を鳴らし、勝ち誇っていた。正直、あんなハイペースで息一つ乱していないのは凄いと思う。
「このニンゲンの方はだらしないのみゃ」
「うっ……」
黒猫にまでバカにされ、僕は一人、酷く落ち込むのであった。
それにしても――
「すごいね、綺麗な港町だ」
この街は大きな海の港があり、船が何隻も停まっている。太陽の光で照らされた海は、キラキラと星空のように輝き、光を反射している。街はレンガ造りでオレンジ色の屋根が多く、ヨーロッパに来たみたいだ。漁師の人達が引き揚げた魚を市場で売りさばいたり活気のある街だ。
「みゃー。懐かしいみゃ。みゃーも昔はこの街であの魚をたくさん取ってるオッサンたちから魚を分けてもらってたみゃ!」
黒猫は網の中にいる沢山の魚を見て目を輝かせながらそう言った。
「あれ? ってことは、元々は野良猫だったの?」
僕がそう聞くと、黒猫は「みゃ?」と、小首を傾げた。
「みゃーは元々外で生きていたみゃ。そしたら、知らないニンゲン共に捕まって、その後変な針とか刺されて嫌な思いをしたみゃ。それから、色んなニンゲンの見世物にされて、その時にあの子と出会ったのみゃ」
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