神様のお導き

ヤマト

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6話目!黒乃の章 記憶の足跡

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「元々、テラは白様と銀様の熱心で献身的な活動により、人々が動物に優しい世界となった」
「どうしたの急に」
 突然、意味のわからない演説を始める黒乃に、僕は眉間に皺を寄せて突っ込んだ。黒乃はそれを無視して話を続ける。
「外で生きる動物たちにも人々は優しく、見かければ餌を分け与える。それにより、餌付けされた動物たちは、人々への警戒心が薄れ、そこらへんてわ寝たりするようにもなった。だれもそれに文句は言わず、居れば撫でるし、おやつもあげる。外で生きる動物たちにも過ごしやすい世の中となったのだ。しかし、それでも環境の中における、暑さや寒さ、雨風なんかの自然の脅威は、彼ら自身が自分でそれを凌げる場所を探すしかない。外での暮らしが快適とは言えど、まだまだ野良には生きにくい世の中なのだ」
「その語り口調なんなの?」
「うっせぇな、雰囲気だよ、雰囲気」
 僕が思わず黒乃の口調に水を差したことにより、黒乃はいつもの状態に戻り、ぷりぷりと怒っていた。
「まぁ、んで、だから、そういう野良のために動物を保護する団体が存在するわけ。そいつらは野良を捕まえて避妊や去勢して、ワクチンも打って、ちゃんと人に慣れさせたら、適切な審査のもと、その保護した動物の讓渡会を開くんだよ。動物に優しい世の中とは言え、虐待する奴もいるかもしれねぇから、申請者にもちゃんとした審査が必要で契約書にサインもしなきゃならねぇけどな。ま、この時代に動物虐待するやつは阿呆としか言いようがねぇけどな」
 黒乃は何を思い浮かべたのか、苦笑いして虐待する人のことを嘲笑った。
「虐待したらどうなるの?」
「虐待したら、白と銀のやってた制裁と同じように、目には目を歯には歯を方式で厳重な罰が下る。虐待したことと同じ苦しみを味あわせる。もし虐待の末、殺してしまったなら、そいつも当然殺される。死刑も安易に行われるし、死刑にならなくとも、動物を虐待したと世間に広まれば、そいつは牢獄から出てからもタダでは済まない。動物好きの奴から恐ろしい報復が待ってるからな」
「ヒッ……それは、えげつないね……」
 それが良い事なのか悪い事なのか僕にはわからない。ただ、動物たちにとっては生きやすい世の中となったのだろう……。
「でもさ、動物はかわいがるけど、ちゃんと肉料理とかあるよね? 家畜とかはそのー……良いの? 殺して」
「家畜は別だ。今の時代、安楽死で一瞬で殺せるようになってる。いたずらに家畜を痛めつけたりしたら重罪だけど、安楽死で生産することについては暗黙の了解となってる。その代わり、食う時はちゃんと感謝の気持ちを込めなきゃならないけどな。ただ、フォアグラとかはなくなったけどな」
 僕は詳しくは知らないけど、確かフォアグラって結構残酷なやつだよね……。本当に苦しめるって行為自体がだめになったのが、このテラなんだろうな。
「だからって動物にだけ甘い訳じゃなくて、人を襲ったりする熊やイノシシなんかは住処に帰すことが難しければ、殺処分することもある。食材として狩ることも廃止はされてないしな。ただ――」
「痛みは一瞬で殺せってこと?」
「そ。タフな奴でない限りは急所狙ってちゃんと一瞬で殺してやる。だから、狩るのにもちゃんと許可や資格がいる」
「なんか色々しっかりしてるんだね」
 良い世の中になったのかな? 生態系が崩れないよう白さんたちが管理してるなら、まぁ良いのかな?
「まぁ、そんなわけで、殺処分とかは廃止されたし、今は讓渡会が主流なわけ。白と銀は今でも生体の均衡が崩れないように、野良の動物の数とかも上手いこと調整してるし、テラの人々もちゃんと学校で動物の飼い方とか勉強して、避妊や去勢は絶対って習ってるしな。めったなことじゃその均衡は崩れねぇよ」
「へー! 学校で動物の飼い方とか習うんだ!」
 僕のいた時代はそんなことなかったのにな!
「今の時代じゃ、誰もが一回は動物を家族として迎え入れるからな。飼い方や育て方は小学の必須科目だ」
「そういうの良いね」
 僕もこの時代に生まれてたら、何か動物飼ってたのかなー。いいなー。僕も飼ってみたいな~。
「まぁ、話が脱線しちまったけど、つまりはそういうこと。この黒猫は元は野良で、保護団体に捕まって、適切な処置を受けた後、讓渡会でその飼い主の元へ渡ったってことだ。」
「なるほどね」
 僕は、黒乃の頭にしがみつく黒猫の方へと視線を向けた。黒猫は耳をピクピク動かして、不思議そうにしていた。
「みゃーは難しいことはわからみゃいけど、多分このでっかい猫の言う通りみゃ。みゃーはあの子と出会ってから、あの子の家で一緒に暮らすようになったみゃ。それからは外へは自由に出れなくみゃったけど、それでもみゃーは幸せだったみゃ。部屋は暖かいし、涼しいし、何よりあの子がいつもみゃーと一緒にいてくれたみゃ。あの子だけはみゃーのことを心の底から愛してくれたんだみゃ」
 黒猫の話によれば、黒猫は本当にその飼い主から愛されていたことが分かる。じゃあ、何故捨てたのか。それはやっぱり、やむを得ない事情と言うやつだろうか。彼女が勝手に逃げ出してきたわけでは無さそうだし……。
「うーん……」
「難しい顔をしてどうしたみゃ?」
「えっ、あっ、なんでもない!」
 危ない、危ない。どうやら悩んでいたことが顔どころか声に出てしまっていたようだ。もし捨てられたなんて知ったら、黒猫はどうするんだろうな……。
 僕が今度はシュンとしていると、黒猫はまた不思議そうにしていた。
「ニンゲンの考えてる事はよくわからみゃいみゃ。でも、元気出すみゃ」
「あ、ありがとう!」
 まさか猫に慰められる日が来ようとは。僕は自分のことを情けなく思い、再び、両頬をパンパンと軽く叩いて、気合いを入れ直した。
「ところでおみゃーらにもう一つお願い事があるにゃ」
 黒猫が突然そんなことを言い出して、僕はオウム返しで「お願い事ぉ?」と、黒猫に聞いた。
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