神様のお導き

ヤマト

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6話目!黒乃の章 記憶の足跡

6-6

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「こうやって街を自由に歩けるのも久しぶりだみゃ。この街にはキラキラしたものがたくさんあるみゃ。あの子にプレゼントを買って帰りたいみゃ」
 ウキウキとした様子で喋る黒猫。僕はすぐにうんとは言えなかった。それを買ってどうなる。もしかしたら受け取って貰えないかもしれない。その気持ちが無駄になるかもしれない。僕が口ごもっていると、黒乃が口を開いた。
「金の心配はねぇ。プレゼント買うかどうかもお前が決めろ。これはお前が受けた猫助けだ。俺はそれに従うぜ」
 黒乃は最後まで僕の選択に従うつもりでいる。彼に選択を委ねてはならない。なら、僕はどうする? 僕は……僕は――……最後まで黒猫の意志を尊重しよう。
「わかったよ。お金の心配は要らないみたいだから好きなものを選ぶと良いよ」
「ホントかみゃ!? お金がなんみゃのか知らんけど、好きなプレゼントを選ぶみゃ! 早速行くみゃ!」
 僕らは目を輝かせる黒猫の指示に従って、街中を歩くことにした。

 黒猫はあっちへ行きたい、こっちへ行きたいと散々僕らを連れ回し、三十分程経った頃だろうか。やっと黒猫のお眼鏡にかなうものが見つかった。
「みゃみゃ! おい、おみゃーら! みゃーはあれが良いみゃ!」
 それは百合の花のような飾りのついたゴムだった。
「みゃーは知ってるみゃ! あの子が誕生日の時、いつも両親はあの子へあの花の形をした花の束をプレゼントしているみゃ! きっとあの子はあの花が好きなんだみゃ!」
「そうなんだ?」
「それにあの子は毛が長くていつも紐で毛を束ねているみゃ。絶対喜んでくれるみゃ~!」
 やっとプレゼントにピッタリのものが見つかって喜ぶ黒猫とは反対に、僕は胸の奥がズキリと痛んだ。こんなにも飼い主のことを愛してくれているのに……。どんな事情があったとしても、最後まで面倒を見なくてはならない。それが動物を飼う飼い主の責任だと僕は思った。
「ほれ! 浮かない顔してないで、さっさと買いに行くぞ」
 僕は黒乃の声にハッと我に返り、慌てて彼の後を追いかけた。
 そのゴムが置いてあるのは市場の出店で、黒乃はすぐに店員さんに声を掛けた。
「すんません。その髪飾りひとつ頂戴」
「あら、とても男前のお客様ですね。誰かへの贈り物ですか? プラス百ギラでラッピング致しましょうか?」
「ギラ……!」
「テラとゴールドのG取って、ゴラじゃ響き悪いから、読みやすくギラ」
 何気に初めてこの世界の通貨の単位知った気がする! 買い物の時、いつもアキラくんが支払いしてくれてるしな……。Gって表記されてるだけでなんて読むか知らなかったし。あと、簡単な解説ありがとう! 黒乃!
「ラッピングはどうする?」
 驚く僕を他所に、黒乃は自身の頭にへばりつく黒猫へと質問した。
「みゃみゃ? らっぴんぐとはみゃんだ?」
「ラッピングはプレゼントの商品に飾り付けして綺麗に包装してもらう事のことだよ」
 僕がそう説明すると、黒猫は「みゃみゃ!」と、目を光らせた。
「絶対するみゃ! そんみゃのしみゃいと損だみゃ!」
「OK、じゃあラッピングもお願いします」
 黒乃は黒猫の返事を聞いて、すぐにラッピングをお願いしていた。けれど、店員さんはすぐには動かず、不思議そうにこちらを見ていた。
「あの、失礼ですが、何と会話されているのでしょうか?」
 店員さんの質問に、僕と黒乃はギョッとした。黒猫と話すことが当然となり、僕らはついうっかり、今までのノリで、人前で黒猫と会話してしまったのだ。絶対変な人だと思われた!
「なななナンデモナイデス! ちょっとワイヤレスの電話をしてて!」
「そーそー! こいつの妹がうるさくってー!」
 お互い苦しい言い訳をしてその場を凌いだが、以後、気をつけるようにしないと。
 店員さんの見事な手際により、黒猫の選んだ髪留めのゴムは綺麗にラッピングされた。ピンクの小さな箱に、指輪のようにゴムが嵌め込まれている。
「よし、とりあえずプレゼントも買い終わったし、さっさと家へ向かうぞ」
「当初より結構回り道になっちゃったね」
「気にするみゃ。たまには寄り道も悪くみゃいみゃ」
 それはこちらのセリフなのだけれど、動物の考えてる事はよくわからないなと思いつつ、反論せずに頷いておいた。

 そして、とうとう運命の時がくる――。
 僕は何があっても彼女の味方でいよう。たとえどんな結末が待っていても、彼女の傍に居てあげよう。常にハッピーエンドではいられない。そんな無情な世界でも、僕らだけは味方だと。きっと黒乃もまた、味方で居てくれるだろうと。
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