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6.5話目! 十三神巡り
6.5-13 ホラ編
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僕らは今までの疲れを癒すような、とても優雅なティータイムをしていた。レトロな家具で揃えたノスタルジックな雰囲気の部屋で、コーヒーカップから香ばしい香りを漂わせ、ほっと一息吐く至福の時間。
「私の淹れたコーヒーはお気に召したかな?」
「あ、はい! とても!」
僕とアキラくんは、時の神であるホラさんにコーヒーを淹れて貰って、少し休憩を取っていたのだ。あまりのコーヒーの美味しさに、僕の心は洗われるようだった。
「はぁ……。心が癒されます……」
それはアキラくんも同じようで、アキラくんは見たこともないくらい気の抜けた顔で、コーヒーを一口一口味わっていた。やっぱりアキラくんも疲れてたんだな。いつも僕に付き添って仕事を一緒にしてくれて、本当に感謝しかない。早く一人前になって、アキラくんの仕事も楽にしてあげたいな。
「良ければ持ってきていただいた菓子折りも一緒に食べようか。こんな老いぼれ一人ではとても食べきれない」
ホラさんは老紳士の姿をしている。白髪ではないのだが、髪は黒く長い。後ろでひとつに結っていて、前髪はところどころ少し垂れている。くせっ毛なのか、髪は少しウェーブを描いている。目は切れ長で、鼻も高く、口と顎には髭を蓄えていて、とてもダンディな見た目だ。服装は黒い燕尾服を身に纏っていて!珈琲店のオーナーだと言われれば、すぐに信じてしまうだろう。
ホラさんは菓子折りのフィナンシェを取り分け、僕らに二つずつ差し出してくれた。
「良いんですか? 本当に」
「あぁ。私も一人で食べるより皆で食べたいからね。さぁ、遠慮なく食べてくれ」
僕はホラさんにそう促され、遠慮なくフィナンシェを食べることにした。フィナンシェのバターの風味とコーヒーのほろ苦さがまた絶妙にマッチする。とても美味しい。
「はぁ……甘いものにコーヒーは合いますねぇ……」
アキラくんはもうすっかり蕩けてしまっている。こんなアキラくんを見るのは希少だ。
「やはり、ホラさんの淹れるコーヒーは絶品です。ご馳走様でした」
僕とアキラくんは本来の目的を忘れ、コーヒーとお菓子を堪能した後、持て成してくれたホラさんに深深とお辞儀をした。
「いやいや、私も自分の淹れたコーヒーを飲んで貰って、そうやって褒めて貰えるのはとても嬉しいことだよ。ありがとう」
ホラさんも優しくてとても良い人だなぁ。癒される。
「では、改めまして、今日の用件を済ませてしまいましょう」
「あぁ、頼むよ」
アキラくんはホラさんにいつもの質問をする。
「体調は変わりないですか?」
「あぁ。私は至って普通だよ」
「では、街や人々に何か変わった様子は見られますか?」
「そうだね。相変わらず時間を巻き戻したいという人々の願いが後を立たないが、他は特に変わりはないかな。魔族の動向が気になるところだが、今のところは放っておいても良いだろう」
「なるほど。御協力感謝致します」
「いや。こちらこそわざわざ来てもらって申し訳ないな」
ホラさんは申し訳なさそうに笑って、コーヒーに口をつけていた。時間を巻き戻したい人たちって、やっぱり過去に後悔がある人なのだろうか。確かに誰もが一度は願うことだろう。ホラさんも大変だな。
「ところで」
ホラさんは質問が終わると、そそくさと席を立ち、近くの棚から何かが入った紙袋を取り出した。それを持ってまた席に座る。
「ひとつ頼まれてくれないかな」
「はい、何でしょう?」
「これを灰冶くんに渡して貰えないだろうか。この中にはコーヒー豆が入っていてね、灰冶くんが分けてくれと言っていたものが入っている。彼に渡してもらえると私も助かる」
「はい、良いですよ。任されました」
アキラくんはホラさんから紙袋を受け取り、僕に渡してきた。
「空間転移するには豆粒は少し不安なので、すいませんが帰るまで貴方が持っていてください」
「うん、わかったよ」
「よろしくお願いします」
僕はアキラくんからコーヒー豆を受け取り、落とさないように大事に抱えた。菓子折りももう残り四つの袋なので、残りはアキラくんが持つようだ。
「では、これで失礼しますね」
「あぁ、気をつけて」
僕とアキラくんはそのまま部屋から出ていこうとした。ドアを閉めようとしたその時だ。ドアの隙間から、ホラさんは人が変わったかのように鋭い眼差しで一言――。
「ニル・オムニアには気をつけろ」
ただそれだけ言って、ドアの奥へと消えていった。僕は背筋が凍るほどの恐怖に、一瞬抱えていたコーヒー豆を落としそうになった。
「…………」
チラリとアキラくんを見てみれば、流石のアキラくんも一筋冷や汗をかいていた。
「彼は基本的には良い人ですが、敵に回すと厄介な人です。彼もヴェントゥスさん同様、僕らに警告してくれたんでしょうが、警告の仕方が怖すぎる……。心臓が止まるかと思いましたよ……」
アキラくんでも恐怖することがあるんだな。でも確かに、あの威圧感とあの眼光で凄まれたら恐怖しない人は居ないだろう。ドアの隙間から睨まれるっていのが、また恐怖を煽る。さっきまで癒されていた疲れがまたドッと押し寄せてくるようだった。
「残りはあと少しです。頑張りましょう……」
「うん、そうだね……」
僕らは神様たちの一挙一動に振り回され、霹靂としながら次の神様の許へと向かうのだった。
「私の淹れたコーヒーはお気に召したかな?」
「あ、はい! とても!」
僕とアキラくんは、時の神であるホラさんにコーヒーを淹れて貰って、少し休憩を取っていたのだ。あまりのコーヒーの美味しさに、僕の心は洗われるようだった。
「はぁ……。心が癒されます……」
それはアキラくんも同じようで、アキラくんは見たこともないくらい気の抜けた顔で、コーヒーを一口一口味わっていた。やっぱりアキラくんも疲れてたんだな。いつも僕に付き添って仕事を一緒にしてくれて、本当に感謝しかない。早く一人前になって、アキラくんの仕事も楽にしてあげたいな。
「良ければ持ってきていただいた菓子折りも一緒に食べようか。こんな老いぼれ一人ではとても食べきれない」
ホラさんは老紳士の姿をしている。白髪ではないのだが、髪は黒く長い。後ろでひとつに結っていて、前髪はところどころ少し垂れている。くせっ毛なのか、髪は少しウェーブを描いている。目は切れ長で、鼻も高く、口と顎には髭を蓄えていて、とてもダンディな見た目だ。服装は黒い燕尾服を身に纏っていて!珈琲店のオーナーだと言われれば、すぐに信じてしまうだろう。
ホラさんは菓子折りのフィナンシェを取り分け、僕らに二つずつ差し出してくれた。
「良いんですか? 本当に」
「あぁ。私も一人で食べるより皆で食べたいからね。さぁ、遠慮なく食べてくれ」
僕はホラさんにそう促され、遠慮なくフィナンシェを食べることにした。フィナンシェのバターの風味とコーヒーのほろ苦さがまた絶妙にマッチする。とても美味しい。
「はぁ……甘いものにコーヒーは合いますねぇ……」
アキラくんはもうすっかり蕩けてしまっている。こんなアキラくんを見るのは希少だ。
「やはり、ホラさんの淹れるコーヒーは絶品です。ご馳走様でした」
僕とアキラくんは本来の目的を忘れ、コーヒーとお菓子を堪能した後、持て成してくれたホラさんに深深とお辞儀をした。
「いやいや、私も自分の淹れたコーヒーを飲んで貰って、そうやって褒めて貰えるのはとても嬉しいことだよ。ありがとう」
ホラさんも優しくてとても良い人だなぁ。癒される。
「では、改めまして、今日の用件を済ませてしまいましょう」
「あぁ、頼むよ」
アキラくんはホラさんにいつもの質問をする。
「体調は変わりないですか?」
「あぁ。私は至って普通だよ」
「では、街や人々に何か変わった様子は見られますか?」
「そうだね。相変わらず時間を巻き戻したいという人々の願いが後を立たないが、他は特に変わりはないかな。魔族の動向が気になるところだが、今のところは放っておいても良いだろう」
「なるほど。御協力感謝致します」
「いや。こちらこそわざわざ来てもらって申し訳ないな」
ホラさんは申し訳なさそうに笑って、コーヒーに口をつけていた。時間を巻き戻したい人たちって、やっぱり過去に後悔がある人なのだろうか。確かに誰もが一度は願うことだろう。ホラさんも大変だな。
「ところで」
ホラさんは質問が終わると、そそくさと席を立ち、近くの棚から何かが入った紙袋を取り出した。それを持ってまた席に座る。
「ひとつ頼まれてくれないかな」
「はい、何でしょう?」
「これを灰冶くんに渡して貰えないだろうか。この中にはコーヒー豆が入っていてね、灰冶くんが分けてくれと言っていたものが入っている。彼に渡してもらえると私も助かる」
「はい、良いですよ。任されました」
アキラくんはホラさんから紙袋を受け取り、僕に渡してきた。
「空間転移するには豆粒は少し不安なので、すいませんが帰るまで貴方が持っていてください」
「うん、わかったよ」
「よろしくお願いします」
僕はアキラくんからコーヒー豆を受け取り、落とさないように大事に抱えた。菓子折りももう残り四つの袋なので、残りはアキラくんが持つようだ。
「では、これで失礼しますね」
「あぁ、気をつけて」
僕とアキラくんはそのまま部屋から出ていこうとした。ドアを閉めようとしたその時だ。ドアの隙間から、ホラさんは人が変わったかのように鋭い眼差しで一言――。
「ニル・オムニアには気をつけろ」
ただそれだけ言って、ドアの奥へと消えていった。僕は背筋が凍るほどの恐怖に、一瞬抱えていたコーヒー豆を落としそうになった。
「…………」
チラリとアキラくんを見てみれば、流石のアキラくんも一筋冷や汗をかいていた。
「彼は基本的には良い人ですが、敵に回すと厄介な人です。彼もヴェントゥスさん同様、僕らに警告してくれたんでしょうが、警告の仕方が怖すぎる……。心臓が止まるかと思いましたよ……」
アキラくんでも恐怖することがあるんだな。でも確かに、あの威圧感とあの眼光で凄まれたら恐怖しない人は居ないだろう。ドアの隙間から睨まれるっていのが、また恐怖を煽る。さっきまで癒されていた疲れがまたドッと押し寄せてくるようだった。
「残りはあと少しです。頑張りましょう……」
「うん、そうだね……」
僕らは神様たちの一挙一動に振り回され、霹靂としながら次の神様の許へと向かうのだった。
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