神様のお導き

ヤマト

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7話目!灰冶の章 夢境の栞

7-4

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「なんだ、お前! ゴブリンを庇うのか!?」
「いや、あの――」
「ゴブリンの味方をするならあんたもタダじゃおかねぇ!」
「待っ――」
 ゴブリンが街に侵入してきたことは、この街の人にとってとても重大なことだったらしく、男は僕の言い分も聞く耳持たず、僕に向かって拳を振るいあげてきた。
「…………!」
 でも――遅い。黒乃に毎日稽古に付き合ってもらっていたけど、黒乃より全然遅い。大振りな拳は僕がその拳を受け流すのに十分な時間だった。僕が拳を受け流すとすぐさま二発目がくる。しかし、それも遅い。何度も拳を振りかざされたが、僕はそれを軽々と受け流していく。
「くっ! なんだコイツ!」
「あら、意外とやるじゃない」
 大振りな攻撃を繰り返して、男は疲れたのか肩で息をする。すると、それを見ていた他の男たちも参戦して、拳を構えてジリジリと僕に近づいてきた。
 一人、二人、三人……! だめだ、一人ならなんとかなるかもしれないけど、こんなに大人数じゃ……。
「ゴブリンは街に悪さをする。入ってきたら二度とこんなことしねぇようにある程度痛めつけなきゃならねぇんだ。お前も人なら分かるだろ!?」
 彼らには彼らの言い分がある。それはこの世界では最もなことなのかもしれない。でも、僕はこの世界の人ではなかった。それは見るに耐え難い光景だったのだ。僕は後には退けなくなって、覚悟を決めて拳を構えた。人に危害は加えない。あくまで受け流すだけ……!
 男たちが四方八方から一斉に襲いかかってきた。その時――。
 カツン!
 地面を叩く、無機質な音が響いた。
「仕方の無い子ねぇ」
 それは、灰冶さんがいつの間にか持っていた黒のステッキが地面を叩いた音だった。その音が発せられたと同時に、男たちは不自然な体勢でピタリと止まった。
「こ、これは……!」
「体が、動かない……!」
 どうやら、男たちは体が動かないらしく、普通の体幹では立っているのは難しいだろうというような体勢で固まっていたのだ。
「貴方たちの体の自由は私が奪ったわ。もっとクールになって話し合いましょう。ゴブリンのせいで同じ人間同士争うなんて馬鹿らしいじゃない」
 そう言ってニヒルに笑う彼からは異様なまでの威圧感と背筋を凍るような恐怖が湧き上がる。圧倒的恐怖。実力差は言わずもがなわかる。その恐怖から、男たちも僕も、何も言えなくなって、声をあげる人がいなくなり、辺りは静まり返っていた。
「そう、いいわ。静かなのは結構なことよ」
 一人淡々と喋る灰冶さん。灰冶さんはいつもの余裕そうな笑みを浮かべて話を続けた。
「そのゴブリン、実は私たちの旅先から着いてきてた者なの」
「なんだって?」
「一匹だし、悪意はなさそうだからと放っておいたのだけれど、その判断が間違っていたわ。まさか街にまで入ってくるとはね」
「そ、それじゃあアンタらのせいでこのゴブリンは……?」
「えぇ、そうよ。だからこの子の処罰は私たちがキッチリするわ。街の中で、それもこんな大勢の前でリンチするなんて、見てる人も気の良いものではないでしょう?」
 灰冶さんはコツコツと男の中の一人に近づいて、ステッキの先端で彼の顎をクイッと上げた。
「だから、ここは私たちに任せてちょうだい」
 ただ交渉しているだけのはずなのに、彼からは何とも言える恐怖が伝わってきた。灰冶さんの真っ黒な瞳に見据えられ、思考全てを支配されたかのようになっている。思考は麻痺し、彼はただ静かに頷くしかなかった。
「わ、わかった」
「そう、良かったわ」
 灰冶さんはニッコリと笑って、またカツンとステッキの先端で地面を叩いた。すると、さっきまで奇妙な体勢で固まっていた男たちの体が急に自由になり、体勢を支えきれなくなって、そのまま地面に倒れ込んでしまった。
「さぁ、そうと決まればさっさと行くわよ」
 ステッキをくるりと回して亜空間にしまい、灰冶さんは僕の方へ視線を向けてそう言った。
「そのゴブリンも連れてきて」
「は、はい!」
 僕は慌てて傷だらけになったゴブリンを小脇に抱えると、急いで灰冶さんの後を追いかけた。背中からは男たちの驚いた声が聞こえてきていた。
「な、なんだったんだあいつら……」
「あの奇妙な奴は何者だ……?」
「こ、怖かった……」
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