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7話目!灰冶の章 夢境の栞
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僕らは空間転移で花畑へと戻って来ていた。
「クロエさんの今ギィに会った記憶って……」
「大丈夫よ、消すわけないわ」
屋敷から出たら、僕らがいた記憶は消える。それがクロエさんにも適応されるのではないかと恐れていたが、そうではなかったらしい。僕は灰冶さんから確かな返事を貰って、ホッと安心した。
ギィはというと、花畑けの前で気が済むまで泣いていた。僕らは彼が泣き止むまで黙って傍にいた。一頻り泣いたあと、ギィは少しずつ落ち着きを取り戻し、涙を拭って膝を抱えて座り込む。
「……これで、良かったんだよね……」
力なくそう呟く彼に、僕は何も返せなかった。本当にこれで良かったのかと言われれば、そうであって欲しいと思うだけ。もしかしたらもっと良い手があったかもしれない。間隔を空けて定期的に会うなり、瘴気自体をどうにかする手立てもあったかもしれない。けれど、僕には何が正しくて、何が正解なのかわからない。ただ、彼の決断が後悔の無かったようにと願うばかりだ。
「…………」
暫く静かに二人並んでコスモス畑を眺めていたら、灰冶さんが口元に笑みを称えて、ギィに近付いた。そして、ギィの頭にポスリと白い中折帽子を被せた。
「あれ? それ、灰冶さんの……」
「ふふ、よく似合ってるわ」
ギィの頭に絶妙な位置で帽子を微調整して被せ、灰冶さんは笑ってそう言った。ギィは悲しでいた顔に笑みを浮かべ、嬉しそうに帽子の鍔を両端から両手で掴んだ。
「ギィ、似合う!? ギィかっこいい!?」
「えぇ、かっこいいわよ」
「…………!」
ギィの目が輝きを取り戻し、ギィは嬉しそうにぴょこぴょことその場で飛び跳ねた。
「ハイジ、これくれるの!?」
「えぇ、貴方はもうお子様じゃないわ。立派な大人よ。それ、私のお気に入りの帽子なんだから大事にしてよね?」
「うん! する! する! 嬉しい!」
灰冶さんから帽子を譲り受け、ギィは灰冶さんの周りをクルクルと回った。灰冶さんは凄いなぁ……。一瞬でギィに笑顔を取り戻した。やっぱり僕なんかより全然凄い……。
僕がスキップするギィの姿を暖かい目で眺めていると、ギィは不意に僕の目の前で止まった。何故か、ギィは僕の前で立ち止まり、つぶらな瞳で僕をじっと見つめてくるのだ。
「え!? 何何!? 怖い怖い怖い怖い!」
「……タクトは何もくれないの?」
「へ?」
「タクトは何もくれないの?」
ギィは本気で不思議そうに思っているみたいで、帽子の鍔の両端を両手で持ったまま首を傾げた。僕も訳がわからず首を傾げた。すると、ギィはさらに首を傾げて、九十度くらいに首が曲がっていた。
僕は慌てて身の回りを探ったが、スーツのジャケットの襟についてるブローチは銀さんからもらったものだし、ネクタイなんかあげても彼には長すぎるし、両ポケットを探ってもハンカチと財布しかないし……。そうだ。
僕は閃いて、ギィの後ろへ回り込んだ。ギィも不思議そうに目線で僕を追っていたが、振り向くことはしなかった。僕は青いチェックのハンカチを取り出して、斜めに三角に折ると、彼の首元にハンカチを回した。そして、それを後ろで結ぶと――
「じゃーん! スカーフ!」
こ、これでどうだ……!?
少し苦しいかもしれないが、これでどうだろう。ゴブリンの首は、手足同様細いため、ハンカチでも十分余裕を持って首に巻ける。気になるギィの反応だが、しばらく呆然としていて反応がない。
「…………」
やっぱりダメだったか……?
そう諦めかけたその時――。
「お、おおぉおおお!」
ギィが突然雄叫びを上げた。
「見て見て! ハイジ! ギィかっこいい!?」
「かっこいい、かっこいい」
「見て見て! タクト! ギィかっこいい!?」
「うん! すごいよく似合ってる!」
ギィは僕らの前で色んなポーズを付けながら、三百六十度から帽子とスカーフを見せつけた。
結果は悲しい終わりだったけど、ギィが少しでも元気になって良かった。僕はホッと胸を撫で下ろし、格好つけるギィを見つめた。
「タクト、ハイジ、ありがとう」
ギィはしばらくはしゃいだ後、僕らに改めて向き直って深々と頭を下げた。
「オデ、二人が居てくれて良かった。ちょっとの付き合いだけど、二人ともオデの大事な友達」
「うん」
「ギィ、二人がニンゲンだったら、二人とも会うのを辞めてた」
「うん?」
「でも二人ニンゲン違う。タクトはニンゲンかもしれないけど、なんか普通の人と違う。ハイジ、ニンゲン違う」
「うん???」
僕はギィが何を言ってるかわからなくて、苦い顔をしながら灰冶さんを見た。灰冶さんは「あらあら」と、いつも通り笑っていた。
「だから、タクトとハイジはオデの友達。またギィの家に遊びに来てね。オデ、待ってる」
ギィの野生の勘の鋭さには度肝を抜かれたが、ギィは僕らを友達として認めてくれたらしい。一旦僕らの正体は置いといて、僕はギィに小指を出した。
「?」
「約束。僕のいた国では約束の時に小指と小指を絡めるんだよ」
「そうなんだ! 約束!」
僕はギィと小指を絡めて約束を交わし、僕らはギィに手を振られて見送られながら、花畑を後にした。
「クロエさんの今ギィに会った記憶って……」
「大丈夫よ、消すわけないわ」
屋敷から出たら、僕らがいた記憶は消える。それがクロエさんにも適応されるのではないかと恐れていたが、そうではなかったらしい。僕は灰冶さんから確かな返事を貰って、ホッと安心した。
ギィはというと、花畑けの前で気が済むまで泣いていた。僕らは彼が泣き止むまで黙って傍にいた。一頻り泣いたあと、ギィは少しずつ落ち着きを取り戻し、涙を拭って膝を抱えて座り込む。
「……これで、良かったんだよね……」
力なくそう呟く彼に、僕は何も返せなかった。本当にこれで良かったのかと言われれば、そうであって欲しいと思うだけ。もしかしたらもっと良い手があったかもしれない。間隔を空けて定期的に会うなり、瘴気自体をどうにかする手立てもあったかもしれない。けれど、僕には何が正しくて、何が正解なのかわからない。ただ、彼の決断が後悔の無かったようにと願うばかりだ。
「…………」
暫く静かに二人並んでコスモス畑を眺めていたら、灰冶さんが口元に笑みを称えて、ギィに近付いた。そして、ギィの頭にポスリと白い中折帽子を被せた。
「あれ? それ、灰冶さんの……」
「ふふ、よく似合ってるわ」
ギィの頭に絶妙な位置で帽子を微調整して被せ、灰冶さんは笑ってそう言った。ギィは悲しでいた顔に笑みを浮かべ、嬉しそうに帽子の鍔を両端から両手で掴んだ。
「ギィ、似合う!? ギィかっこいい!?」
「えぇ、かっこいいわよ」
「…………!」
ギィの目が輝きを取り戻し、ギィは嬉しそうにぴょこぴょことその場で飛び跳ねた。
「ハイジ、これくれるの!?」
「えぇ、貴方はもうお子様じゃないわ。立派な大人よ。それ、私のお気に入りの帽子なんだから大事にしてよね?」
「うん! する! する! 嬉しい!」
灰冶さんから帽子を譲り受け、ギィは灰冶さんの周りをクルクルと回った。灰冶さんは凄いなぁ……。一瞬でギィに笑顔を取り戻した。やっぱり僕なんかより全然凄い……。
僕がスキップするギィの姿を暖かい目で眺めていると、ギィは不意に僕の目の前で止まった。何故か、ギィは僕の前で立ち止まり、つぶらな瞳で僕をじっと見つめてくるのだ。
「え!? 何何!? 怖い怖い怖い怖い!」
「……タクトは何もくれないの?」
「へ?」
「タクトは何もくれないの?」
ギィは本気で不思議そうに思っているみたいで、帽子の鍔の両端を両手で持ったまま首を傾げた。僕も訳がわからず首を傾げた。すると、ギィはさらに首を傾げて、九十度くらいに首が曲がっていた。
僕は慌てて身の回りを探ったが、スーツのジャケットの襟についてるブローチは銀さんからもらったものだし、ネクタイなんかあげても彼には長すぎるし、両ポケットを探ってもハンカチと財布しかないし……。そうだ。
僕は閃いて、ギィの後ろへ回り込んだ。ギィも不思議そうに目線で僕を追っていたが、振り向くことはしなかった。僕は青いチェックのハンカチを取り出して、斜めに三角に折ると、彼の首元にハンカチを回した。そして、それを後ろで結ぶと――
「じゃーん! スカーフ!」
こ、これでどうだ……!?
少し苦しいかもしれないが、これでどうだろう。ゴブリンの首は、手足同様細いため、ハンカチでも十分余裕を持って首に巻ける。気になるギィの反応だが、しばらく呆然としていて反応がない。
「…………」
やっぱりダメだったか……?
そう諦めかけたその時――。
「お、おおぉおおお!」
ギィが突然雄叫びを上げた。
「見て見て! ハイジ! ギィかっこいい!?」
「かっこいい、かっこいい」
「見て見て! タクト! ギィかっこいい!?」
「うん! すごいよく似合ってる!」
ギィは僕らの前で色んなポーズを付けながら、三百六十度から帽子とスカーフを見せつけた。
結果は悲しい終わりだったけど、ギィが少しでも元気になって良かった。僕はホッと胸を撫で下ろし、格好つけるギィを見つめた。
「タクト、ハイジ、ありがとう」
ギィはしばらくはしゃいだ後、僕らに改めて向き直って深々と頭を下げた。
「オデ、二人が居てくれて良かった。ちょっとの付き合いだけど、二人ともオデの大事な友達」
「うん」
「ギィ、二人がニンゲンだったら、二人とも会うのを辞めてた」
「うん?」
「でも二人ニンゲン違う。タクトはニンゲンかもしれないけど、なんか普通の人と違う。ハイジ、ニンゲン違う」
「うん???」
僕はギィが何を言ってるかわからなくて、苦い顔をしながら灰冶さんを見た。灰冶さんは「あらあら」と、いつも通り笑っていた。
「だから、タクトとハイジはオデの友達。またギィの家に遊びに来てね。オデ、待ってる」
ギィの野生の勘の鋭さには度肝を抜かれたが、ギィは僕らを友達として認めてくれたらしい。一旦僕らの正体は置いといて、僕はギィに小指を出した。
「?」
「約束。僕のいた国では約束の時に小指と小指を絡めるんだよ」
「そうなんだ! 約束!」
僕はギィと小指を絡めて約束を交わし、僕らはギィに手を振られて見送られながら、花畑を後にした。
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