神様のお導き

ヤマト

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8話目!優輝の章 灰色から色付く世界

8-2

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「そんな訳で優兄、拓斗さんとお買い物に行ってきてください!」
 白さんはニコニコと笑って、両手を顔の横で叩いて小首を傾げた。可愛いけど、可愛いけれども! 無理難題が過ぎるっ!
 案の定、僕と一緒に買い物してこいと提案された優輝さんは、今にもゲロを吐きそうな顔をしていた。
「えーーー!? ヤダヤダヤダヤダーーー! こんな人畜無害ですみたいな顔してる奴と二人っきりで買い物なんてヤダーーー!!! 白となら行くー!」
 優輝さんはイーっと、口を横に開け、両手に拳を作って駄々を捏ね始めた。白さんはそんな優輝さんに人差し指を突き立て一喝した。
「メッ! 優兄、駄々を捏ねるの禁止!」
「うっ!」
 白さんに怒られて、優輝さんは言葉が詰まり、後ろにたじろいだ。
「良いですか、優兄。優兄は誰に対しても初めはとても冷たいです。拓斗さんももうこの家族の一員と言っても過言ではないんですよ。だから、ちゃんと仲良くならないと!」
「うぅ……で、でも……」
「でもじゃありません! 優兄は拓斗さんとお買い物に行く! わかりましたか!?」
「……白の頼みなら……」
 おお!? 良いんだ!? 正直もっと否定すると思っていたのに、本当に白さんには弱いんだな、この人。
 優輝さんは深く溜め息をついて項垂れて、かなりゲンナリとしていた。
「優兄と拓斗さんにはこれから本棚を一つ買ってきて貰います。ホームライブラリーにある本が今ある本棚だけでは足りなくなってしまってるんですよね。買ったら転移魔法で部屋に送って下されば、あとは私が適当な場所に配置しておきますので」
 白さんの言うホームライブラリーは、多分普通の人が想像するホームライブラリーよりも何倍も広いものだ。この家にはみんなが共有する本が沢山あって、そこは図書館みたいになっている。個人で読むような本は自分の部屋に置いておくけれど、調べ物したりする時に使うような文献はホームライブラリーに置かれているのだ。
 優輝さんはあからさまに嫌そうな顔をして、ゾンビの様に前のめりになり文句を言った。
「うげー、めんどくさー」
 すると、白さんがまた優輝さんの鼻先にに人差し指を差した。
「優兄! これから拓斗さんとお買い物に行く時、無駄な罵詈雑言は禁止ですからね!」
「うげっ!?」
「それから、拓斗さんの言うことはなるべく聞くこと! 話を無視したり無下にしたら、優兄のこと嫌いになっちゃいますからね!」
「そ、そんな~!」
「ちゃんと拓斗さんの言うことを聞いて、しっかり会話して、ちゃんと仲良くなって来てくださいね! 約束ですよ」
 最後は優輝さんにニッコリと微笑む白さん。しかし、優輝さんにはそれが逃れられない呪縛となり、ノーと言いたいのにイエスと言わざるを得ないのだ。
「うぅ~~~~~! わかっ…………たっ!」
 優輝さんは最後まで葛藤していたが、大好きな白さんにお願いされては断れないのか、忌々しそうに了承していた。
「じゃあ、頑張って来てくださいね!」
 僕らは白さんに見送られ、渋々本棚を買いに行くのであった。



「くっそ、めんどくせー。もうとっとと買ってとっとと帰るよ!」
 僕は優輝さんに本棚を買う街と店を決めてもらい、彼の後をついて行っていた。
「こんなの僕一人で十分なのに、なんでこんな奴と」
 優輝さんは僕を忌々しそうに睨んでから、チッと舌打ちした。
 彼は普通にしていれば、中性的で綺麗で優しそうな顔をしているんだけどな。今はめちゃくちゃ凶悪そうな顔をしている。
 道中、会話が無いのも何だし、せっかく白さんがくれたチャンスなので、僕は優輝さんに質問することにした。
「優輝さんはどうして白さんのことそんなに好きなんですか?」
 家族愛ってレベルじゃない。彼は彼女を特別贔屓していて、尋常じゃない程に溺愛している。それは傍から見れば異常で、どうしてそこまで彼女に執着するのか前々から気になっていた。
 しかし、優輝さんは「あ?」と、低い声で僕を威嚇した。
「どうして僕が君みたいな薄っぺらい関係のやつにそんなこと答えなきゃならないのさ」
「うっ……すいません……」
「あとその敬語やめろ。気持ち悪いから」
「えっ!? あー、はい……いや、うん……」
 一言言えば、何倍もの言葉の凶器が返ってくる。これが優輝という人だ。僕の印象では、白さんにはデレデレで家族にはいじられキャラで、僕を含む他人には冷たい印象しかない。
 質問したことも、優輝さんに薄っぺらい関係と言われればそれまでだ。僕はすっかり落ち込んでしまい、肩を竦めた。
 すると、それを見た優輝さんはバツが悪そうに顔を顰めた。
「ちょっと、そんな項垂れないでよ。まるで僕が虐めたみたいじゃん!」
 みたいじゃなくて、体感虐められてる……。
「君がそんなんじゃ僕が白に嫌われる!」
「うぅ、すいません……」
 僕はこれまでに何回優輝さんに謝っただろうか。両手では数え切れない……。
 優輝さんとのギスギスした気まずい雰囲気を振り払うように、僕は気を取り直して再び彼に質問する。
「あの、優輝さんの白さんへの好意って、家族愛なんですか? あ、いや、家族なの? それとも、恋愛対象として……?」
 めげずに質問した内容がこれだ。彼に関することと言えば、現状白さんにベタ惚れくらいしかないので、自然とそんな質問内容になってしまう。優輝さんはさっき僕が落ち込んだのを気にしてか、今度は嫌々ながらに答えてくれた。
「それは……どっちもだよ」
「どっちも?」
「白のことは家族としても妹としても愛してる。けど、僕らは生まれた親……というか、創られた親が一緒なだけで血は繋がってない。白と銀は特殊で双子だから唯一血は繋がってるけどね。だから、なまじ血が繋がってないだけに、家族としてじゃなく、一人の女性としても意識する。だからどっちも」
「へー……なんか、複雑だな」
 義兄妹に惚れるというような展開の漫画は少なくないけど、実際そういったものを目にしたことがないので、何とも言えない。彼が白さんに対する好意は一言では言い表せないもののようだ。
「だからさ、全員血が繋がってないから神無やアキラ、陽菜のことはすぐ家族として受け入れられる。結局家族なんて血が繋がってるかどうかは重要じゃないからね」
「優輝さん……」
 ちょっと彼が優しさを見せて、少し見直そうとした。
「でも、君はダメだ!」
「何でぇ!?」
「陽菜たちは小さい頃から僕らが拾って育てたけれど、君はどうだ!? もう成人してんじゃないか! しかも男で白が拾ってきた! ちょっと白に目ぇ掛けられてるからって調子乗んなよクソカス!」
「…………」
 前言撤回。彼を見直すことはしばらく無さそうだ。そして、何故彼が僕にこれほどまでに罵倒してくるのかよくわかった。そういう理由だったのか。僕はその後も彼にありとあらゆる罵詈雑言を吐かれながら街へと向かった。
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