神様のお導き

ヤマト

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8.5話目!はじめてのおつかい アキラより

8.5-2

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 次に向かったのは黒乃さんのところだった。彼らはよく一緒に運動していて仲が良い。桜さんと言い、黒乃さんと言い、拓斗さんは人当たりの良い人と仲良くなる傾向があるのかもしれない。まぁ、人当たりが良いのだから当たり前な気もするが。
 しかし、彼もまた思いもよらぬものを注文していた。
「じゃあダンベル三十キロ買ってきて」
「ダンベルね」
 拓斗さんは何の疑問も持たずに、メモ帳にメモしている。ダンベルだけ聞いて、三十キロという部分が抜けてしまっているのか? 空間転移使えないのに、それを持って帰るのは大変ではないだろうか。そう思って心配になったが、拓斗さんは「ありがとう、またね~」と、黒乃さんに手を振り、次の人の許へと向かって行った。大丈夫なのだろうか……、あの人……。

 次はゲームをしている白さんと銀さんの所に拓斗さんは来ていた。白さんも銀さんも一戦終わるまで待ってくれと言うので、拓斗さんは大人しく後ろでゲームを観戦しながら、二人がゲームをやり終えるのを待っていた。しばらくして、二人はガッツポーズを取り、ゲームを一時中断して拓斗さんの話を聞いた。どうやら、戦いには勝ったらしい。
 白さんと銀さんは二人ほど変なものは頼まずに、片手間に食べるおやつを要求していた。
「パッキー買ってきてくれますか」
「ゲームする時手が汚れなくて良いんだよね」
「なるほど、了解です!」
 拓斗さんはカリカリとメモをして、また次に向かった。他の人も白さんと銀さんたちみたいなものを頼んでくれたら良いんですけどね。

 それから拓斗さんは他の人にも聞き回り、欲しいものを一通り聞き終わって、買い物リスト一覧が出来上がった。内容は簡単にまとめるとこうだ。

 桜さんが化粧品。黒乃さんがダンベル。トレーニングルームにダンベルいっぱいあったはずなんですけどね……。先生、優輝さん、白さん、銀さん、陽菜さん、神無さんはお菓子。翡翠さんが謎のお茶っ葉。司さんは何故か木刀。修学旅行でしょうか。紅さんはタンブラー。灰冶さんは錬金術用の匙。紫紀さんはガンオイル、碧さんは天然石。薫さんは本。

 ざっとこんな所だ。思ったより大変そうな買い物になりそうで、僕は一抹の不安を覚える。腕を組んで、一頻り唸りながら色々考えていると、拓斗さんが急に目の前に現れた。
「アキラくん」
 僕は考え事中に、急に声をかけられて肩を竦めて驚いた。
「びっくりしました」
「ごめんごめん。そう言えばアキラくんの欲しいもの聞いてなかったなと思って」
 彼はとても律儀だ。わざわざ僕にまで欲しいものを聞きに来たのだという。
「僕の分はいいですよ」
「え、そう?」
 僕が断ると、拓斗さんは少し考えたような素振りをして、頭の中で考え事の結論は出たのか、すぐに「分かった!」と、頷いた。彼の優しさはありがたいけれど、これ以上彼の仕事を増やすのも気が引ける。僕はやる気に満ち溢れる拓斗さんを見て、少し心配しながらも、今一度彼にお願いをした。
「では、お願いしますね」
 僕が拓斗さんにそう言うと、拓斗さんは「いってきます!」と、僕に挨拶して意気揚々とその場を去っていった。僕はそんな彼の背中を見送った。



 見送った筈だった。
 僕は一体何をしているんだ。
 何とも言い表せぬ葛藤が僕の頭の中で駆け巡り、今、自身の行っている行為に頭を悩ませた。
 僕は今、見送った筈の彼の後をこっそりとつけている。
 と、言うのも、僕からすれば、彼はまだ二十代そこそこの赤子も同然。僕は彼の教育係のようなものだし、彼に何かあっては先生や彼を拾ってきた白さんに申し訳が立たない。ずっと一緒に作業して来て、初めて一人で買い物させようというのだ。心配しないわけが無い。
 僕はありとあらゆる言い訳を脳内に思い浮かべ、自分が今している行為を精一杯正当化する。彼を信じていないわけでない。しかし、翡翠さんが拾ってきた神無さんは翡翠さんが面倒を見ていたし、陽菜さんは皆で面倒を見ている。僕が最初からこんなにも面倒を見ていたのは彼が初めてなのだ。所謂親の気持ちになってしまい、少しずつ巣立とうとしている彼が心配で心配で堪らないのだ。親とはいつもこんな気持ちなのだろうか。だとしたら、僕は尊敬する。
 子離れせねばと思いつつも、僕は彼の後をひっそりと着いて行った。
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