神様のお導き

ヤマト

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8.5話目!はじめてのおつかい アキラより

8.5-7

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 それから暫くして、拓斗さんは無事家に帰ってきた。少し時間が掛かっていたように思えるが、見た目は特に怪我をした様子もないし、大丈夫だろう。
 拓斗さんは大量の荷物を両手に提げて、クタクタになっていた。やっぱり魔法が使えないと不便なものですね。疲れを顔に浮べる拓斗さんを見て、改めてそう思った。
 拓斗さんはまず、一番厄介なダンベルから受け渡すために、黒乃さんの許へ向かった。生憎部屋には居なかったが、トレーニングルームで運動していたため、すぐに見つけることが出来た。丁度そこに司さんも一緒にトレーニングしていたので、二人纏めて買ってきたものを引き渡すことが出来そうだ。
「はいこれ、頼まれてたダンベル」
 拓斗さんが荷物を持った手で軽々とダンベルを手渡すのを見て、黒乃さんは首を傾げた。
「重くねぇのか?」
「え? あー……なんか、途中で慣れたって言うかー」
 どうしてダンベルがこんなにも軽いか自分でもあまり分かっていない拓斗さんは、歯切れ悪くそう答えた。黒乃さんもあまり気にしなかったようで、「ふーん、そ」と、軽く話を流した。しかし、次に黒乃さんが言った言葉に、拓斗さんは目を丸くして驚きの表情を浮かべた。
「このダンベル、俺は要らないぜ」
「えっ!?」
 あまりに衝撃的な言葉に、責任感の強い拓斗さんは自分が何か重大なミスをしたのではないかと、みるみるうちに青ざめていった。
「ぼ、僕、何か間違えちゃったかな!? デザインが気に入らないとか!? こだわりのメーカーがあるとか!?」
 慌ただしく捲し立てる拓斗さんに、黒乃さんは拓斗さんを軽く指差しで真顔でこう言った。
「いや、それ、お前の」
「え?」
 黒乃さんの言葉に理解が追いつかず、今度は固まってしまう拓斗さん。
「お前最近トレーニング頑張ってるし、トレーニングルーム使えない時とか、自室でトレーニングできるようにダンベル一個ぐらいあった方が良いだろ?」
「く、黒乃……!」
 黒乃さんのまさかの気遣いに感動する拓斗さん。しかし、司さんが横からその様子を見ていて、腕を組んで口を挟んできた。
「しかし、それは三十キロだろう? 拓斗は初心者なんだから、せめて十キロとかの方が良いんじゃないか?」
 司さんの指摘を受けて、黒乃さんは「あ」と、間の抜けた声を上げる。
「確かに。俺らは身体能力が普通の奴らよりかなり上だから三十キロとかめっちゃ軽いけど、拓斗は普通の人間だもんな。うっかりしてたぜ」
 自分のミスに気付いた黒乃さんに対し、拓斗さんはそんなこと気にしていないのか、黒乃さんに笑顔でお礼を言った。
「ありがとう! 黒乃!」
「ん? あぁ。三十キツかったら今度軽いやつ買いに行こうぜ」
「うん!」
 ニコニコとダンベルの入った袋を自分の手に戻す拓斗さん。今度は木刀を手に持ち、司さんへと差し出した。
「司さんは木刀でしたよね!」
「あぁ。しかし、自分も元より自分用ではない」
 今度は司さんの言葉に首を傾げる拓斗さん。
「これはお前用だ。黒乃に少しずつ鍛えてもらっているし、そろそろ武器の扱いも覚えた方が良いと思ってな。もし何かトラブルがあって、危険な目に遭った時、素手だけではどうしようもない時だってある。とりあえずオーソドックスな剣技から学ぶのが良いだろう。また、その木刀を使って基礎からじっくり教えてやろう」
「…………!」
 拓斗さんは感動のあまり声も出ないようだ。しかし、目は口ほどに物を言うとはよく言ったもので、拓斗さんの眼差しからは明らかな尊敬と敬意の眼差しが二人に注がれていた。
 二人もこんなにも喜んで貰えるとは思っていなかったのか、黒乃さんと司さんはお互いに目を合わせた後、拓斗さんを見つめた。
「と、とにかく、それはお前が持っていろ」
「そーそー! また一緒にトレーニングする時に使っても良いしな!」
 二人にそう言われ、拓斗さんは何度も何度も激しく頷いて、何度も何度も二人にお礼を言った。彼には見えないはずの尻尾が生えて見えて、それを激しく左右に振っているのがわかる。
 拓斗さんは上機嫌で自室に戻り、ダンベルと木刀を部屋に置いて、また部屋から出てきた。

 次に向かったのは神無さんの部屋。彼女は普段異世界に行ったりしていて、あまり家にはいないのだが、今日はしっかり部屋でゴロゴロ寛いでいたようだ。スウェット姿でスウェットの下からお腹をボリボリ掻きながら、乱れた髪を直そうともせず部屋から出てくる神無さん。眠そうに欠伸を噛み締め、ドアをノックした拓斗さんの姿を確認する。
「おお、買ってきたか、ミスドーナツ」
「うん、頼まれたものちゃんと買ってきたよ」
 拓斗さんからそれを聞くと、神無さんは眠たげだった目を見開き、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「そーか! そーか! サンキューな!」
 拓斗さんからミスドーナツの箱を受け取り、中身をしっかりと確認する神無さん。
「うんうん、よしよし、ちゃんと間違ってねぇな」
 中身に不備がないことを確認すると、神無さんはその中からひとつドーナツを抜き取ると、拓斗さんの口に押し込むように押し付けた。
「むぐっ!?」
「これはお駄賃だ。サンキューな。また今度も頼むわ」
 神無さんはご機嫌そうにそう言って、拓斗さんの口にドーナツを押し付けてから、また自室に篭ってしまった。拓斗さんは少しの間キョトンとしながらも、しっかりと口に含んだドーナツを味わって、ゴクリと飲み込んだ。
「美味い」
 そう一言だけ呟いて、拓斗さんは次の人の所へと向かうのだった。
 
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