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クリスマスツリーの揺れる光の中で、私は双子の弟の背徳の告白に震える
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美羽が家に帰ると、玄関には類のムートンブーツが置かれていた。義昭は最近仕事が忙しく、残業が続いている。
類とふたりきり……そう思うと、自分がどう類に見られるのか気になってしまう。
シューズボックスの向かいの壁に掛けられた姿見を素早くチェックし、乱れた前髪を整えた。コートを脱ぐと油と食べ物の匂いが自分の躰から立ち上ってきている気がして、今すぐにでもシャワーを浴びたくなる。
「ミュー、帰ってきたのー?」
開けっ放しのリビングへと続く扉の奥から類の声が聞こえてきて、ハッとする。
「類、ただいま」
高揚しそうな気持ちを抑えて返事をする。
気持ちをしっかり持たないと。
類のペースに、巻き込まれないように……
リビングルームに入ってすぐ、美羽の足が止まり、歓声を上げた。
「うわぁ! 飾ったんだ」
類の背よりも高い立派なクリスマスツリーが、リビングルームの隅に飾られていた。ツリーの下には箱が置かれ、オーナメントやモール、電飾が入っている。
類が美羽を振り返り、嬉しそうに手招きする。
「これからちょうど飾り付けするとことだったんだ、手伝ってよ!」
「うん。でも、類ご飯は? お腹すいてるんじゃない?」
「大丈夫。ミューが冷蔵庫に用意しといてくれたメモ見ながら作ったから。ミューのお陰で料理も少しずつ覚えてきたよ」
「ふふっ、良かった」
美羽が類の元へと歩み寄りながら微笑むと、瞳を覗き込まれた。
「でもやっぱり、ひとりで食事するの寂しいから……ミューがいてくれると嬉しいな」
姉を慕う弟の顔で寂しげに微笑まれると、類を置き去りにして仕事をしていることに罪悪感を感じてしまう。けれど、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、類への気持ちを抑えきれなくなってしまうのは確実だ。
「ミュー、これ持って」
類が電飾ライトを手に取り、腕を伸ばして頂上から斜めにグルッと巻くと美羽に手渡した。線が絡まないように渡し合いながらぐるぐると螺旋状に巻いていく。
巻き終わると電球の先端部分を外側に向け、ライトの光がよく見えるように調節した。コードは目立たないように枝の内側に隠し、コンセントを差し込む。
「ミュー、電気消してくれる?」
「うん」
美羽はツリーの斜め反対側の壁のスイッチまで歩くと、電気を消した。
ライトが点り、赤や黄色や橙や青く点滅する電飾にツリーが幻想的に映し出される。美羽はその光に誘《いざな》われるようにツリーの目の前まで歩いて行くと、類の隣に立った。
「電飾だけでも十分綺麗だね……」
「うん」
点滅する電飾の光に反射される類の横顔は、いつもよりも美しく、それでいて苦しげにも見える。
類、何を考えているの?
すると不意に類の顔がこちらに向けられ、美羽の鼓動がドクンと大きく波打った。緊張で躰が強張り、喉から声が出てこない。
類の長い睫毛に影が落ち、美麗な顔がゆっくりと近づけられる。
だ、ダメ……
躰を反らそうとすると両肩に手を置かれ、緩やかに束縛された。点滅するライトに映し出された類から憂いの表情が消え、今は妖艶な雰囲気を纏い、紅く艶やかなぷっくりとした唇が目の前に迫っている。
キス、されちゃう……
「る、類……」
けれどその言葉は喉元で止まり、掠れた吐息となって艶めかしく零れ落ちた。類の甘美な香りに包まれて胸がドクドクと高鳴り、躰が熱くなってくる。
耳元に類の唇が寄せられ、吐息をかけられた。
「ンッ」
小さく震えて涙目になると、類の艶めかしい吐息が鼓膜を震わせる。
「ミュー……」
類とふたりきり……そう思うと、自分がどう類に見られるのか気になってしまう。
シューズボックスの向かいの壁に掛けられた姿見を素早くチェックし、乱れた前髪を整えた。コートを脱ぐと油と食べ物の匂いが自分の躰から立ち上ってきている気がして、今すぐにでもシャワーを浴びたくなる。
「ミュー、帰ってきたのー?」
開けっ放しのリビングへと続く扉の奥から類の声が聞こえてきて、ハッとする。
「類、ただいま」
高揚しそうな気持ちを抑えて返事をする。
気持ちをしっかり持たないと。
類のペースに、巻き込まれないように……
リビングルームに入ってすぐ、美羽の足が止まり、歓声を上げた。
「うわぁ! 飾ったんだ」
類の背よりも高い立派なクリスマスツリーが、リビングルームの隅に飾られていた。ツリーの下には箱が置かれ、オーナメントやモール、電飾が入っている。
類が美羽を振り返り、嬉しそうに手招きする。
「これからちょうど飾り付けするとことだったんだ、手伝ってよ!」
「うん。でも、類ご飯は? お腹すいてるんじゃない?」
「大丈夫。ミューが冷蔵庫に用意しといてくれたメモ見ながら作ったから。ミューのお陰で料理も少しずつ覚えてきたよ」
「ふふっ、良かった」
美羽が類の元へと歩み寄りながら微笑むと、瞳を覗き込まれた。
「でもやっぱり、ひとりで食事するの寂しいから……ミューがいてくれると嬉しいな」
姉を慕う弟の顔で寂しげに微笑まれると、類を置き去りにして仕事をしていることに罪悪感を感じてしまう。けれど、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、類への気持ちを抑えきれなくなってしまうのは確実だ。
「ミュー、これ持って」
類が電飾ライトを手に取り、腕を伸ばして頂上から斜めにグルッと巻くと美羽に手渡した。線が絡まないように渡し合いながらぐるぐると螺旋状に巻いていく。
巻き終わると電球の先端部分を外側に向け、ライトの光がよく見えるように調節した。コードは目立たないように枝の内側に隠し、コンセントを差し込む。
「ミュー、電気消してくれる?」
「うん」
美羽はツリーの斜め反対側の壁のスイッチまで歩くと、電気を消した。
ライトが点り、赤や黄色や橙や青く点滅する電飾にツリーが幻想的に映し出される。美羽はその光に誘《いざな》われるようにツリーの目の前まで歩いて行くと、類の隣に立った。
「電飾だけでも十分綺麗だね……」
「うん」
点滅する電飾の光に反射される類の横顔は、いつもよりも美しく、それでいて苦しげにも見える。
類、何を考えているの?
すると不意に類の顔がこちらに向けられ、美羽の鼓動がドクンと大きく波打った。緊張で躰が強張り、喉から声が出てこない。
類の長い睫毛に影が落ち、美麗な顔がゆっくりと近づけられる。
だ、ダメ……
躰を反らそうとすると両肩に手を置かれ、緩やかに束縛された。点滅するライトに映し出された類から憂いの表情が消え、今は妖艶な雰囲気を纏い、紅く艶やかなぷっくりとした唇が目の前に迫っている。
キス、されちゃう……
「る、類……」
けれどその言葉は喉元で止まり、掠れた吐息となって艶めかしく零れ落ちた。類の甘美な香りに包まれて胸がドクドクと高鳴り、躰が熱くなってくる。
耳元に類の唇が寄せられ、吐息をかけられた。
「ンッ」
小さく震えて涙目になると、類の艶めかしい吐息が鼓膜を震わせる。
「ミュー……」
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