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クリスマスツリーの揺れる光の中で、私は双子の弟の背徳の告白に震える
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「電気、つけて?」
ぇ。
戸惑っていると、類が正面から美羽を覗き込んでにこりと微笑んだ。
「さ、オーナメント飾ろっ!」
「ぁ……わ、かった」
美羽はサッと類から離れ、電気を点けに再び壁まで歩いていった。顔から火が出そうに真っ赤になっていた。
私、今……何を期待していたの。
類にキスされてもいい、キスされたいと、考えてしまっていた。
類の視線を感じ、美羽はフルリと背中を震わせた。
類は腰を下ろして箱からオーナメントを出すと、美羽を見上げて首を傾げた。
「ねぇ、ミューはオーナメントを渡してってもらっていい?
昔みたいに」
「うん……」
心の中にあったけれど、類の前では口にしてはいけないと制していた思い出を語られ、美羽は戸惑いがちに頷いた。
ふたりが幼かった頃、毎年家にはクリスマスツリーが飾られた。
父がクリスマスツリーを組み立て、美羽はオーナメントを渡し、それを父と類がツリーに飾り付けていった。けれど、一番上の星の飾りをつける役目は美羽で、父に抱っこしてもらって付けるのは少し緊張したけれど、とても嬉しかった。
母はそんな光景を少し離れたところから見て、微笑んでいた。
幸せだった、家族の光景……
あの頃のことを思い出すと、胸の奥がギュッと掴まれたように苦しくなる。
オーナメントはゴールドとパールホワイト、レッドのグラスボールが中心で、他にゴールドと赤のクリスマスらしいデザインの小さなオーナメントがあった。
美羽はグラスボールを丁寧に取り、類に手渡すと、ふたりで相談しながらツリーに飾り付けていった。
「あれ、これは?」
手にしたグラスボールは他のものとは違って磨りガラスで出来ていて、雪の結晶のデザインが描かれていた。裏になにか書かれているのが透けて見え、美羽は手首を捻って裏に返した。
「『2018 MIU』……え、これ作ったの?」
「うん、オーダーメイドだよ。僕のもあるんだ、ほら」
類はもうひとつを手にすると、見せた。そこには『2018 RUI』とある。
「こうやって、毎年ひとつずつ増やしていけたらいいよね♪」
一瞬、義昭の分は……? と聞きかけたが、その言葉を呑み込んだ。よく見なければ文字が描かれていることは分からないし、義昭がオーナメントを気にするとも思えなかった。
こうしていると、ふたりだけの世界にいるようで、心酔してしまう。
穏やかで幸せな時間が愛おしく感じた。
グラスボールを飾り終えるとふたりで協力してモールを飾り付け、それから小さなオーナメントを隙間を埋めるように飾り付けていく。
だんだんとツリーが豪華になるにつれて、気分も盛り上がってくる。
全てのオーナメントを飾り付け終えると、全体を見渡してバランスを確認し、真っ赤なツリースカートを履かせた。
だが、ここには肝心のものがない。
類が腰を屈めて下に置かれていた箱に手を伸ばすと、ツリーの一番上に飾る星のオーナメントを美羽に手渡した。
「ミューのために取っといたんだ。つけてくれる?」
「うん」
銀色に輝く星のオーナメントを受け取り、美羽はにっこりと頷いた。
背伸びをしてツリーに手を伸ばしたけれど、150センチに満たない美羽の身長では、ツリーの頂上に届かない。
「スツールを……」
そう言ってる間に、類に腰を掴まれて持ち上げられる。
「キャッ!! 類、重いからいいよ!!」
「軽いよ。ほら、早くつけて」
「う、うん……」
細身で華奢に見えるのに、美羽を軽々と持ち上げてしまう類の力強さに鼓動が高まる。支えてくれる手の感触がジンジンと腰に響いて疼いた。
美羽は慎重にツリーの上に星を載せた。
「載せたよ」
類は恭しく丁寧に美羽を下ろすと、ツリーを眺めた。
「毎年、家族でクリスマスツリーを飾ってたよね」
「うん……」
美羽の中でそれは温かな思い出だったのに、今は痛みを伴うものとなっていた。
二度と戻らない、あの日々……
「ごめんね、ミュー」
小さく落とされた類の声に、美羽が見上げる。
類の黒曜石の瞳にクリスマスライトが映し出され、まるで夜空に光る星のように見える。けれどそれは、吸い込まれそうな程に深くて暗い、漆黒の闇に光る孤独な星だった。
「僕が、ミューの父さんとの綺麗な思い出を汚してしまった」
ぇ。
戸惑っていると、類が正面から美羽を覗き込んでにこりと微笑んだ。
「さ、オーナメント飾ろっ!」
「ぁ……わ、かった」
美羽はサッと類から離れ、電気を点けに再び壁まで歩いていった。顔から火が出そうに真っ赤になっていた。
私、今……何を期待していたの。
類にキスされてもいい、キスされたいと、考えてしまっていた。
類の視線を感じ、美羽はフルリと背中を震わせた。
類は腰を下ろして箱からオーナメントを出すと、美羽を見上げて首を傾げた。
「ねぇ、ミューはオーナメントを渡してってもらっていい?
昔みたいに」
「うん……」
心の中にあったけれど、類の前では口にしてはいけないと制していた思い出を語られ、美羽は戸惑いがちに頷いた。
ふたりが幼かった頃、毎年家にはクリスマスツリーが飾られた。
父がクリスマスツリーを組み立て、美羽はオーナメントを渡し、それを父と類がツリーに飾り付けていった。けれど、一番上の星の飾りをつける役目は美羽で、父に抱っこしてもらって付けるのは少し緊張したけれど、とても嬉しかった。
母はそんな光景を少し離れたところから見て、微笑んでいた。
幸せだった、家族の光景……
あの頃のことを思い出すと、胸の奥がギュッと掴まれたように苦しくなる。
オーナメントはゴールドとパールホワイト、レッドのグラスボールが中心で、他にゴールドと赤のクリスマスらしいデザインの小さなオーナメントがあった。
美羽はグラスボールを丁寧に取り、類に手渡すと、ふたりで相談しながらツリーに飾り付けていった。
「あれ、これは?」
手にしたグラスボールは他のものとは違って磨りガラスで出来ていて、雪の結晶のデザインが描かれていた。裏になにか書かれているのが透けて見え、美羽は手首を捻って裏に返した。
「『2018 MIU』……え、これ作ったの?」
「うん、オーダーメイドだよ。僕のもあるんだ、ほら」
類はもうひとつを手にすると、見せた。そこには『2018 RUI』とある。
「こうやって、毎年ひとつずつ増やしていけたらいいよね♪」
一瞬、義昭の分は……? と聞きかけたが、その言葉を呑み込んだ。よく見なければ文字が描かれていることは分からないし、義昭がオーナメントを気にするとも思えなかった。
こうしていると、ふたりだけの世界にいるようで、心酔してしまう。
穏やかで幸せな時間が愛おしく感じた。
グラスボールを飾り終えるとふたりで協力してモールを飾り付け、それから小さなオーナメントを隙間を埋めるように飾り付けていく。
だんだんとツリーが豪華になるにつれて、気分も盛り上がってくる。
全てのオーナメントを飾り付け終えると、全体を見渡してバランスを確認し、真っ赤なツリースカートを履かせた。
だが、ここには肝心のものがない。
類が腰を屈めて下に置かれていた箱に手を伸ばすと、ツリーの一番上に飾る星のオーナメントを美羽に手渡した。
「ミューのために取っといたんだ。つけてくれる?」
「うん」
銀色に輝く星のオーナメントを受け取り、美羽はにっこりと頷いた。
背伸びをしてツリーに手を伸ばしたけれど、150センチに満たない美羽の身長では、ツリーの頂上に届かない。
「スツールを……」
そう言ってる間に、類に腰を掴まれて持ち上げられる。
「キャッ!! 類、重いからいいよ!!」
「軽いよ。ほら、早くつけて」
「う、うん……」
細身で華奢に見えるのに、美羽を軽々と持ち上げてしまう類の力強さに鼓動が高まる。支えてくれる手の感触がジンジンと腰に響いて疼いた。
美羽は慎重にツリーの上に星を載せた。
「載せたよ」
類は恭しく丁寧に美羽を下ろすと、ツリーを眺めた。
「毎年、家族でクリスマスツリーを飾ってたよね」
「うん……」
美羽の中でそれは温かな思い出だったのに、今は痛みを伴うものとなっていた。
二度と戻らない、あの日々……
「ごめんね、ミュー」
小さく落とされた類の声に、美羽が見上げる。
類の黒曜石の瞳にクリスマスライトが映し出され、まるで夜空に光る星のように見える。けれどそれは、吸い込まれそうな程に深くて暗い、漆黒の闇に光る孤独な星だった。
「僕が、ミューの父さんとの綺麗な思い出を汚してしまった」
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