憧れの先輩の靴箱にバレンタインチョコ入れたら間違ってたみたいで、なぜか女生徒に迫られてます

奏音 美都

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憧れの先輩の靴箱にバレンタインチョコ入れたら間違ってたみたいで、なぜか女生徒に迫られてます

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 佐藤先輩のクラスの靴箱に行き、そっと周りを見回す。

 誰もいない……よし。

『佐藤』のネームタグを確認し、靴箱の蓋を開けて、チョコの入った紙袋を入れる。私の他には誰も入れてなくて、ホッとした。

 3年の佐藤先輩はサッカー部のエースストライカーで、スカウトが見にくるくらい、将来を期待されてる。もちろん、女の子たちにも人気があって、いつも佐藤先輩の練習や試合を観に来て、プレゼントや差し入れをしてる。

 いつもその後ろで、用意した差し入れやプレゼントを渡せずに帰ってきてたけど、1年に1度のバレンタイン、直接渡す勇気はなくても、佐藤先輩にチョコを受け取ってもらって、好きって気持ちを伝えたい。

 長いラブレターなんて書けなくて、チョコと一緒に書いたのは短い言葉。

『佐藤先輩が好きです。良かったら、付き合ってください。
 2年1組 安藤 沙織』

 先輩に、気持ちが伝わりますように……

 向こうから誰か来る足音が近づいてきて、逃げるように靴箱から離れ、廊下に飛び出した。

 その途端、ドンッと誰かにぶつかった。

「ッ、すみません……」

 ぶつかったのは、背の高い女子の先輩だった。

「ごめんね。大丈夫だった?」

 手を差し伸べて、起こしてくれた。

 ぶつかったのは、こっちなのに。

「こちらこそ、すみませんでした」

 顔を上げて、ハッとする。まるで宝塚の男役みたいな、中性的な綺麗な顔立ち。しかも、仕草まで王子様みたいだし。

 見惚れてると、クスッと笑われてしまった。うわ、ハズッッ。

「じゃあね」

 頭をポンと撫でると、先輩が去っていった。

 翌日の昼休み、教室に昨日ぶつかった先輩が顔を覗かせた。

「ねぇ、安藤沙織さんっている?」

 近くにいたクラスメートが、私を指差しながら答えた。

「沙織なら、あそこに!
 さおりー! 呼んでるよーっ!」

 え。なんの用だろ。てか、先輩……なんで私の名前知ってるの?
 もしかして、昨日ぶつかった時にケガしてたとか? それで、文句言いにきたとか?
 でも、そんな悪い人には見えなかったけど……

 先輩のとこに行くと、手を取られた。

「ここじゃなんだから、場所変えよっか」
「は、はい……」

 ほんと、手を取る仕草とかカッコイイんだけど。もし先輩が男だったら、好きになってそう。

 先輩が屋上の扉を開け、私を先に入らせた。こんなエスコート、どんな男子にもされたことないよ……

「あの……先輩、何で私を呼び出したんですか?」

 不思議そうに尋ねる私に、先輩が目を丸くすると、クスッと笑った。

「昨日自分がしたこと……覚えてないの?」

 言われて、顔が真っ赤になる。

 やっぱり昨日ぶつかったこと怒ってたんだ!! ちゃんと謝らなきゃ……

「せ、せんぱ……」
「これ、昨日私の靴箱に入れたでしょ?」

 私の目の前には、佐藤先輩の靴箱に入れたチョコの入ってた袋がぶら下がってた。

「え、これ……」
「沙織ちゃん、私のこと好きだったんだ? 付き合ってほしいの?」

 美しい顔が目の前に迫ってきて、タジタジする。

「え。あ……こ、これは……佐藤先輩に渡したもので……」
「私、佐藤けい。佐藤先輩だよ?」
「え、あ……いや、その佐藤先輩じゃ、なくて……」

 佐藤ってふたりいたんだ……そういえば、『佐藤』の横に小さく『け』ってあったような、なかったような。
 ま、間違えてチョコ、入れてたみたい……

 女の佐藤先輩が袋からチョコの箱を取り出し、蓋を開けた。

「ごめん、もう半分食べちゃったんだよね。
 でもさ、元はと言えば、沙織ちゃんが悪いよね? 間違って別の『佐藤』の靴箱にチョコ入れたんだから」

 ライトブラウンの瞳に覗き込まれて、鼓動がドクドクと速まっていく。

「す、すみま……せん」
「その上……私のこと、好きにさせちゃって」

 女の佐藤先輩が私の顎をクイと掴み、持ち上げた。

 ウギャー、なにこのシチュエーション!!
 ドキドキしすぎて、心臓破裂しそうなんですけど!!

「ねぇ、責任とってくれる?」

 美麗な顔が近づいたと思ったら……唇が重なった。

 ん、ナニコレ。
 私はキ、キスされてるの!? しかも、相手は女の子、なのに……

 なんで私、こんなにドキドキしてんのよー!!
 拒否、できないのよー!!

 間違いだったはずなのに……間違いでなくなりそうで、こわい……

 もう、好きになりかけてる……かも。
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