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優くんなんて、だいっ嫌いなんだから!!

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 翌日。

 萌ちゃんに無理矢理頼み込んで、朝から夜まで家にいさせてもらった。

「ほんとに……良かったの?」

 不安そうに尋ねた萌ちゃんに、「うん、いいの」一言だけ返すと、萌ちゃんはそれからは何も聞いてくることはなかった。

 もし、優くんと付き合うことになったら、もっと苦しいだけだって分かるから。

 優くんは今どうしてるんだろうって一日中考えて、どうして連絡くれないんだろうってモヤモヤしたり、私のこと本当に好きなのかなって不安になったり、もしかして他に好きな女の子が出来てたりしてって疑ったり……そんな風に、毎日を過ごしたくない。

 今、恋人じゃないまま別れたら、時が経てばこの胸の痛みもなくなるはず。

 これで、いいんだ。いつか、優くんと会っても笑顔でいられるようにするために。

 3年生が卒業しても、1年生の私はまだ春休みまで学校に通い続けなきゃいけない。優くんがいてもいなくても校舎は変わってないはずなのに、モノクロのように色を失くしていた。

 何をしても楽しくなくて、何もかもが、変わってしまった。

 終業式を終え、部屋のベッドにゴロンと寝っ転がりながら、溜息を吐いた。いつもなら、萌ちゃんとどっか遊びに行こうなんて話が出るのに、そんな気になれなかった。

 軽くノックして、ママが部屋に入ってきた。

「美依ちゃん、優くんから電話よ」
「いないって言って」
「んもぉ、ママを悪者にしないでよね! 優くんに嫌われたくないのにぃ」

 明るいノリで答えたママが、死んだ魚のような目をした私に気付いた途端、静かに階段を下りて行った。

 優くんの着信もLINEもスルーしてた。何も、聞きたくない。
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