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優くんなんて、だいっ嫌いなんだから!!
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家に帰ってきてから部屋に籠もって泣いてたら、下からチャイムが鳴る音が響いた。
「あらー、優くん! 今日卒業式でしょ、おめでとう」
遠くから聞こえて来るママの声にビクッとしながら涙を拭い、そっと扉を開けて耳をそばだてた。
「ありがとうございます……あの、美依子さんは」
「ふふっ、優くんが卒業しちゃって寂しいもんだから、いじけて部屋に籠もってるわ」
にゃっ!! 余計なことをぉぉ!!
「少し、話がしたいんですが……」
「えぇ、どうぞ上がって」
うわわっ、ママのバカッ! こうゆう時は娘の気持ちを汲んで、追い返すとこでしょーが!!
廊下を渡る足音が響いてきて、慌ててドアを閉めて鍵をかけた。階段を上る音が近づくにつれて、胸がバクバクして落ち着かない。
トン、と最後の階段を上りきった音に、ビクンと体が揺れる。
やだ、来ないでよ……喋りたくないんだってば。
これ以上、苦しくさせないでよ……
コンコンと軽くドアがノックされる。
「ミーコ、開けて」
「……やだ。帰ってよ、優くん」
「ミーコの可愛い顔、見せて」
「っっ……可愛くないもん。今ブスな顔してるから、見せられないもん」
「じゃ、そのブスって思ってる可愛い顔でいいから、見せてよ」
相変わらず優くんの声も言葉も甘くて。
それがもう聞けなくなるのかと思うと、ギュウギュウと心臓が雑巾みたいに絞られるように苦しくて、呼吸がうまく出来ない。
「私、無理……だから。会えない、とか。遠距離、とか。
好きな人と毎日一緒にいたいし、顔見てたいから……無理」
「……ミーコ、俺のこと好きだったんだ」
「っっ!!」
ししししししまったーーーーーー!!
つい、口を滑らしちゃった。
焦ってるうちにガチャガチャッと音がしてドアノブが開かれ、凭れ掛かってた私の体が斜めに傾いた。
「ウギャッ!?」
バランスを崩した体が、優くんに受け止められる。
「ど、どどどどどーして!?」
「ミーコんちの部屋の鍵、単純だから。これで開いた」
優くんが、胸飾りの安全ピンを私の目の前に差し出し、ニヤリと笑う。
「はーなーしてー!!」
「離さねーっつーの!」
優くんの腕の中で暴れてみたけど、そんな私の抵抗なんて大きくて逞しい優くんには全然堪えてない。私はいつまでもチビでガキのまんまなのに、優くんだけ勝手に大きくなって、大人になって、ズルいよ……
「優くん、なんて……私のこと忘れて、リア充な高校生活過ごして、彼女とかいっぱ……ック……つく……ウッ、ウッれば……ッグいいんだ……ウッ、ウッ」
「なぁ、ミーコ……ほんとに、ごめん。でも俺、自分がどこまでやれるのか試してみたいんだ。
すぐに春季大会始まるから明日には埼玉行って遠距離になっちまうけど、必ずここに戻ってくるから待ってて欲しい」
優くんの真剣な声音に体が固まる。
「ミーコが、好きなんだ。離れたって、会えなくたって、俺はずっとミーコのこと好きでいられる自信あるよ」
心が、大きく揺さぶられる。優くんの言葉を信じたい、信じようって思いたい自分がいる。
けど……もう、明日には優くんはいないんだ……
「言ったでしょ。
無理、なの。優くんがそばにいないの、堪えられない……」
優くんが苦しそうに眉を寄せて、潤んだ瞳で私を見つめる。
「ミーコ……」
「優くんが、好き。優くんのことが小学生の時からずっと好きで、中学に入って再会してからもっともっと好きになった……
だからね。好きだけど……好きだから、優くんとは、バイバイなの」
「なんでだよ! なんでミーコからの初めての告白が、別れの言葉になるんだよ!!」
優くんに言われて、ほんと私ってどこまで天邪鬼なんだろうって笑えてきた。いつも素直になれなくて、優くんがずっと私のこと好きだって言い続けてくれてたのに応えられなくて、最後の最後にこんなこと言うなんて……
「ごめっ……ごめん、ね……優く……ウッ……ヒグッ……ごめっ」
今まで謝ったことなんてなかった私が、何度も何度も繰り返し優くんに謝って。優くんは、唇をきつく結んで項垂れるだけだった。
ーー私たちの恋は、始まることなく終わってしまった。
「あらー、優くん! 今日卒業式でしょ、おめでとう」
遠くから聞こえて来るママの声にビクッとしながら涙を拭い、そっと扉を開けて耳をそばだてた。
「ありがとうございます……あの、美依子さんは」
「ふふっ、優くんが卒業しちゃって寂しいもんだから、いじけて部屋に籠もってるわ」
にゃっ!! 余計なことをぉぉ!!
「少し、話がしたいんですが……」
「えぇ、どうぞ上がって」
うわわっ、ママのバカッ! こうゆう時は娘の気持ちを汲んで、追い返すとこでしょーが!!
廊下を渡る足音が響いてきて、慌ててドアを閉めて鍵をかけた。階段を上る音が近づくにつれて、胸がバクバクして落ち着かない。
トン、と最後の階段を上りきった音に、ビクンと体が揺れる。
やだ、来ないでよ……喋りたくないんだってば。
これ以上、苦しくさせないでよ……
コンコンと軽くドアがノックされる。
「ミーコ、開けて」
「……やだ。帰ってよ、優くん」
「ミーコの可愛い顔、見せて」
「っっ……可愛くないもん。今ブスな顔してるから、見せられないもん」
「じゃ、そのブスって思ってる可愛い顔でいいから、見せてよ」
相変わらず優くんの声も言葉も甘くて。
それがもう聞けなくなるのかと思うと、ギュウギュウと心臓が雑巾みたいに絞られるように苦しくて、呼吸がうまく出来ない。
「私、無理……だから。会えない、とか。遠距離、とか。
好きな人と毎日一緒にいたいし、顔見てたいから……無理」
「……ミーコ、俺のこと好きだったんだ」
「っっ!!」
ししししししまったーーーーーー!!
つい、口を滑らしちゃった。
焦ってるうちにガチャガチャッと音がしてドアノブが開かれ、凭れ掛かってた私の体が斜めに傾いた。
「ウギャッ!?」
バランスを崩した体が、優くんに受け止められる。
「ど、どどどどどーして!?」
「ミーコんちの部屋の鍵、単純だから。これで開いた」
優くんが、胸飾りの安全ピンを私の目の前に差し出し、ニヤリと笑う。
「はーなーしてー!!」
「離さねーっつーの!」
優くんの腕の中で暴れてみたけど、そんな私の抵抗なんて大きくて逞しい優くんには全然堪えてない。私はいつまでもチビでガキのまんまなのに、優くんだけ勝手に大きくなって、大人になって、ズルいよ……
「優くん、なんて……私のこと忘れて、リア充な高校生活過ごして、彼女とかいっぱ……ック……つく……ウッ、ウッれば……ッグいいんだ……ウッ、ウッ」
「なぁ、ミーコ……ほんとに、ごめん。でも俺、自分がどこまでやれるのか試してみたいんだ。
すぐに春季大会始まるから明日には埼玉行って遠距離になっちまうけど、必ずここに戻ってくるから待ってて欲しい」
優くんの真剣な声音に体が固まる。
「ミーコが、好きなんだ。離れたって、会えなくたって、俺はずっとミーコのこと好きでいられる自信あるよ」
心が、大きく揺さぶられる。優くんの言葉を信じたい、信じようって思いたい自分がいる。
けど……もう、明日には優くんはいないんだ……
「言ったでしょ。
無理、なの。優くんがそばにいないの、堪えられない……」
優くんが苦しそうに眉を寄せて、潤んだ瞳で私を見つめる。
「ミーコ……」
「優くんが、好き。優くんのことが小学生の時からずっと好きで、中学に入って再会してからもっともっと好きになった……
だからね。好きだけど……好きだから、優くんとは、バイバイなの」
「なんでだよ! なんでミーコからの初めての告白が、別れの言葉になるんだよ!!」
優くんに言われて、ほんと私ってどこまで天邪鬼なんだろうって笑えてきた。いつも素直になれなくて、優くんがずっと私のこと好きだって言い続けてくれてたのに応えられなくて、最後の最後にこんなこと言うなんて……
「ごめっ……ごめん、ね……優く……ウッ……ヒグッ……ごめっ」
今まで謝ったことなんてなかった私が、何度も何度も繰り返し優くんに謝って。優くんは、唇をきつく結んで項垂れるだけだった。
ーー私たちの恋は、始まることなく終わってしまった。
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