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優くんなんて、だいっ嫌いなんだから!!
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優くんとの年の差はどうしようもなく埋められなくて、先に卒業してしまうことなんて分かってた。
それでも、優くんは近所に住んでるんだし、週末に会ったりも出来るし、高校に行ってしまっても大丈夫……って、不安な心を押さえ込んで言い聞かせてた。
な・の・にぃぃぃぃっっ!!
こいつは、バドミントンの全国大会で男子シングルス優勝した時に、高校のインターハイで何度も優勝経験のある強豪校のコーチから声を掛けられ、あれよあれよというまに勝手に埼玉の高校に入学することを決めてしまっていた。
名古屋から通学なんてどう考えてもできないから寮に入ることになっちゃったし、しかもかなり練習が厳しくて殆どプライベートの時間もなくて、週末どころか夏休みや冬休みも練習で帰ってこられないらしいし……
そりゃ、優くんがバドミントンしてる時って一番かっこいいって……認めないわけではない、けど……せっかく全国大会で優勝したんだから、高校でも続けて欲しいし、活躍して欲しいとは思ってたけど……遠距離になっちゃうなんて、思ってもなかった。
どっか県内のバドミントンが強い高校に行くんだって、思ってたのに。
背を向けた私に、優くんの低く重い声がポツンと雨のように降ってくる。
「寂しい思い、させちまってごめんな……」
その重みが、これが現実なんだって思い知らされて……瞳の奥がギューッと熱くなってくる。
ダメだ、泣かない泣かない泣かない!
絶対に、泣かないんだから!!
今にも決壊しそうな涙腺ダムを、必死に堰き止める。
「だーれが寂しいなんてっ!」
「……泣くなよ、ミーコ」
後ろから優くんに優しく抱き締められて、あえなくダムは決壊した。
「うわーーん!! 優くんのバカーー!! なん……ッグ……で、さい……ッたま、なんてっっ……ウッ、ウッ、ウグッ……わぁぁぁああああああ!!」
優くんのバカバカバカバカーー!! 優くんのせいで、涙止まんないよ。
笑って送ってなんか……やれないん、だから。
子供みたいに泣きじゃくって、まだ嗚咽してる私からそっと腕を離し、優くんが正面に向けさせた。
それから、勢い良くブチブチッと全部の学ランのボタンを引きちぎる。
手いっぱいにある、優くんのボタン。
「ミーコ、これやる」
「優、くん……」
両手でそっと受け取ると、右手でごっそり握り、野球のピッチャーのごとく優くんに向かって思いっきり投げつけた。優くんの体に当たったボタンが弾き飛ばされ、バラバラと床にぶち撒けられる。
「こんなのいらないっ! わた、しは……ウグッ……こんなんが欲しいんじゃないもん!!
ウッ、ウッ……優くんの嘘つき! 優くんなんて、だいっ嫌いなんだから!!」
大声で叫ぶと、駆け出した。
優くんが小学校卒業してからの二年間。すごく寂しくて、優くんのいなくなった心の隙間を埋めるのに必死だった。
中学入って、優くんと再会して……優くんのペースに巻き込まれて同じ部活に入らされて、週末もバドミントンのサークル付き合わされて、嫌でも優くんのことで心がいっぱいになって。
それでも私は、必死に優くんのこと好きにならないようにしてた。
どうせ優くんは部活を引退したら、中学卒業したら、また離れてしまう。だから、関わって欲しくなんてなかったのに。
そんな私に、
『俺絶対にミーコのこと諦めねーし、高校入っても離す気ねーから』
そう言ったのは、優くんだったのに。
あれは、嘘だったの? ボタンなんかもらったって、そんなの優くんの代わりになんかならない。
私には、無理だよ。
また優くんがいなくなったら、私はどうやってこの胸の隙間を埋めればいいのか、分かんないよ。だって、優くんへの想いは、あの頃と比べ物にならないぐらい大きくなってる。
あの時よりも苦しくて辛い気持ちを抱えなくちゃいけないなんて……私には、出来ないよ。
それでも、優くんは近所に住んでるんだし、週末に会ったりも出来るし、高校に行ってしまっても大丈夫……って、不安な心を押さえ込んで言い聞かせてた。
な・の・にぃぃぃぃっっ!!
こいつは、バドミントンの全国大会で男子シングルス優勝した時に、高校のインターハイで何度も優勝経験のある強豪校のコーチから声を掛けられ、あれよあれよというまに勝手に埼玉の高校に入学することを決めてしまっていた。
名古屋から通学なんてどう考えてもできないから寮に入ることになっちゃったし、しかもかなり練習が厳しくて殆どプライベートの時間もなくて、週末どころか夏休みや冬休みも練習で帰ってこられないらしいし……
そりゃ、優くんがバドミントンしてる時って一番かっこいいって……認めないわけではない、けど……せっかく全国大会で優勝したんだから、高校でも続けて欲しいし、活躍して欲しいとは思ってたけど……遠距離になっちゃうなんて、思ってもなかった。
どっか県内のバドミントンが強い高校に行くんだって、思ってたのに。
背を向けた私に、優くんの低く重い声がポツンと雨のように降ってくる。
「寂しい思い、させちまってごめんな……」
その重みが、これが現実なんだって思い知らされて……瞳の奥がギューッと熱くなってくる。
ダメだ、泣かない泣かない泣かない!
絶対に、泣かないんだから!!
今にも決壊しそうな涙腺ダムを、必死に堰き止める。
「だーれが寂しいなんてっ!」
「……泣くなよ、ミーコ」
後ろから優くんに優しく抱き締められて、あえなくダムは決壊した。
「うわーーん!! 優くんのバカーー!! なん……ッグ……で、さい……ッたま、なんてっっ……ウッ、ウッ、ウグッ……わぁぁぁああああああ!!」
優くんのバカバカバカバカーー!! 優くんのせいで、涙止まんないよ。
笑って送ってなんか……やれないん、だから。
子供みたいに泣きじゃくって、まだ嗚咽してる私からそっと腕を離し、優くんが正面に向けさせた。
それから、勢い良くブチブチッと全部の学ランのボタンを引きちぎる。
手いっぱいにある、優くんのボタン。
「ミーコ、これやる」
「優、くん……」
両手でそっと受け取ると、右手でごっそり握り、野球のピッチャーのごとく優くんに向かって思いっきり投げつけた。優くんの体に当たったボタンが弾き飛ばされ、バラバラと床にぶち撒けられる。
「こんなのいらないっ! わた、しは……ウグッ……こんなんが欲しいんじゃないもん!!
ウッ、ウッ……優くんの嘘つき! 優くんなんて、だいっ嫌いなんだから!!」
大声で叫ぶと、駆け出した。
優くんが小学校卒業してからの二年間。すごく寂しくて、優くんのいなくなった心の隙間を埋めるのに必死だった。
中学入って、優くんと再会して……優くんのペースに巻き込まれて同じ部活に入らされて、週末もバドミントンのサークル付き合わされて、嫌でも優くんのことで心がいっぱいになって。
それでも私は、必死に優くんのこと好きにならないようにしてた。
どうせ優くんは部活を引退したら、中学卒業したら、また離れてしまう。だから、関わって欲しくなんてなかったのに。
そんな私に、
『俺絶対にミーコのこと諦めねーし、高校入っても離す気ねーから』
そう言ったのは、優くんだったのに。
あれは、嘘だったの? ボタンなんかもらったって、そんなの優くんの代わりになんかならない。
私には、無理だよ。
また優くんがいなくなったら、私はどうやってこの胸の隙間を埋めればいいのか、分かんないよ。だって、優くんへの想いは、あの頃と比べ物にならないぐらい大きくなってる。
あの時よりも苦しくて辛い気持ちを抱えなくちゃいけないなんて……私には、出来ないよ。
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