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突然婚約者にケモ耳が生えたと知った伯爵令嬢は、思いっきりもふもふを愛でることにいたしました
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その日、婚約者であるオフデリック公爵子息であるフレッド様からお手紙が届きました。
そこに書かれていたのは、暫く会えなくなったという内容でした。
ど、どうして……ですの。
わたくし、何かフレッド様のお気を害するようなことをしてしまったのでしょうか。
ただちにお返事を書き、お手紙を出しましたが……フレッド様は、決してシャルロットのせいではない。私情によるものだというだけで、詳しい事情を話してはくださりませんでした。
フレッド様は舞踏会やサロンといった社交場にすら顔を出さなくなりました。演奏会や観劇に誘っても断られるばかりです。
周りの方に聞いても、ずっとフレッド様のお顔を見ていないとのことでした。
そこで、思い切ってオフデリック子爵であるノワードおじ様に話をお伺いしたのですが、父君であるノワードおじ様ですら、フレッド様のお顔を見ておらず、メイドに頼んで扉の前に食事をおいてもらい、一日中家に引きこもっているということでした。
「私も、心配で堪らないのだ……」
ノワードおじさまがそう言った後、夫人のエリザベートおば様が涙を浮かべて私の手を取りました。
「お願い、シャルロット。フレッドの心を開くことができるのは、婚約者である貴女だけですわ。どうか、フレッドにいったい何があったのか、探ってくださいませ」
私とフレッド様は幼少の頃に両親が決めた許婚でした。
両親から決められたとはいえ、私は優しく、穏やかで、愛情溢れるフレッド様のことをずっとお慕いしていました。そしてフレッド様も私のことを憎からず思ってくださると信じていましたのに。
何が、フレッド様のお心を変えてしまったのでしょう。
そう考えたら、いてもたってもいられなくなりました。
「承知、いたしましたわ……では、お願いがあるのですが」
1時間後。私はおじ様とおば様に頼んでご用意していただいたメイド服を着て、お食事のトレーを手に、フレッド様の部屋の扉の前に立ちました。
声色を変えて、呼びかけます。
「坊っちゃま。お食事をこちらに置いておきます」
すると、扉の奥からフレッド様の声が聞こえてきました。
「ありがとう」
フレッド様はいつもメイドが立ち去ったのを確認してから扉を開け、トレーを部屋に引き込むと聞いています。
私はフレッド様の部屋から立ち去ると、あらかじめ扉を開けておいた隣の部屋に入り、こっそりフレッド様の部屋の様子を窺いました。
しばらくして、静かに部屋の扉が開かれました。私は猛ダッシュして扉のノブを引っ張りました。
メイド服ってとっても便利ですのね。こんなに走りやすい服だなんて、知りませんでしたわ。
「えっ、なに!?」
戸惑うフレッド様の声をよそに、思いっきり扉をバーンと開けます。
「君はいったい……ぇ、シャルロット!?」
フレッド様はこれ以上ないぐらいに大きく目と口を開き、驚いた表情を見せましたが、私もまた、これ以上ないほどの驚愕を受けて立ち尽くしていました。
「フ、フレッド様……いったい、これは……」
どういう、ことでしょうか。
なんと、フレッド様に可愛いもふもふの耳と尻尾が生えているのです。最初は装飾なのかと思いましたが、動いているところをみると、本物のようです。
「み、見ないでくれ!!」
フレッド様は両耳を手でパタンと閉じ、尻尾をだらりと下げました。
私はバクバクと打つ鼓動を感じながら部屋に入り、誰にも見られないよう静かに扉を閉めました。
フレッド様は小さく体を丸め、震えています。
「君には、君だけにはこの姿を見られたくなかったのに!!」
だから、フレッド様は……私をずっと、避けていましたの?
「ある日、突然……耳と尻尾が生えて……何をしても、なくならないんだ。こんなの、おかしい。夢だ……そう思おうとして寝ても、翌日にも変わってなくて。
こんな姿、誰にも見せられない。特に、君に見せたら嫌われてしまう……婚約破棄されるかと思うと、怖くて会えなかったんだ」
「フレッド様……」
「どうか、醜い僕を見ないでくれ! 婚約破棄するつもりなら、黙ってこのまま立ち去ってくれ!!」
私は膝をついて座ると、フレッド様の尻尾を優しく撫でました。
「フレッド様の尻尾、もふもふしていてとても気持ちいいですわ」
フレッド様が顔を上げ、私を不思議そうに見つめます。彼の手から耳を外し、両端から耳をそっと柔らかく摘みます。
「あぁ、なんて愛らしいお耳なのでしょう……」
「シャルロット……君は、僕に耳と尻尾が生えていても、いいのか?」
私は満面の笑みで頷きました。
「耳と尻尾が生えていようとも、フレッド様であることにお変わりありませんわ。そうでしょう?
それに……私、フレッド様のもふもふが気に入ってしまいましたの。もっともふもふさせていただいてもよろしいかしら?」
フレッド様は少し顔を赤らめますと、「少し、だけなら……」と頷かれると、耳をパタンと閉じ、尻尾をフリフリしました。
その反応に、胸がキュンと締め付けられます。
どうやら私、フレッド様のもふもふの虜になってしまったようですわ。
そこに書かれていたのは、暫く会えなくなったという内容でした。
ど、どうして……ですの。
わたくし、何かフレッド様のお気を害するようなことをしてしまったのでしょうか。
ただちにお返事を書き、お手紙を出しましたが……フレッド様は、決してシャルロットのせいではない。私情によるものだというだけで、詳しい事情を話してはくださりませんでした。
フレッド様は舞踏会やサロンといった社交場にすら顔を出さなくなりました。演奏会や観劇に誘っても断られるばかりです。
周りの方に聞いても、ずっとフレッド様のお顔を見ていないとのことでした。
そこで、思い切ってオフデリック子爵であるノワードおじ様に話をお伺いしたのですが、父君であるノワードおじ様ですら、フレッド様のお顔を見ておらず、メイドに頼んで扉の前に食事をおいてもらい、一日中家に引きこもっているということでした。
「私も、心配で堪らないのだ……」
ノワードおじさまがそう言った後、夫人のエリザベートおば様が涙を浮かべて私の手を取りました。
「お願い、シャルロット。フレッドの心を開くことができるのは、婚約者である貴女だけですわ。どうか、フレッドにいったい何があったのか、探ってくださいませ」
私とフレッド様は幼少の頃に両親が決めた許婚でした。
両親から決められたとはいえ、私は優しく、穏やかで、愛情溢れるフレッド様のことをずっとお慕いしていました。そしてフレッド様も私のことを憎からず思ってくださると信じていましたのに。
何が、フレッド様のお心を変えてしまったのでしょう。
そう考えたら、いてもたってもいられなくなりました。
「承知、いたしましたわ……では、お願いがあるのですが」
1時間後。私はおじ様とおば様に頼んでご用意していただいたメイド服を着て、お食事のトレーを手に、フレッド様の部屋の扉の前に立ちました。
声色を変えて、呼びかけます。
「坊っちゃま。お食事をこちらに置いておきます」
すると、扉の奥からフレッド様の声が聞こえてきました。
「ありがとう」
フレッド様はいつもメイドが立ち去ったのを確認してから扉を開け、トレーを部屋に引き込むと聞いています。
私はフレッド様の部屋から立ち去ると、あらかじめ扉を開けておいた隣の部屋に入り、こっそりフレッド様の部屋の様子を窺いました。
しばらくして、静かに部屋の扉が開かれました。私は猛ダッシュして扉のノブを引っ張りました。
メイド服ってとっても便利ですのね。こんなに走りやすい服だなんて、知りませんでしたわ。
「えっ、なに!?」
戸惑うフレッド様の声をよそに、思いっきり扉をバーンと開けます。
「君はいったい……ぇ、シャルロット!?」
フレッド様はこれ以上ないぐらいに大きく目と口を開き、驚いた表情を見せましたが、私もまた、これ以上ないほどの驚愕を受けて立ち尽くしていました。
「フ、フレッド様……いったい、これは……」
どういう、ことでしょうか。
なんと、フレッド様に可愛いもふもふの耳と尻尾が生えているのです。最初は装飾なのかと思いましたが、動いているところをみると、本物のようです。
「み、見ないでくれ!!」
フレッド様は両耳を手でパタンと閉じ、尻尾をだらりと下げました。
私はバクバクと打つ鼓動を感じながら部屋に入り、誰にも見られないよう静かに扉を閉めました。
フレッド様は小さく体を丸め、震えています。
「君には、君だけにはこの姿を見られたくなかったのに!!」
だから、フレッド様は……私をずっと、避けていましたの?
「ある日、突然……耳と尻尾が生えて……何をしても、なくならないんだ。こんなの、おかしい。夢だ……そう思おうとして寝ても、翌日にも変わってなくて。
こんな姿、誰にも見せられない。特に、君に見せたら嫌われてしまう……婚約破棄されるかと思うと、怖くて会えなかったんだ」
「フレッド様……」
「どうか、醜い僕を見ないでくれ! 婚約破棄するつもりなら、黙ってこのまま立ち去ってくれ!!」
私は膝をついて座ると、フレッド様の尻尾を優しく撫でました。
「フレッド様の尻尾、もふもふしていてとても気持ちいいですわ」
フレッド様が顔を上げ、私を不思議そうに見つめます。彼の手から耳を外し、両端から耳をそっと柔らかく摘みます。
「あぁ、なんて愛らしいお耳なのでしょう……」
「シャルロット……君は、僕に耳と尻尾が生えていても、いいのか?」
私は満面の笑みで頷きました。
「耳と尻尾が生えていようとも、フレッド様であることにお変わりありませんわ。そうでしょう?
それに……私、フレッド様のもふもふが気に入ってしまいましたの。もっともふもふさせていただいてもよろしいかしら?」
フレッド様は少し顔を赤らめますと、「少し、だけなら……」と頷かれると、耳をパタンと閉じ、尻尾をフリフリしました。
その反応に、胸がキュンと締め付けられます。
どうやら私、フレッド様のもふもふの虜になってしまったようですわ。
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