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第一章 世界は明日、終わりを告げる
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くまっちだけでなく、皆はスマホを手にフェイブックやツイッター、インスタ等の世界中から次々にリアルタイムに更新されていく情報に釘付けだった。そこには、海外在住の日本人がアップしたものも含まれていた。
『ブラジル、サンパウロ在住。地震の余震のような地響きがずっと続いてる。逃げたくても街の外では強盗や暴行、強姦、銃の乱発が横行していて家でじっと息を潜めてるしかない。外ではずっとサイレンが鳴りっぱなしだ。怖い……このまま、私は死んじゃうのかな』
『死にたくない、死にたくない、死にたくない!! 遠くから轟音が響いてる。ブラックホールが近づいてきてる。誰か助けて!!』
インスタには、崩れたビルや炎に呑みこまれる家々、騒ぎに乗じて店に盗難に入る人々、警官たちに取り押さえられる集団などが秒刻みに息つく間もなくアップされていく。
映画としか思えなかったさっきの映像が、現実として起こっているのだとガンガンと心臓に突き刺さってくる。
世界中が混乱の渦に呑みこまれていく様子が、次々にアップされて拡がっていくSNSによって、鮮烈に形を為していた。
さっき授業で聞いたブラックホールの説明が、耳に蘇る。自分には何ら関係のないと思っていた宇宙のどこかで起こっていたはずの世界が、急に現実味を帯びて迫っていた。
私たちはみんな、ブラックホールに呑み込まれてしまうの!?
本当にそんなこと、起きるだなんて信じられない。
この状況を飲み込むことが出来ないまま、私はその場に立ち尽くしていた。
そんな私を置いてけぼりにして、この小さな世界でも既に混乱が始まっていた。
早速家族や友人、恋人に安否の連絡を取り始めるしっかりした生徒もいたが、中には泣き出したり、騒ぎ出したり、抱えきれない苛立ちをぶつけるかのように怒声と共に物を投げつける生徒もいた。それに更に輪をかけて声を張り上げ、生徒たちを制御しようとする先生たちの叫び声。さまざまな声が重なって、絡まって、反発して講堂の隅々まで揺らし、耳の奥をジンジンと痺れさせる。
皆が主役を張って悲劇のヒロインやヒーローを演じる中、私はそれを映すカメラマンのように見渡していた。全ては、虚実の世界だと思いたかった。
「んなの、信じられるかよ!!」
大きく叫ぶと、健一が扉へと向かって走り出した。けれど、それを見越していたのか、講堂の全ての出口には、いつのまにか閂《かんぬき》が掛けられ、勝手に出られないようになっていた。左右には先生がそれぞれ立ち、まるで看守のように砦を守っている。その物々しい雰囲気に息を呑んだ。
校長先生がマイクを手に、舞台の上に上がる。
「皆さん、どうか落ち着いて下さい。まだ映像は終わっていません。これから、皆さんの進退に関わる重要な話が流れますので、静かに聞いて下さい」
厳粛で落ち着いた低い声が、阿鼻叫喚の世界に投げ込まれた生徒たちを引き戻す。少しずつ混乱の波が引いてきて、ようやく大半の生徒たちが自分たちのいる現実へと戻って来た。
『ブラジル、サンパウロ在住。地震の余震のような地響きがずっと続いてる。逃げたくても街の外では強盗や暴行、強姦、銃の乱発が横行していて家でじっと息を潜めてるしかない。外ではずっとサイレンが鳴りっぱなしだ。怖い……このまま、私は死んじゃうのかな』
『死にたくない、死にたくない、死にたくない!! 遠くから轟音が響いてる。ブラックホールが近づいてきてる。誰か助けて!!』
インスタには、崩れたビルや炎に呑みこまれる家々、騒ぎに乗じて店に盗難に入る人々、警官たちに取り押さえられる集団などが秒刻みに息つく間もなくアップされていく。
映画としか思えなかったさっきの映像が、現実として起こっているのだとガンガンと心臓に突き刺さってくる。
世界中が混乱の渦に呑みこまれていく様子が、次々にアップされて拡がっていくSNSによって、鮮烈に形を為していた。
さっき授業で聞いたブラックホールの説明が、耳に蘇る。自分には何ら関係のないと思っていた宇宙のどこかで起こっていたはずの世界が、急に現実味を帯びて迫っていた。
私たちはみんな、ブラックホールに呑み込まれてしまうの!?
本当にそんなこと、起きるだなんて信じられない。
この状況を飲み込むことが出来ないまま、私はその場に立ち尽くしていた。
そんな私を置いてけぼりにして、この小さな世界でも既に混乱が始まっていた。
早速家族や友人、恋人に安否の連絡を取り始めるしっかりした生徒もいたが、中には泣き出したり、騒ぎ出したり、抱えきれない苛立ちをぶつけるかのように怒声と共に物を投げつける生徒もいた。それに更に輪をかけて声を張り上げ、生徒たちを制御しようとする先生たちの叫び声。さまざまな声が重なって、絡まって、反発して講堂の隅々まで揺らし、耳の奥をジンジンと痺れさせる。
皆が主役を張って悲劇のヒロインやヒーローを演じる中、私はそれを映すカメラマンのように見渡していた。全ては、虚実の世界だと思いたかった。
「んなの、信じられるかよ!!」
大きく叫ぶと、健一が扉へと向かって走り出した。けれど、それを見越していたのか、講堂の全ての出口には、いつのまにか閂《かんぬき》が掛けられ、勝手に出られないようになっていた。左右には先生がそれぞれ立ち、まるで看守のように砦を守っている。その物々しい雰囲気に息を呑んだ。
校長先生がマイクを手に、舞台の上に上がる。
「皆さん、どうか落ち着いて下さい。まだ映像は終わっていません。これから、皆さんの進退に関わる重要な話が流れますので、静かに聞いて下さい」
厳粛で落ち着いた低い声が、阿鼻叫喚の世界に投げ込まれた生徒たちを引き戻す。少しずつ混乱の波が引いてきて、ようやく大半の生徒たちが自分たちのいる現実へと戻って来た。
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