<完結>【R18】愛するがゆえの罪 10 ー幸福の基準ー

奏音 美都

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呑み込まれる理性

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 混乱し、不安に陥る美姫を、秀一の腕が優しく包み込む。

「大丈夫ですよ」

 甘い声で耳元で囁かれ、美姫は膝から力が抜けそうになった。

 秀一の逞しい胸の感触が背中に伝わり、ますます美姫の鼓動が速まり、熱が高まる。先程の秀一の美しい裸体が思わず脳裏に蘇り、官能的な匂いに包まれ、呼吸さえも苦しくなる。

 美姫は秀一を振り返って見上げた。

「ど、どうしよう......エレベーターが......」

 そんな美姫を今度は正面から秀一は抱き締め、レンズの奥の瞳を細めて口角を上げた。

「貴女と二人きりの時間を作るため、停めました」

 秀一の言葉を聞き、美姫は先程秀一が指を伸ばした先を見つめた。そこには、赤い緊急停止ボタンがあった。

 え、これを押したの!?

 秀一の指が美姫の顎を抑え、彼の正面へ向けられる。端整な顔が目の前に迫ってくる。

「デザイン案を固めるためには、もっと私をよく知る必要があるでしょう?」

 お互いの息が溶け合う程の距離まで近づき、美姫の全身がドクドクと激しく脈を打つ。

 駄目......この、ままじゃ......

「は、離して......」
「本気で離して欲しいのなら、本気で抵抗してみて下さい」

 美姫は秀一の手から逃れようと秀一の腕を引き剥がそうとしたが、逆に両手首を掴まれてエレベーターの壁に抑え込まれてしまった。両手首を精一杯捻っても、拘束は解けない。

「ック、秀一さん!!」

 潤んだ瞳で顔を真っ赤にして見上げる美姫のうなじに、秀一の唇が寄せられる。

「貴女は、嫌がってなどいない。こうして拘束されることに悦びを感じているのです。
 だから、本気で抵抗出来ない」
「ち、違います......」

 睨みつけようとしたが、見上げる秀一の艶麗な眼差しに一気に躰が熱くなっていき、抵抗の力が失われてしまう。

 耳元で甘い吐息がかかった。

「ほら、また......」
「ぁ......」

 唇を噛み締め、潤んだ瞳を俯かせた。躰が小さく震える。

 内腿を伝う愛蜜が滴る感触が縦に抜けていく。

「そんな無防備だから、羽鳥大和に唇を奪われるのです。
 しかも......この私の、目の前で」

 秀一の静かな怒りが、美姫の背中に戦慄を走らせる。膝がガクガクと震えた。

『こちらはSOS警備会社です。何か異常事態が発生しましたか?』

 スピーカーから突然声が響き、美姫は飛び上がりそうなほどに大きく躰を揺らした。

 助かった......

 安堵の息を吐く美姫を、秀一は目を細くして笑みを浮かべた。

「急にエレベーターが停まってしまったんですが」

 何事もなかったかのように平然と答えてから、美姫の下唇に吸いついた。

「ッッ!!!」

 突然の口づけに抵抗出来ず、声も出せない。秀一の舌が美姫の唇をなぞり、口角を舐められた美姫は「ッハァ」と吐息を漏らしてしまう。すかさず舌が口内に侵入し、美姫の舌が絡め取られる。

 や、めて......

 眉を寄せ、切なさで歪んだ表情で秀一を見上げた。蠱惑的な瞳の輝きに、ドクンと大きく脈が打つ。

 秀一さんは、知ってる。私が、助けを求められないことを......
 知っていて、こんなことをしてるんだ。

 ジュワリと蜜が溢れ出し、そこが波打つのを感じた。

『分かりました。では、エレベーターを動かしますので、少々お待ち下さい』

 抑揚のない平坦な響きは、自分たちとはまるで違う世界からの声に聞こえた。

 秀一は、美姫の舌を飲み込むように吸った。

「ック」

 ま、た......

 秘部がそれに呼応してビクンと畝り、恨めしげに睨みつけるが、秀一は涼しい顔で警備員にお礼を告げていた。

「ありがとうございます。助かります」

 スピーカーからの響きに合わせるような平坦な声。まるで外国の言語を聞いているようだと感じていたら、

「お待たせしました。続きを始めましょうか......」

 再び耳を擽る官能的な声音で、甘美な世界へと引き摺り込まれた。
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