<完結>【R18】愛するがゆえの罪 10 ー幸福の基準ー

奏音 美都

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罪の代償

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 それから1ヶ月が経ったクリスマスイブ、『KURUSU』ソウル支店オープンの日を迎えた。 

 美姫は島根と内田と共にオープンセレモニーの為にソウルへと発った。市川は別便で、現地で落ち合う予定だ。

 ソウル支店オープニングセレモニーにて、チーフを島根、デザイナーに市川を迎え、『KURUSU』を一新することを発表した。既存のレディースやメンズだけでなく、新たに新設されたローティーン部門でも、既に市川のデザインしたファッションがそこで紹介された。

 今まで『来栖美姫』を前面に押し出して展開してきた『KURUSU』だけに、取材陣達も一様に驚いたが、新たなデザイナーが市川であることに注目し、期待する声も多く聞かれた。

 当然、このニュースは、すぐさまマスコミに大きく取り上げられた。父親を亡くしたことを理由に考えている者もいたが、多くは多忙すぎた仕事を休んで『妊活』に取り組むのではないかと推測する者が殆どだった。

 秀一との関係を疑う声は、上がることはなかった。

 美姫は、TVや雑誌の取材を全て断り、メディアへの顔出しは一切やめた。公の場でチーフ辞職を発表したものの、新チーフとなった島根の補佐として仕事を助け、秀一のツアー準備に全力を注いだ。『KURUSU』本社での仕事は1月31日をもって終了し、翌日からは秀一の来日ツアーに衣装担当として付き添い、全国を回る予定だ。

 秀一とは毎日メールでやり取りをし、時にはLINEやskypeで話すこともあった。

 美姫を思いはばかる秀一の声が、受話器を通して伝わってくる。

『美姫、辛くはないですか。すみません、傍にいてあげられなくて……』

 自分と共に生きるという決意をし、困難の渦中にある美姫の傍にいてあげたいと思いつつも、来日ツアーを前にして多忙を極めるここでの仕事を放り出して会いに行くことは出来なかった。
 
 美姫の瞳から一気に熱いものが零れ落ち、胸が苦しくなる。

「いえ。これは私にとって、必要な試練ですから。
 秀一さんと一緒に生きるために選んだ、いばらの道。その先に貴方がいて下さるなら、どんな困難も乗り越えていけます」

 どれだけ辛く苦しい状況にあっても、秀一の声を聞き、顔を見ることで彼への愛情に確信が深まり、一緒にいたいという思いが美姫の中で高まった。どんな困難にも、耐えていけると思った。

 秀一は胸を熱くしながらも、苦しげに美姫に伝えた。

『美姫、貴女をどんな困難にあわせても手に入れたいと思ってしまう私は、酷い男です。私は、自分のエゴをどこまでも突き通している……
 離婚記者会見には、私も同席します。貴女だけを辛い目には遭わせません』
「秀一さん……」

 美姫は涙を拭い、頷いた。

『2月1日から行われる来日ツアーの為、2週間前に現地入りすることにします。
 ようやく、美姫に会えます』
「そう、ですか」

 秀一さんに、会える……

 美姫の胸が高鳴ると同時に、拭いきれない不安が夏の雨雲のように急速に広がっていくのを感じた。
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