チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第一章 期待はずれの転校生

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 全校朝礼が終わり、みんなが教室に戻った頃を見計らって、学年主任の先生が教室まで案内してくれる。心臓がバクバクし、緊張で頰がピクピク引き攣ってくる。

 先生が、ある教室の前で立ち止まった。扉を少し開け、顔だけを覗かせる。

「松元先生ぇー、前に話した子来たで、今日からやっでよろしくなぁ」

 かなりフランクに説明すると、そのままピシッと扉を閉めてしまった。

「そいじゃ、きばいやんせぉー」

 それから私に軽く手を挙げ、立ち去って行く。

 え。えぇっー!!
 まさかの置き去り!? どうしたらいいの?

 パニクってると、教室の中から騒めきに混じって松元先生と思われる声が聞こえてきた。

「おい、あんたたちゃなんね。だらだらすんな!今日はカナダから来た特別転入生を紹介すっど!」

 その途端、教室が一斉に大騒ぎになった。

「カナダ人!?」
「わっぜすげー!!」

 ちょ、ちょっと待って……この期待感の中、どうやって教室に入れるっていうの……

「はい、そいじゃ鈴木美和子さん! 入ってなさい」

 い、いやいやいやいや……無理。

 扉の前で躊躇してると、ガラッと勢いよく扉が開いた。

「あんた、こげなとこでなんしよっと? はよ、入ってこんね」

 緑のジャージを着てつっかけサンダルを履いた短髪角刈りの、いかにも田舎のおっちゃんって感じの松元先生が私を見下ろした。

「ぇ。でも……」
「はよぉ!」

 松元先生が構わず私の背中に手を当て、教室へと押し出される。

 あわわわわ……

 クラスのみんなが注目する中、仕方なく背筋を伸ばして立つと、ドッと笑いが起こった。

「金髪碧眼、期待しとったが!」
「外人じゃねっがぁ!」
「プッ……わっぜ日本人!」

 だから……嫌だったんだってば。

「鈴木、美和子です……父親の仕事の関係で、今はカナダに住んでいます。夏休みを利用して、祖母の家から短期で伊佐高校に入学させてもらうことになりました。よろしくお願いします」

 緊張しながら軽くお辞儀をすると、みんなが目を丸くしてポカーンと私を見てる。すごく、居づらい……

「カナダからなら、英語喋れっとけ?」
「二ヶ国語、わっぜかっこええ!」
「それなら、あたしも二ヶ国語喋れるが。日本語と鹿児島かごんま弁!」
「でた! 笑かすな」

 異常に仲の良いこのクラスの雰囲気に、馴染める気がしない。

「ほいじゃ、鈴木さん。あっこの空いてる席に座らんね」
「ぇ?」

 座るの? 座らないの?

「ほら、あっこ!」

 あぁ、座れってことね……

 窓側の一番後ろの席に座ると、前に座ってた女の子が振り返り、ニコッと笑った。重めの前髪を眉毛の位置でパッツンにしてて、後ろ髪は二つに分けて結んでる。いかにも性格が良さそうで、親しみを感じた。

「あたしー、山下 郁美ぃ。よろしくねぇ」
「よ、よろしく」

 語尾が上がるイントネーションの女の子の方言って凄く可愛いし、なんか癒される。

「あ、俺ぇ、西郷 勇気なぁ。よろしくー。鈴木さん、わっぜ可愛ぇなぁ!!」

 山下さんの隣に座ってた男の子がガバッと斜めに振り返る。背が高くて体格ががっしりしてて、坊主で眉毛が太くて男らしい。名字からして幕末に活躍した薩摩藩出身の偉人、西郷隆盛を思わせた。でも、近寄り難そうな雰囲気はなく、陽気な印象だ。

「ブハッ、西郷どん! わっぜ、恥やらい!」
「西郷どん、西郷どん!! 告れ!! あれ、やれ!!」
「チェストー!!」

 周りがニヤニヤしながらガヤを入れる。

 『西郷どん』って、どハマり過ぎるニックネーム……

 みんなも私と同じこと考えてたんだなーと、ほんの少し心の中で嬉しくなった。西郷くんは両手で軽く皆を制してから、私の顔をじっと見つめた。



「好きです……」



 え、なに!? いきなりの告白!?
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