17 / 72
第四章 「チェストー!ズ」始動
1
しおりを挟む
文化祭の翌日は振替休日で休みだったので、『チェストー!ズ』で集まることになった。『チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!』では、チーム名が長すぎるので、自分たちのチーム名を呼ぶ時には『チェストー!ズ』ということに決まったのだ。実際にボートを使っての川での練習はまだ出来ないので、今日は話し合いのみになる。
集合場所は昨日行ったカラオケパールの先にあるファミレス、『ファミリ庵はいから亭』になった。伊佐にはファーストフード店がなく、みんなで集まるとなると牛丼屋になるらしいんだけど、さすがに12名の大所帯で牛丼屋に集まってミーティングは難しいだろうということで、ここになったのだった。『ファミリ庵はいから亭』は和風ファミレスって感じで、同系列店である『寿しまどか』と隣接している。補欠含めて12名全員が出席し、気合い十分だ。昨日の打ち上げの空気をまだ引き摺ってて、異様にみんなテンションが高かった。
高校生の団体ということで、うるさくなりそうだという配慮からか、内堀こたつの席に通された。お店側の選択は間違いない。
勇気くんはみんなでランチ焼肉食べ放題コースを頼もうと提案したけど、女子はそれほど食べないし、2680円はバイトが禁止されている伊佐高生にはキツイということで却下された。結局、男子はほとんどが焼肉ランチを頼み、私は梅しらす釜飯と天ぷら、茶碗蒸しに貝汁とドリンクがついた釜飯ランチを頼んだ。
「郁美の海鮮丼ランチも旨そうが! ちょっとくれ!」
勇気くんが郁美のご飯に手を伸ばそうとすると、パチンと手を叩かれた。
「絶対渡さん!! あんた、1.5倍盛りの焼肉ランチ頼んだけ、それ食わんね」
「こんな量じゃ足らんがよ!」
「知らん!」
「ハハッ、西郷どん、郁美から奪っちゃれ、奪っちゃれ!」
側にいた前田くんと吉元くんが囃し立てた。
「まーえーだー、よしーもとー!! やぜろしかー!!」
「こわっ!!」
まるでコントのようで、笑えてくる。このメンバーでこれから大会に向けて練習するのかと思うと、期待に胸が膨らんだ。
昼食が終わり、食事を片付けてもらうとドリンクのみをテーブルに置いてミーティングを開始した。ドラゴンボート未経験者が補欠含めて4人いるため、まずはチームリーダーである海くんが基本的な説明をする。
「難しいことを説明すると長くなるから、今回のいさドラゴンカップについてのことだけで説明するけど、チームは太鼓を叩いて皆を先導する鼓手が1名、ボートがまっすぐ進むようにコントロールする舵取りが1名、ボートを引っ張っていく漕手が8名、そして何かあった時のメンバーとしての補欠が2名の、合計12名で構成されている。
練習の時は、出来れば速乾性のあるシャツにショートパンツを着てきて欲しい。サンダルは脱げやすいから理想は踵まで固定できるウォーターシューズだけど、なければスニーカーでもいい。それから、ライフジャケットの着用が義務付けられてる」
そこで、郁美がコップを持っていない方の手を軽く挙げる。
「ライフジャケットはボート部にたくさん置いてあるから、ない人は言ってくれれば貸し出すからね!」
海くんが頷くと、話を続ける。
「この中で、自分のパドル持ってる奴はいる?」
未経験の本田くんが、手を挙げた。
「カヌーのパドルならあるけど、それでよかけ?」
「いや、カヌーのパドルはドラゴンボートのよりも水面を漕ぐブレードの長さが短いんだ。マイパドルを使う場合は、JDBA、つまり日本ドラゴンボート協会規定のものでないと認められない」
「大会には何回も出たことあるけど、いっつもパドルは大会主催者に申請して借りとるよ。誰も持っちょる人はおらんが」
勇気くんが答えてみんなが同意すると、海くんが後ろを振り向いた。部屋の隅に立てかけて置いた黒の楽器ケースのようなバッグを手に取り、ジッパーを下ろす。
「これが、ドラゴンボートで使うパドルだ」
集合場所は昨日行ったカラオケパールの先にあるファミレス、『ファミリ庵はいから亭』になった。伊佐にはファーストフード店がなく、みんなで集まるとなると牛丼屋になるらしいんだけど、さすがに12名の大所帯で牛丼屋に集まってミーティングは難しいだろうということで、ここになったのだった。『ファミリ庵はいから亭』は和風ファミレスって感じで、同系列店である『寿しまどか』と隣接している。補欠含めて12名全員が出席し、気合い十分だ。昨日の打ち上げの空気をまだ引き摺ってて、異様にみんなテンションが高かった。
高校生の団体ということで、うるさくなりそうだという配慮からか、内堀こたつの席に通された。お店側の選択は間違いない。
勇気くんはみんなでランチ焼肉食べ放題コースを頼もうと提案したけど、女子はそれほど食べないし、2680円はバイトが禁止されている伊佐高生にはキツイということで却下された。結局、男子はほとんどが焼肉ランチを頼み、私は梅しらす釜飯と天ぷら、茶碗蒸しに貝汁とドリンクがついた釜飯ランチを頼んだ。
「郁美の海鮮丼ランチも旨そうが! ちょっとくれ!」
勇気くんが郁美のご飯に手を伸ばそうとすると、パチンと手を叩かれた。
「絶対渡さん!! あんた、1.5倍盛りの焼肉ランチ頼んだけ、それ食わんね」
「こんな量じゃ足らんがよ!」
「知らん!」
「ハハッ、西郷どん、郁美から奪っちゃれ、奪っちゃれ!」
側にいた前田くんと吉元くんが囃し立てた。
「まーえーだー、よしーもとー!! やぜろしかー!!」
「こわっ!!」
まるでコントのようで、笑えてくる。このメンバーでこれから大会に向けて練習するのかと思うと、期待に胸が膨らんだ。
昼食が終わり、食事を片付けてもらうとドリンクのみをテーブルに置いてミーティングを開始した。ドラゴンボート未経験者が補欠含めて4人いるため、まずはチームリーダーである海くんが基本的な説明をする。
「難しいことを説明すると長くなるから、今回のいさドラゴンカップについてのことだけで説明するけど、チームは太鼓を叩いて皆を先導する鼓手が1名、ボートがまっすぐ進むようにコントロールする舵取りが1名、ボートを引っ張っていく漕手が8名、そして何かあった時のメンバーとしての補欠が2名の、合計12名で構成されている。
練習の時は、出来れば速乾性のあるシャツにショートパンツを着てきて欲しい。サンダルは脱げやすいから理想は踵まで固定できるウォーターシューズだけど、なければスニーカーでもいい。それから、ライフジャケットの着用が義務付けられてる」
そこで、郁美がコップを持っていない方の手を軽く挙げる。
「ライフジャケットはボート部にたくさん置いてあるから、ない人は言ってくれれば貸し出すからね!」
海くんが頷くと、話を続ける。
「この中で、自分のパドル持ってる奴はいる?」
未経験の本田くんが、手を挙げた。
「カヌーのパドルならあるけど、それでよかけ?」
「いや、カヌーのパドルはドラゴンボートのよりも水面を漕ぐブレードの長さが短いんだ。マイパドルを使う場合は、JDBA、つまり日本ドラゴンボート協会規定のものでないと認められない」
「大会には何回も出たことあるけど、いっつもパドルは大会主催者に申請して借りとるよ。誰も持っちょる人はおらんが」
勇気くんが答えてみんなが同意すると、海くんが後ろを振り向いた。部屋の隅に立てかけて置いた黒の楽器ケースのようなバッグを手に取り、ジッパーを下ろす。
「これが、ドラゴンボートで使うパドルだ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる