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再会
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翌朝。
トン、トン……
ノックの後、扉が開かれる。
「ルチア様、起きてるぅ?」
執事のユリアーノが顔を覗かせる。
ブラウンの混じったブロンドヘアに緑がかった青い活発な瞳、人懐っこさを感じさせるそばかすの彼は、国王や王妃、城の従者達がいる前では畏まった口調だが、ルチアとふたりきりの時はまるで友達のようにざっくばらんな口調になる。それがルチアにとっては気楽であり、ユリアーノの前では肩の力を抜くことができた。
「おはようございます、ユーリ。なんだか、朝早くから目が覚めてしまいましたわ」
ユリアーノが目を細める。
「クロード様に早く会いたくてたまらないんでしょ。久しぶりだもんねぇ」
「えぇ……そうなんですの」
クロード様に今日、お会いできるのだと思ったら落ち着かなくて……
「うわぁ、ルチア様! そのドレスすっごく似合ってるし、めちゃめちゃ綺麗だよ!」
ユリアーノがにっこり笑って褒めてくれる。
「クロード様と並んで歩くと、映えそう!」
何を着ていくか悩みに悩んで、黒のサテンドレスを着ていくことにした。胸元が大胆にカットされ、大きくスリットの開いているスタイルで肩紐は金のチェーンになっている。大人で落ち着いたクロードに相応しい女性になりたい、そう思って選んだドレスだ。
「ふふっ……ありがたく存じますわ」
クロード様に、喜んで頂けたら嬉しいのですが。
ルチアの気持ちが、ふわふわと舞い上がる。
馬車に揺られながら、ふとユリアーノに尋ねる。
「ユーリはクロード様の別邸へは行らしたことはあって?」
ユリアーノは元々はシュタート王国の騎士で、クロードの側近でもあった。クロードの役に立ちたくて、自らの意思でスパイになるべくグレートブルタン国の執事となり、情報を集めてシュタート国に流すつもりだったが、ルチアと過ごすうちにすっかり打ち解けてスパイでいることに罪悪感を抱くようになった。
その後、クロードからグレートブルタン国を侵略するつもりも、スパイを必要としていないということも知り、自分が勝手に気を回して余計なことをしていたのだと分かった。クロードからはシュタート王国に戻るよう要請されたが、ユリアーノはずっと自分を信じてくれたルチアの役に立ちたくて、執事としてここに残ることを決めたのだった。
「実は、ないんだよねー。だから、俺もどんなところなのか今日楽しみにしてきたんだ」
クロードの片腕として働いていたユリアーノでさえ知らなかった別邸。
そこには、何かあるのでしょうか……
ルチアは、馬車の窓から流れる景色を見つめながらクロードへの想いを馳せていた。
シュタート王国の領地に入ってからも道程は遠く、深い森を抜けた先に目指すクロードの別邸はあった。周りを森で囲まれ、城の目の前には広大な湖があり、その湖には天まで聳え立つような尖塔が並んだ立派な城が映し出されていた。その華やかな外観に、ルチアは目を奪われた。
ここが、クロード様の別邸なんですの?
シュタート王国の本城の、重厚で落ち着いた雰囲気とはまるで違っていた。真っ白な城壁に城の屋根や壁などに金箔や宝石が装飾されていて絢爛豪華、といった感じだ。とてもクロードのイメージからは想像できない居城だった。
馬車が美しい装飾の施された正門へと辿り着くと、ピタッと止まった。先導していたアルバートが馬から降り、馬車に乗っているルチアへと手を差し伸べた。
その手を取って馬車から降りると、アルバートがルチアに告げる。
「俺の役目はここまでだ。三日後、また迎えに来る。何かあれば、ユリアーノに知らせるよう伝えてあるから」
ユリアーノは、アルバートの言葉に応えてにっこりと笑う。
「ルチア様のことは俺がしっかり守るから、任せてよ!」
「じゃ、頼んだぞ」
そう言って、アルバートが再び馬に乗る。
アルバートはルチアの乳母の息子で、まるで兄姉のように育ってきた、大切な幼馴染みだ。
アルバートはずっと幼い頃からルチアに想いを寄せていたが、プリンセスと騎士という立場から、その想いを打ち明けることはなかった。ルチアがクロードと婚約し、長年の恋心を諦めたつもりだったが……ルチアがシュタート王国の前国王派が放ったスパイに暗殺されかけた時、その首謀者がクロードだと勘違いし、ルチアを助けた際に告白したのだった。
結局アルバートの想いは実ることなく、失恋に終わったが、今では騎士団長としてプリンセスを一生守ると誓いを立てている。
「アル、ありがとう」
すると、アルバートがふっと笑みを溢す。
「あぁ、楽しんでこいよ」
トン、トン……
ノックの後、扉が開かれる。
「ルチア様、起きてるぅ?」
執事のユリアーノが顔を覗かせる。
ブラウンの混じったブロンドヘアに緑がかった青い活発な瞳、人懐っこさを感じさせるそばかすの彼は、国王や王妃、城の従者達がいる前では畏まった口調だが、ルチアとふたりきりの時はまるで友達のようにざっくばらんな口調になる。それがルチアにとっては気楽であり、ユリアーノの前では肩の力を抜くことができた。
「おはようございます、ユーリ。なんだか、朝早くから目が覚めてしまいましたわ」
ユリアーノが目を細める。
「クロード様に早く会いたくてたまらないんでしょ。久しぶりだもんねぇ」
「えぇ……そうなんですの」
クロード様に今日、お会いできるのだと思ったら落ち着かなくて……
「うわぁ、ルチア様! そのドレスすっごく似合ってるし、めちゃめちゃ綺麗だよ!」
ユリアーノがにっこり笑って褒めてくれる。
「クロード様と並んで歩くと、映えそう!」
何を着ていくか悩みに悩んで、黒のサテンドレスを着ていくことにした。胸元が大胆にカットされ、大きくスリットの開いているスタイルで肩紐は金のチェーンになっている。大人で落ち着いたクロードに相応しい女性になりたい、そう思って選んだドレスだ。
「ふふっ……ありがたく存じますわ」
クロード様に、喜んで頂けたら嬉しいのですが。
ルチアの気持ちが、ふわふわと舞い上がる。
馬車に揺られながら、ふとユリアーノに尋ねる。
「ユーリはクロード様の別邸へは行らしたことはあって?」
ユリアーノは元々はシュタート王国の騎士で、クロードの側近でもあった。クロードの役に立ちたくて、自らの意思でスパイになるべくグレートブルタン国の執事となり、情報を集めてシュタート国に流すつもりだったが、ルチアと過ごすうちにすっかり打ち解けてスパイでいることに罪悪感を抱くようになった。
その後、クロードからグレートブルタン国を侵略するつもりも、スパイを必要としていないということも知り、自分が勝手に気を回して余計なことをしていたのだと分かった。クロードからはシュタート王国に戻るよう要請されたが、ユリアーノはずっと自分を信じてくれたルチアの役に立ちたくて、執事としてここに残ることを決めたのだった。
「実は、ないんだよねー。だから、俺もどんなところなのか今日楽しみにしてきたんだ」
クロードの片腕として働いていたユリアーノでさえ知らなかった別邸。
そこには、何かあるのでしょうか……
ルチアは、馬車の窓から流れる景色を見つめながらクロードへの想いを馳せていた。
シュタート王国の領地に入ってからも道程は遠く、深い森を抜けた先に目指すクロードの別邸はあった。周りを森で囲まれ、城の目の前には広大な湖があり、その湖には天まで聳え立つような尖塔が並んだ立派な城が映し出されていた。その華やかな外観に、ルチアは目を奪われた。
ここが、クロード様の別邸なんですの?
シュタート王国の本城の、重厚で落ち着いた雰囲気とはまるで違っていた。真っ白な城壁に城の屋根や壁などに金箔や宝石が装飾されていて絢爛豪華、といった感じだ。とてもクロードのイメージからは想像できない居城だった。
馬車が美しい装飾の施された正門へと辿り着くと、ピタッと止まった。先導していたアルバートが馬から降り、馬車に乗っているルチアへと手を差し伸べた。
その手を取って馬車から降りると、アルバートがルチアに告げる。
「俺の役目はここまでだ。三日後、また迎えに来る。何かあれば、ユリアーノに知らせるよう伝えてあるから」
ユリアーノは、アルバートの言葉に応えてにっこりと笑う。
「ルチア様のことは俺がしっかり守るから、任せてよ!」
「じゃ、頼んだぞ」
そう言って、アルバートが再び馬に乗る。
アルバートはルチアの乳母の息子で、まるで兄姉のように育ってきた、大切な幼馴染みだ。
アルバートはずっと幼い頃からルチアに想いを寄せていたが、プリンセスと騎士という立場から、その想いを打ち明けることはなかった。ルチアがクロードと婚約し、長年の恋心を諦めたつもりだったが……ルチアがシュタート王国の前国王派が放ったスパイに暗殺されかけた時、その首謀者がクロードだと勘違いし、ルチアを助けた際に告白したのだった。
結局アルバートの想いは実ることなく、失恋に終わったが、今では騎士団長としてプリンセスを一生守ると誓いを立てている。
「アル、ありがとう」
すると、アルバートがふっと笑みを溢す。
「あぁ、楽しんでこいよ」
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