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ワンコ、食べちゃいます♪
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「さ、入って」
ひとり暮らしのマンションの扉を開けると、すぐ近くの電気をつけ、柚木くんを迎え入れた。
「は、はい……」
柚木くんは完全に緊張してかたまってしまって、玄関から動こうとしない。私も男の人ここに入れるの久しぶりだから、なにげに緊張してるけど。
「靴、脱がせてあげようか?」
私が柚木くんの耳元で囁くと、
「じ、自分で脱げますっ!」
柚木くんは慌てて靴を脱いだ。
1DKの部屋は玄関をあがるとすぐにキッチンになっている。
「そこ、座ってて」
柚木くんにキッチンの先のリビングにある1人座り用のカウチを指差すと、ケトルを出そうとシンクの下の戸棚を覗いた。
「今、お茶いれるねぇ。あ、コーヒーの方がいい?」
柚木くんは私の部屋を見回して落ち着きなくしていたのに、その声を聞いてハッとしたように顔を上げた。
「あっ! お茶なら僕入れますよ。
原田先輩は酔ってるんだから、座ってて下さい。水の方がいいかな……」
まだ私が酔ってると思ってるんだ……私、すっかり演技するの忘れてたのに。
素直な柚木くんに同情しつつ、悪戯心が芽生えてしまう。
「う、ん。やっぱりちょっと酔ってるかも……なんか部屋に帰ってきた途端に安心してクラクラしてきちゃった……
ねぇ、柚木くん……ベッドまで運んでくれる?」
我ながらちょっと演技し過ぎかな、って思ったけど、
「えっ! 本当ですか?
先輩、ちょっと待ってて下さいね」
柚木くんが慌てて私の元へと駆け寄った。私は柚木くんに肩を貸してもらうつもりで腕を彼の肩にまわすと、柚木くんの腕が私の背中と膝裏にまわった。
「え……」
こ、れ……お姫様抱っこ……
私の足は地面から離れ、柚木くんと私の身体が密着し、しっかりと私を抱き上げていた。
わわっ! 恥ずかしいっっ!!
背が高い私は、(それが理由なのか分からないけど)今までにお姫様抱っこしてもらった経験がなく、そんなものは都市伝説か結婚式の記念写真のための決めポーズかと思ってたので、いきなりこんな可愛い後輩ワンコにお姫様抱っこなんてされてかなり動揺していた。
「柚木、くんっ! おろして、私、重いからっ!!
だ、いじょぶ、もう歩けるからっ!!」
柚木くんは私を見下ろして、優しく微笑んだ。
「原田先輩、重くなんかないですよ。それに僕だって男なんですから、ベッドまで運ぶくらい、させて下さい」
「は、い……」
柚木くんのこと、こうやって見上げるなんて初めてかも。
今日は……たくさん、柚木くんの『初めて』の部分が見えて、ドキドキさせられっぱなし……
柚木くんの細いと思っていた腕が意外にも筋肉質で逞しいことが、私を支えている背中と膝裏から伝わってくる。間近に迫る可愛らしい顔立ちに、こんな男らしさが隠されていたなんて……
どうしよう、胸が苦しい……
柚木くんの胸に顔を埋める。彼のシャツからは、先程のバーのタバコとアルコールの匂いに混じって微かに甘い匂いがした。
柚木くんの、匂いだ……
いつも抱き締めた時にふわっと漂う、あの匂い。私はもう、柚木くんの匂いをちゃんと覚えてるんだ……
私、柚木くんのことワンコだなんて、言えないかも。
「先輩、下ろしますね……」
柚木くんが壊れ物を扱うようにそっと私をベッドへ横たえると、背中と膝裏から腕をゆっくり引き抜いた。その瞬間、柚木くんの温もりが離れていくことに寂しさを感じてしまう。
「お水、持ってきますから少し待ってて下さい」
そう言って、立ち上がろうとした柚木くんの腕を掴んで引き寄せた。
「ここに、いて……」
「原田、先輩……?」
驚いて目を見開いた柚木くんをさらにぐいっと引き寄せながら、自分も身を起こすと柚木くんに口づけた。さらに腕を柚木くんの首に絡ませると、柚木くんに体重をかけてベッドに引き込んでいく。
「は、らだ……せん、ぱい。
お水、は?」
柚木くんは動揺しながらも、私にお水を飲ませるという使命を果たそうとしていた。
「んっ、いい……」
短く答えると、柚木くんの唇にもういちど口づけた。
「今は、柚木くんが欲しいから……」
スイッチ、入った。
ひとり暮らしのマンションの扉を開けると、すぐ近くの電気をつけ、柚木くんを迎え入れた。
「は、はい……」
柚木くんは完全に緊張してかたまってしまって、玄関から動こうとしない。私も男の人ここに入れるの久しぶりだから、なにげに緊張してるけど。
「靴、脱がせてあげようか?」
私が柚木くんの耳元で囁くと、
「じ、自分で脱げますっ!」
柚木くんは慌てて靴を脱いだ。
1DKの部屋は玄関をあがるとすぐにキッチンになっている。
「そこ、座ってて」
柚木くんにキッチンの先のリビングにある1人座り用のカウチを指差すと、ケトルを出そうとシンクの下の戸棚を覗いた。
「今、お茶いれるねぇ。あ、コーヒーの方がいい?」
柚木くんは私の部屋を見回して落ち着きなくしていたのに、その声を聞いてハッとしたように顔を上げた。
「あっ! お茶なら僕入れますよ。
原田先輩は酔ってるんだから、座ってて下さい。水の方がいいかな……」
まだ私が酔ってると思ってるんだ……私、すっかり演技するの忘れてたのに。
素直な柚木くんに同情しつつ、悪戯心が芽生えてしまう。
「う、ん。やっぱりちょっと酔ってるかも……なんか部屋に帰ってきた途端に安心してクラクラしてきちゃった……
ねぇ、柚木くん……ベッドまで運んでくれる?」
我ながらちょっと演技し過ぎかな、って思ったけど、
「えっ! 本当ですか?
先輩、ちょっと待ってて下さいね」
柚木くんが慌てて私の元へと駆け寄った。私は柚木くんに肩を貸してもらうつもりで腕を彼の肩にまわすと、柚木くんの腕が私の背中と膝裏にまわった。
「え……」
こ、れ……お姫様抱っこ……
私の足は地面から離れ、柚木くんと私の身体が密着し、しっかりと私を抱き上げていた。
わわっ! 恥ずかしいっっ!!
背が高い私は、(それが理由なのか分からないけど)今までにお姫様抱っこしてもらった経験がなく、そんなものは都市伝説か結婚式の記念写真のための決めポーズかと思ってたので、いきなりこんな可愛い後輩ワンコにお姫様抱っこなんてされてかなり動揺していた。
「柚木、くんっ! おろして、私、重いからっ!!
だ、いじょぶ、もう歩けるからっ!!」
柚木くんは私を見下ろして、優しく微笑んだ。
「原田先輩、重くなんかないですよ。それに僕だって男なんですから、ベッドまで運ぶくらい、させて下さい」
「は、い……」
柚木くんのこと、こうやって見上げるなんて初めてかも。
今日は……たくさん、柚木くんの『初めて』の部分が見えて、ドキドキさせられっぱなし……
柚木くんの細いと思っていた腕が意外にも筋肉質で逞しいことが、私を支えている背中と膝裏から伝わってくる。間近に迫る可愛らしい顔立ちに、こんな男らしさが隠されていたなんて……
どうしよう、胸が苦しい……
柚木くんの胸に顔を埋める。彼のシャツからは、先程のバーのタバコとアルコールの匂いに混じって微かに甘い匂いがした。
柚木くんの、匂いだ……
いつも抱き締めた時にふわっと漂う、あの匂い。私はもう、柚木くんの匂いをちゃんと覚えてるんだ……
私、柚木くんのことワンコだなんて、言えないかも。
「先輩、下ろしますね……」
柚木くんが壊れ物を扱うようにそっと私をベッドへ横たえると、背中と膝裏から腕をゆっくり引き抜いた。その瞬間、柚木くんの温もりが離れていくことに寂しさを感じてしまう。
「お水、持ってきますから少し待ってて下さい」
そう言って、立ち上がろうとした柚木くんの腕を掴んで引き寄せた。
「ここに、いて……」
「原田、先輩……?」
驚いて目を見開いた柚木くんをさらにぐいっと引き寄せながら、自分も身を起こすと柚木くんに口づけた。さらに腕を柚木くんの首に絡ませると、柚木くんに体重をかけてベッドに引き込んでいく。
「は、らだ……せん、ぱい。
お水、は?」
柚木くんは動揺しながらも、私にお水を飲ませるという使命を果たそうとしていた。
「んっ、いい……」
短く答えると、柚木くんの唇にもういちど口づけた。
「今は、柚木くんが欲しいから……」
スイッチ、入った。
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