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アーロン様、真実をお話しします
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ミッチェルが馬車に乗り込もうとすると、追いついたアーロンがミッチェルの腕をとった。
「ハァッ、ハァッ……ミ、ミッチェル! どういうことなのか、説明してください!」
「お願いです、アーロン様……何も言わず、どうぞ離してください!
どうか、ここから逃げさせて……」
「嫌です! 話を聞かせてもらえるまで離しません!」
ふたりが押し問答をしているところに、ようやくジュリエッタも追いついた。それから、ふたりを馬車に押し込み、自分も乗り込んだ。
「ジュリエッタお姉様!!」
「ジュリエッタ、いったいなんのつもりだ!?」
ふたりが同時にジュリエッタに声を上げる。
「こんなところで言い争いをしていたら、皆の注目の的ですわ」
それから、御者に声をかける。
「馬車を出してちょうだい」
馬車がゆっくりと動き出すと、ジュリエッタは息を吐いた。
ミッチェルは逃げ出すことは諦めたものの、全身を小刻みに震わせて俯き、話をしようとしない。
そんなミッチェルに話しかけるのを諦め、アーロンがジュリエッタに顔を向けた。
「いったいどういうことなのか、説明していただきたい」
そうなるわよね……
ジュリエッタは、来るべき日が来てしまったと項垂れた。
やはり……女装のまま婚約を迎えるなんて、無理だったのだわ。
分かっていたことだったのに、いざそうなると落胆せずにはいられなかった。けれど、これ以上隠し通すことはできない。
ジュリエッタは覚悟を決めた。
「アーロン様、真実をお話しします」
ゴクリと喉を鳴らす。
「ミッチェルは……生まれた時から男性であり、私の弟です」
「ッッ!! 騙していたのか!!」
激昂するアーロンの声に、ミッチェルが肩を震わせた。ジュリエッタはなんとかこの場を収めようと、アーロンを宥めるように説明した。
「騙すつもりはなかったのです。
お聞きのとおり、ミッチェルは名門パブリックスクールに通っていたものの、そこで虐めにあい、男性としての自信を失い、自分の部屋に引きこもっていました。食事の時ですら顔を見せなかったのです。そんな彼に、私は婚約者との顔合わせだけには出てきてほしいとお願いしました。
そして……現れたのは、女装したミッチェルでした。ミッチェルは、男性として姉の婚約者に顔を合わせる勇気がなく、女装して挨拶しようと決めたのでした。
そんなミッチェルを見て、アーロン様、貴方は……彼を、婚約者だと勘違いしました。しかも、あろうことかミッチェルに一目惚れしてしまったのです」
アーロンが激しく動揺する。
「そ、それは……まさか、男が女装して現れるなど、思いもしなかったから。それに、ミッチェルはとても美しく、女性にしか見えなかった。婚約者だと思ってしまったのは、私のせいではない!」
「えぇ、もちろんですわ。すぐに、婚約者はミッチェルではなく私、ジュリエッタなのですと言わなかったこちらに非があります。私はすぐにその事実を伝えようとしたのですが……母に、口止めされまして。
それからすぐ、家族での話し合いをしました。私はミッチェルが男性だと打ち明けるべきだと主張したのですが、どうしても貴族との繋がりを持ちたかった両親、そしてアーロン様に好意を抱いているミッチェルによって退けられました。まずは、相手の出方を見てみようと説得されてしまったのです」
ジュリエッタは両親の恥を晒すようで申し訳なく思ったが、今まで嘘を吐き続けていたアーロンには誠実に話すべきだと感じていた。
「私は、アーロン様に自分こそが婚約者だと伝え、それをアーロン様が受け入れてくださることを望んでおりました。そうすれば、全て丸くおさまると思っていたのです。
けれど……アーロン様は私が婚約者だと知って、明らかに落胆されましたわね」
アーロンが罰の悪い表情を浮かべ、ジュリエッタは心の中で安堵の息を吐いた。
まぁ、これで彼にも責任の一端があったのだと思っていただければ幸いだわ。
「す、すまないジュリエッタ……」
「別に、気にしていません。確かに、あの時は深く傷つきましたが……女性である私よりも、女装とした弟の方を婚約者として選ぶだなんて、と」
アーロンがますます身を縮めた。これで、もし賠償金の訴えでも起こされた時に、少しでも有利に働きかけることができそうだと、ジュリエッタは頭を巡らせた。
「ミッチェルが病弱で子供が産めない体なのだと説明すれば、嫡男であり後継を望むアーロン様とご両親はミッチェルとの婚約を諦めるかと思っていましたのに……あろうことか、私が産むかどうかも分からない子供の養子を望んでまでも婚約を熱望されるなんて……予想外でした」
思い出すと腹が立つが、今は自分の感情を考えている時ではない。
「その後、再び家族で話し合い、私は弟が男性であることはいつか必ず分かるし、その場凌ぎのごまかしは意味がないと主張しましたが、受け入れてもらえませんでした。
私は……結局家長である父には逆らえないのです。そこで、弟をアーロン様の婚約者とすることを了承する条件として、私をお父様の後継にしてもらうことにしたのです。
そして……今までずっと、アーロン様にミッチェルが男性であることを隠し通しておりました。本当に……申し訳、ございません」
ミッチェルがようやく、少しだけ顔をあげる。
「ッッ……アーロン、様……申し訳……ッグ……ございません。
でも、私は……」
その時、馬車が停止し、御者が扉を開けた。
「このまま、家に帰らせてくれ……」
アーロンが力なく呟く。ミッチェルは眉を潜めて何か言いかけたが、唇をキュッと結び、彼を気にかけながらも馬車を降りた。
「本当に、申し訳ございません」
再度謝罪の言葉を述べるとジュリエッタも馬車を降り、御者にアーロンの自宅まで送るよう指示した。
去っていくアーロンを乗せた馬車を、ジュリエッタとミッチェルは言葉を交わすことなく見送った。
「ハァッ、ハァッ……ミ、ミッチェル! どういうことなのか、説明してください!」
「お願いです、アーロン様……何も言わず、どうぞ離してください!
どうか、ここから逃げさせて……」
「嫌です! 話を聞かせてもらえるまで離しません!」
ふたりが押し問答をしているところに、ようやくジュリエッタも追いついた。それから、ふたりを馬車に押し込み、自分も乗り込んだ。
「ジュリエッタお姉様!!」
「ジュリエッタ、いったいなんのつもりだ!?」
ふたりが同時にジュリエッタに声を上げる。
「こんなところで言い争いをしていたら、皆の注目の的ですわ」
それから、御者に声をかける。
「馬車を出してちょうだい」
馬車がゆっくりと動き出すと、ジュリエッタは息を吐いた。
ミッチェルは逃げ出すことは諦めたものの、全身を小刻みに震わせて俯き、話をしようとしない。
そんなミッチェルに話しかけるのを諦め、アーロンがジュリエッタに顔を向けた。
「いったいどういうことなのか、説明していただきたい」
そうなるわよね……
ジュリエッタは、来るべき日が来てしまったと項垂れた。
やはり……女装のまま婚約を迎えるなんて、無理だったのだわ。
分かっていたことだったのに、いざそうなると落胆せずにはいられなかった。けれど、これ以上隠し通すことはできない。
ジュリエッタは覚悟を決めた。
「アーロン様、真実をお話しします」
ゴクリと喉を鳴らす。
「ミッチェルは……生まれた時から男性であり、私の弟です」
「ッッ!! 騙していたのか!!」
激昂するアーロンの声に、ミッチェルが肩を震わせた。ジュリエッタはなんとかこの場を収めようと、アーロンを宥めるように説明した。
「騙すつもりはなかったのです。
お聞きのとおり、ミッチェルは名門パブリックスクールに通っていたものの、そこで虐めにあい、男性としての自信を失い、自分の部屋に引きこもっていました。食事の時ですら顔を見せなかったのです。そんな彼に、私は婚約者との顔合わせだけには出てきてほしいとお願いしました。
そして……現れたのは、女装したミッチェルでした。ミッチェルは、男性として姉の婚約者に顔を合わせる勇気がなく、女装して挨拶しようと決めたのでした。
そんなミッチェルを見て、アーロン様、貴方は……彼を、婚約者だと勘違いしました。しかも、あろうことかミッチェルに一目惚れしてしまったのです」
アーロンが激しく動揺する。
「そ、それは……まさか、男が女装して現れるなど、思いもしなかったから。それに、ミッチェルはとても美しく、女性にしか見えなかった。婚約者だと思ってしまったのは、私のせいではない!」
「えぇ、もちろんですわ。すぐに、婚約者はミッチェルではなく私、ジュリエッタなのですと言わなかったこちらに非があります。私はすぐにその事実を伝えようとしたのですが……母に、口止めされまして。
それからすぐ、家族での話し合いをしました。私はミッチェルが男性だと打ち明けるべきだと主張したのですが、どうしても貴族との繋がりを持ちたかった両親、そしてアーロン様に好意を抱いているミッチェルによって退けられました。まずは、相手の出方を見てみようと説得されてしまったのです」
ジュリエッタは両親の恥を晒すようで申し訳なく思ったが、今まで嘘を吐き続けていたアーロンには誠実に話すべきだと感じていた。
「私は、アーロン様に自分こそが婚約者だと伝え、それをアーロン様が受け入れてくださることを望んでおりました。そうすれば、全て丸くおさまると思っていたのです。
けれど……アーロン様は私が婚約者だと知って、明らかに落胆されましたわね」
アーロンが罰の悪い表情を浮かべ、ジュリエッタは心の中で安堵の息を吐いた。
まぁ、これで彼にも責任の一端があったのだと思っていただければ幸いだわ。
「す、すまないジュリエッタ……」
「別に、気にしていません。確かに、あの時は深く傷つきましたが……女性である私よりも、女装とした弟の方を婚約者として選ぶだなんて、と」
アーロンがますます身を縮めた。これで、もし賠償金の訴えでも起こされた時に、少しでも有利に働きかけることができそうだと、ジュリエッタは頭を巡らせた。
「ミッチェルが病弱で子供が産めない体なのだと説明すれば、嫡男であり後継を望むアーロン様とご両親はミッチェルとの婚約を諦めるかと思っていましたのに……あろうことか、私が産むかどうかも分からない子供の養子を望んでまでも婚約を熱望されるなんて……予想外でした」
思い出すと腹が立つが、今は自分の感情を考えている時ではない。
「その後、再び家族で話し合い、私は弟が男性であることはいつか必ず分かるし、その場凌ぎのごまかしは意味がないと主張しましたが、受け入れてもらえませんでした。
私は……結局家長である父には逆らえないのです。そこで、弟をアーロン様の婚約者とすることを了承する条件として、私をお父様の後継にしてもらうことにしたのです。
そして……今までずっと、アーロン様にミッチェルが男性であることを隠し通しておりました。本当に……申し訳、ございません」
ミッチェルがようやく、少しだけ顔をあげる。
「ッッ……アーロン、様……申し訳……ッグ……ございません。
でも、私は……」
その時、馬車が停止し、御者が扉を開けた。
「このまま、家に帰らせてくれ……」
アーロンが力なく呟く。ミッチェルは眉を潜めて何か言いかけたが、唇をキュッと結び、彼を気にかけながらも馬車を降りた。
「本当に、申し訳ございません」
再度謝罪の言葉を述べるとジュリエッタも馬車を降り、御者にアーロンの自宅まで送るよう指示した。
去っていくアーロンを乗せた馬車を、ジュリエッタとミッチェルは言葉を交わすことなく見送った。
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