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アーロン様のお気持ちを、ミッチェルに伝えることにしました
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ここは、なんとか穏便に帰ってもらうしかないわ。
ジュリエッタは深刻な声で、アーロンに話しかけた。
「今頃……アーロン様のご両親や結婚するはずだった方のご家族は、大変な騒ぎになってるんじゃありませんの?」
「それは……」
アーロンが、罰が悪そうに俯いた。
「こんなこと、私が言えた義理ではないですが……もし、本当にミッチェルのことを愛しているのであれば、結婚式から逃げ出すような無責任なことはせず、しっかりと相手の方と話し合いをつけてから、改めてミッチェルに会いにくるべきではないでしょうか。
そうでなければ、私としてもミッチェルと会わせるわけにはいきませんし、私の両親も同じ考えだと思いますわ」
毅然と言い放ったジュリエッタに、アーロンはすっかり落胆した。
そんな彼に対して同情の気持ちが芽生えたジュリエッタは、言葉を足した。
「まずは、相手先に誠意をもって謝罪を……その上で、アーロン様のご両親にもう一度自分の思いをお話ください。
それが例え認められなかったとしても、私はアーロン様のお気持ちを汲み、ミッチェルとの話し合いをセッティングいたします。ただ、話をするかどうかは、ミッチェルの意思に任せますので、保証はできませんが」
アーロンは両膝にのせていた拳にギュッと力を込めた。
「……ジュリエッタの言う通りだな。
僕はミッチェルに裏切られて失望したというのに、その自分が婚約者を裏切る行為をしてしまった。感情だけで暴走し、周りのことを考えずに逃げ出してしまった自分が、情けない。
婚約者や彼女のご家族、そして僕の両親に謝罪して、自分自身の正直な気持ちを伝えることにするよ」
アーロンが立ち上がった。
「突然訪問して、すまなかった。
整理をつけてから、今度はミッチェルに会いにくる」
「えぇ……」
ジュリエッタは曖昧に返事をした。
アーロンを玄関まで見送り、彼の姿が見えなくなるとドッと疲労が出てきた。
あぁ、なんとか帰っていただけたわ……
すると、アーロンが帰っていく様子を窺っていたらしいマリエンヌが、すぐにジュリエッタの元へと歩み寄ってきた。
「アーロン様、なんと仰ってたの?」
「たとえミッチェルが男性であっても愛しているということに結婚式の最中に気づき、教会から逃げ出してきて、ミッチェルに会いに来たとのことでした」
「まぁ! なんてロマンチックなんでしょ!」
ウキウキと答える呑気な母の言葉を聞き、彼女が話し合いの場にいなくて良かったとジュリエッタは思った。
「アーロン様には、まずは相手方と話し合いをして謝罪するよう勧めておきました。そうでないと、こちらにも被害が及ぶかもしれませんので。
その上で、改めてアーロン様がミッチェルに会いにくるそうです」
「まぁ、そうなの。だったら、婚約破棄しなければ良かったわねぇ」
そうではないでしょう、お母様……!!
ジュリエッタは拳をワナワナと震わせた。
その後、ジュリエッタはミッチェルの部屋へと向かい、閉ざされている扉の前に立った。
ミッチェルに、何も言わない方がいいのかもしれないけど……このままでは、ミッチェルも前に進めないわよね。
躊躇いながらも、扉の向こうに声を掛けた。
「ミッチェル……先程、アーロン様がお見えになったの」
扉の向こうで息を呑む音がした。
「……そ、れで……アーロン様は、なんと?」
ジュリエッタは弟の動揺した声を聞き、睫毛を揺らした。
ミッチェル……まだ、アーロン様のことを慕っているのね。
「実は今日、アーロン様の結婚式だったのですけれど……どうしてもあなたのことが諦められず、教会から逃げ出して、ミッチェルに会いにきたの。
そんな状況で会いに来られても困ると、帰ってもらったのだけれど……相手に謝罪し、整理がついたら、アーロン様がミッチェルと話をしたい、と」
「ッッ……」
「おそらく、相手方もアーロン様のご両親も憤慨していらっしゃるでしょうし、謝罪したところで、受け入れてもらえるかどうかは分からないわ。
アーロン様は、ご両親の画策によってミッチェルとの婚約を破棄されてしまったんですって。だから……アーロン様のご両親は、アーロン様がミッチェルに会いに行ったと知ったら……」
ジュリエッタの話の途中で、向こう側の扉がドンッと音を立てた。
「婚約破棄は……アーロン様のご意思ではなかったのですか!?」
「サインを捏造して、アーロン様には何も告げずにご両親が勝手に書状を送っていたそうよ。それからすぐに、新たな婚約者をたてて、結婚を強要されたのだとか」
「そう、だったのですか……」
ジュリエッタが扉に手を置いた。
「ミッチェル。アーロン様が、あなたのために行動しようとしているわ。あなたは、このまま部屋に引きこもっていていいの? ずっと一生、このままでいるつもり?
あなたがアーロン様と話し合いをするかどうかは、ミッチェル自身が決めればいいけれど、どちらにしても、一歩踏み出す時期ではないの?
私だって、フランツ様との結婚を控え、新たな生活が始まるわ。ミッチェルには結婚式に出席してほしいし、家族としてお祝いしてもらいたいの」
ジュリエッタの訴えに、ミッチェルが暫く沈黙した。それから、扉の向こうから小さな震える声が聞こえてきた。
「私だって……ジュリエッタお姉様の結婚をお祝いしたいし、このままでは駄目だって思っています……
アーロン様のことは愛していますが、裏切ってしまったことに、アーロン様とご両親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいで……アーロン様にお会いしていいのかという迷いもあります。
もう少し、時間をください。私も、これからのことを考えて……前へと踏み出せるようにしますから」
ミッチェルの返事を聞き、ジュリエッタが頷いた。
「分かったわ。アーロン様が必ずミッチェルに会いに来てくださる保証はないけれど、彼がそこまでの気持ちでいてくれたということだけは、伝えたかったの」
「ありがとうございます、ジュリエッタお姉様」
部屋の扉が開かれることはなかったが、ミッチェルの心の鍵が少しずつ開けられていくのをジュリエッタは感じとった。
ジュリエッタは深刻な声で、アーロンに話しかけた。
「今頃……アーロン様のご両親や結婚するはずだった方のご家族は、大変な騒ぎになってるんじゃありませんの?」
「それは……」
アーロンが、罰が悪そうに俯いた。
「こんなこと、私が言えた義理ではないですが……もし、本当にミッチェルのことを愛しているのであれば、結婚式から逃げ出すような無責任なことはせず、しっかりと相手の方と話し合いをつけてから、改めてミッチェルに会いにくるべきではないでしょうか。
そうでなければ、私としてもミッチェルと会わせるわけにはいきませんし、私の両親も同じ考えだと思いますわ」
毅然と言い放ったジュリエッタに、アーロンはすっかり落胆した。
そんな彼に対して同情の気持ちが芽生えたジュリエッタは、言葉を足した。
「まずは、相手先に誠意をもって謝罪を……その上で、アーロン様のご両親にもう一度自分の思いをお話ください。
それが例え認められなかったとしても、私はアーロン様のお気持ちを汲み、ミッチェルとの話し合いをセッティングいたします。ただ、話をするかどうかは、ミッチェルの意思に任せますので、保証はできませんが」
アーロンは両膝にのせていた拳にギュッと力を込めた。
「……ジュリエッタの言う通りだな。
僕はミッチェルに裏切られて失望したというのに、その自分が婚約者を裏切る行為をしてしまった。感情だけで暴走し、周りのことを考えずに逃げ出してしまった自分が、情けない。
婚約者や彼女のご家族、そして僕の両親に謝罪して、自分自身の正直な気持ちを伝えることにするよ」
アーロンが立ち上がった。
「突然訪問して、すまなかった。
整理をつけてから、今度はミッチェルに会いにくる」
「えぇ……」
ジュリエッタは曖昧に返事をした。
アーロンを玄関まで見送り、彼の姿が見えなくなるとドッと疲労が出てきた。
あぁ、なんとか帰っていただけたわ……
すると、アーロンが帰っていく様子を窺っていたらしいマリエンヌが、すぐにジュリエッタの元へと歩み寄ってきた。
「アーロン様、なんと仰ってたの?」
「たとえミッチェルが男性であっても愛しているということに結婚式の最中に気づき、教会から逃げ出してきて、ミッチェルに会いに来たとのことでした」
「まぁ! なんてロマンチックなんでしょ!」
ウキウキと答える呑気な母の言葉を聞き、彼女が話し合いの場にいなくて良かったとジュリエッタは思った。
「アーロン様には、まずは相手方と話し合いをして謝罪するよう勧めておきました。そうでないと、こちらにも被害が及ぶかもしれませんので。
その上で、改めてアーロン様がミッチェルに会いにくるそうです」
「まぁ、そうなの。だったら、婚約破棄しなければ良かったわねぇ」
そうではないでしょう、お母様……!!
ジュリエッタは拳をワナワナと震わせた。
その後、ジュリエッタはミッチェルの部屋へと向かい、閉ざされている扉の前に立った。
ミッチェルに、何も言わない方がいいのかもしれないけど……このままでは、ミッチェルも前に進めないわよね。
躊躇いながらも、扉の向こうに声を掛けた。
「ミッチェル……先程、アーロン様がお見えになったの」
扉の向こうで息を呑む音がした。
「……そ、れで……アーロン様は、なんと?」
ジュリエッタは弟の動揺した声を聞き、睫毛を揺らした。
ミッチェル……まだ、アーロン様のことを慕っているのね。
「実は今日、アーロン様の結婚式だったのですけれど……どうしてもあなたのことが諦められず、教会から逃げ出して、ミッチェルに会いにきたの。
そんな状況で会いに来られても困ると、帰ってもらったのだけれど……相手に謝罪し、整理がついたら、アーロン様がミッチェルと話をしたい、と」
「ッッ……」
「おそらく、相手方もアーロン様のご両親も憤慨していらっしゃるでしょうし、謝罪したところで、受け入れてもらえるかどうかは分からないわ。
アーロン様は、ご両親の画策によってミッチェルとの婚約を破棄されてしまったんですって。だから……アーロン様のご両親は、アーロン様がミッチェルに会いに行ったと知ったら……」
ジュリエッタの話の途中で、向こう側の扉がドンッと音を立てた。
「婚約破棄は……アーロン様のご意思ではなかったのですか!?」
「サインを捏造して、アーロン様には何も告げずにご両親が勝手に書状を送っていたそうよ。それからすぐに、新たな婚約者をたてて、結婚を強要されたのだとか」
「そう、だったのですか……」
ジュリエッタが扉に手を置いた。
「ミッチェル。アーロン様が、あなたのために行動しようとしているわ。あなたは、このまま部屋に引きこもっていていいの? ずっと一生、このままでいるつもり?
あなたがアーロン様と話し合いをするかどうかは、ミッチェル自身が決めればいいけれど、どちらにしても、一歩踏み出す時期ではないの?
私だって、フランツ様との結婚を控え、新たな生活が始まるわ。ミッチェルには結婚式に出席してほしいし、家族としてお祝いしてもらいたいの」
ジュリエッタの訴えに、ミッチェルが暫く沈黙した。それから、扉の向こうから小さな震える声が聞こえてきた。
「私だって……ジュリエッタお姉様の結婚をお祝いしたいし、このままでは駄目だって思っています……
アーロン様のことは愛していますが、裏切ってしまったことに、アーロン様とご両親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいで……アーロン様にお会いしていいのかという迷いもあります。
もう少し、時間をください。私も、これからのことを考えて……前へと踏み出せるようにしますから」
ミッチェルの返事を聞き、ジュリエッタが頷いた。
「分かったわ。アーロン様が必ずミッチェルに会いに来てくださる保証はないけれど、彼がそこまでの気持ちでいてくれたということだけは、伝えたかったの」
「ありがとうございます、ジュリエッタお姉様」
部屋の扉が開かれることはなかったが、ミッチェルの心の鍵が少しずつ開けられていくのをジュリエッタは感じとった。
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