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悪魔を召喚して邪魔なキャラを悪役令嬢に蹴落として、攻略キャラをゲットした結果……
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よしっ、早速この悪魔召喚アイテムカードを使ってやるわ!
カードには説明書きがされていた。
『悪魔「ベリアル」の名を呼び、「我が望みを叶えよ!」と叫べ』
ふーん、簡単じゃない。
カードを手に高く掲げ、叫んだ。
「ベリアル、我が望みを叶えよ!」
こんなんで、ほんとに悪魔なんて召喚できるのかしら。
そう思っていると、室内だというのに突風が吹き荒れ、その渦の中から悪魔が現れた。黒い肌、頭部に山羊の角、背中から大きなコウモリのような翼が生え、臀部には先の尖った尻尾がある。目つきが鋭く、真っ赤に燃えていた。顔は恐ろしいほどに美しく整っていて、妖艶な雰囲気を纏っている。
思わず圧倒され、全身が震えた。
こ、これが……悪魔。
私、本当に悪魔を呼び出しちゃったんだわ……
「さぁ、望みを」
低く艶やかな声が響き、ブルリと体が震えた。
ここはゲームの世界だから、なんでもありなんだわ。
「望みは、1つだけ?」
「1つだけですので、よく考えてお使いください」
どうしたら、面白い展開になって、アンソニーを攻略できるかしら……
「そうね……アンソニーの婚約者を悪役令嬢にさせて、彼女を地獄へと堕とした上で、私がアンソニーと結ばれるっていうのはどう?」
ベリアルがフッと笑みを浮かべた。
「アンソニーに近づいた貴女に嫉妬した婚約者ビアンカが、悪役令嬢となるシナリオですか……面白そうですね。地獄へと堕とす、とはどういう意味で仰っていますか?」
「えっ?」
そこまで考えてなかったわ……
王道の婚約破棄といったら、やっぱり毒薬かしら。
「ビアンカが私に毒薬を盛って、それによって断罪されるっていうのはどうかしら? 婚約破棄だけだなんて生温いわ。実際の留置所に送って、裁判で断罪されるの。そこまですれば、アンソニーは婚約破棄し、婚約者への思いを完全に断ち切り、私に夢中になるはずだわ」
「毒薬を盛る手前でアンソニーに止めさせるのですか? それとも、本当に毒薬を?」
ベリアルは、自分に出来ないことはないというような自信ありげな様子だった。
「本当に殺すのではなくて、一時的に死んだような状態にさせることはできるの?」
「魔界で調合した毒薬を使えば、一時的に死んだ状態にし、私の合図によって生き返らせることができます」
それを聞き、ピンときた。
それよ、それっ!
「それを使って、ビアンカに毒薬を盛らせるのよ。そして、私が死んだと思ったアンソニーが激怒し、彼女と婚約破棄をして、生き返った私と婚約するの! 感動的なストーリーじゃない!!」
「そのためには、まず……アンソニーに近づいて、彼の心を掴まないといけませんがね」
「そ、そうね……
でも私はこのゲームのヒロインなんだから、アンソニーは私のことを必ず好きになるわよね?」
ベリアルがフフッと笑った。
「乙女ゲームをやり尽くしている貴女なら、お分かりでしょう? 攻略するには、好感度をあげなければなりませんよ」
「だったら、好感度をあげてよ。悪魔だから、なんでもできるでしょう?」
「望みは1つだけと言ったはずです。それに、私は誰かを貶めたり、呪いをかけたりするための願いしか聞き入れませんので。
貴女のその望みは、1枚目の魅力度をアップするアイテムカードになります」
はぁ、自分で努力するしかないのね。
ガックリと項垂れた。
「明日、ビアンカは16歳の誕生日を迎えます。ウィンランド家では16歳になると専属の執事を持つことになっていますので、私が彼女の執事となり、悪役令嬢となるよう仕向けましょう」
「で、でもこの姿じゃ……」
絶対に悪魔だって、分かっちゃうんじゃない?
その途端、ベリアルは燕尾服を纏った執事の格好になった。黒かった肌が白くなり、角も羽も尻尾も消えている。
「いかがですか?」
「完璧……だわ」
その、あまりにも麗しい姿にクラッとしそうになったけど、いけない、いけない。こいつは悪魔なんだった。
「私は『リチャード』と名乗ることに致します。今後、お会いする機会もあるでしょうが、くれぐれも私を知っているようなそぶりをしたり、話しかけたりしませんように。契約の妨げになりますので」
「わ、分かったわ」
「では、契約を交わすにあたり、重大なことを伝えておきましょう。
悪魔と契約を交わすには、契約者にお支払いいただかねばなりません」
「いくら?」
ベリアルが鼻を鳴らした。
「お金ではありませんよ。そんなもの、悪魔にとってなんの役にも立ちませんから。
私が望むのは、魂です」
「え、魂って……」
それじゃ、死んじゃうじゃない!!
「い、嫌よ!! 魂なんてあげたら、せっかくアンソニーと結ばれたのに、すぐに死ぬことになるじゃないの!!」
「魂は、自分自身のものでなくてもよいのですが」
そうなんだ。だったら……
「じゃあ、アンソニーの婚約者の魂を契約の支払いとして差し出すわ。これで、契約できるでしょう?」
不遜にそう言い切ると、ベリアルの口角がニヤッと上がった。
「いい性格をしていますね。悪魔にスカウトしたいくらいです」
「ちょ、やめてよね! 私は、あくまで乙ゲーのヒロインなんだから!!」
「では、契約の印を……」
ベリアルの手の甲に魔法陣が浮かび上がり、私の手にも同じものが浮かび上がった。それから、フッと消えた。
「消えるんだ……」
「中に刻まれたのですよ。
もし、契約を違えることがあれば、命を失うことになりますので、お気をつけください」
ゴクリと唾を飲み込み、ベリアルを見上げる。
「それは……あなたも?」
ベリアルが優美に微笑んだ。
「えぇ。私が契約を違えるようであれば、当然私も命を失うことになります。そんな失態は、犯しませんがね」
ベリアルが身を翻した。
「では、またお会いしましょう。ご機嫌よう」
カードには説明書きがされていた。
『悪魔「ベリアル」の名を呼び、「我が望みを叶えよ!」と叫べ』
ふーん、簡単じゃない。
カードを手に高く掲げ、叫んだ。
「ベリアル、我が望みを叶えよ!」
こんなんで、ほんとに悪魔なんて召喚できるのかしら。
そう思っていると、室内だというのに突風が吹き荒れ、その渦の中から悪魔が現れた。黒い肌、頭部に山羊の角、背中から大きなコウモリのような翼が生え、臀部には先の尖った尻尾がある。目つきが鋭く、真っ赤に燃えていた。顔は恐ろしいほどに美しく整っていて、妖艶な雰囲気を纏っている。
思わず圧倒され、全身が震えた。
こ、これが……悪魔。
私、本当に悪魔を呼び出しちゃったんだわ……
「さぁ、望みを」
低く艶やかな声が響き、ブルリと体が震えた。
ここはゲームの世界だから、なんでもありなんだわ。
「望みは、1つだけ?」
「1つだけですので、よく考えてお使いください」
どうしたら、面白い展開になって、アンソニーを攻略できるかしら……
「そうね……アンソニーの婚約者を悪役令嬢にさせて、彼女を地獄へと堕とした上で、私がアンソニーと結ばれるっていうのはどう?」
ベリアルがフッと笑みを浮かべた。
「アンソニーに近づいた貴女に嫉妬した婚約者ビアンカが、悪役令嬢となるシナリオですか……面白そうですね。地獄へと堕とす、とはどういう意味で仰っていますか?」
「えっ?」
そこまで考えてなかったわ……
王道の婚約破棄といったら、やっぱり毒薬かしら。
「ビアンカが私に毒薬を盛って、それによって断罪されるっていうのはどうかしら? 婚約破棄だけだなんて生温いわ。実際の留置所に送って、裁判で断罪されるの。そこまですれば、アンソニーは婚約破棄し、婚約者への思いを完全に断ち切り、私に夢中になるはずだわ」
「毒薬を盛る手前でアンソニーに止めさせるのですか? それとも、本当に毒薬を?」
ベリアルは、自分に出来ないことはないというような自信ありげな様子だった。
「本当に殺すのではなくて、一時的に死んだような状態にさせることはできるの?」
「魔界で調合した毒薬を使えば、一時的に死んだ状態にし、私の合図によって生き返らせることができます」
それを聞き、ピンときた。
それよ、それっ!
「それを使って、ビアンカに毒薬を盛らせるのよ。そして、私が死んだと思ったアンソニーが激怒し、彼女と婚約破棄をして、生き返った私と婚約するの! 感動的なストーリーじゃない!!」
「そのためには、まず……アンソニーに近づいて、彼の心を掴まないといけませんがね」
「そ、そうね……
でも私はこのゲームのヒロインなんだから、アンソニーは私のことを必ず好きになるわよね?」
ベリアルがフフッと笑った。
「乙女ゲームをやり尽くしている貴女なら、お分かりでしょう? 攻略するには、好感度をあげなければなりませんよ」
「だったら、好感度をあげてよ。悪魔だから、なんでもできるでしょう?」
「望みは1つだけと言ったはずです。それに、私は誰かを貶めたり、呪いをかけたりするための願いしか聞き入れませんので。
貴女のその望みは、1枚目の魅力度をアップするアイテムカードになります」
はぁ、自分で努力するしかないのね。
ガックリと項垂れた。
「明日、ビアンカは16歳の誕生日を迎えます。ウィンランド家では16歳になると専属の執事を持つことになっていますので、私が彼女の執事となり、悪役令嬢となるよう仕向けましょう」
「で、でもこの姿じゃ……」
絶対に悪魔だって、分かっちゃうんじゃない?
その途端、ベリアルは燕尾服を纏った執事の格好になった。黒かった肌が白くなり、角も羽も尻尾も消えている。
「いかがですか?」
「完璧……だわ」
その、あまりにも麗しい姿にクラッとしそうになったけど、いけない、いけない。こいつは悪魔なんだった。
「私は『リチャード』と名乗ることに致します。今後、お会いする機会もあるでしょうが、くれぐれも私を知っているようなそぶりをしたり、話しかけたりしませんように。契約の妨げになりますので」
「わ、分かったわ」
「では、契約を交わすにあたり、重大なことを伝えておきましょう。
悪魔と契約を交わすには、契約者にお支払いいただかねばなりません」
「いくら?」
ベリアルが鼻を鳴らした。
「お金ではありませんよ。そんなもの、悪魔にとってなんの役にも立ちませんから。
私が望むのは、魂です」
「え、魂って……」
それじゃ、死んじゃうじゃない!!
「い、嫌よ!! 魂なんてあげたら、せっかくアンソニーと結ばれたのに、すぐに死ぬことになるじゃないの!!」
「魂は、自分自身のものでなくてもよいのですが」
そうなんだ。だったら……
「じゃあ、アンソニーの婚約者の魂を契約の支払いとして差し出すわ。これで、契約できるでしょう?」
不遜にそう言い切ると、ベリアルの口角がニヤッと上がった。
「いい性格をしていますね。悪魔にスカウトしたいくらいです」
「ちょ、やめてよね! 私は、あくまで乙ゲーのヒロインなんだから!!」
「では、契約の印を……」
ベリアルの手の甲に魔法陣が浮かび上がり、私の手にも同じものが浮かび上がった。それから、フッと消えた。
「消えるんだ……」
「中に刻まれたのですよ。
もし、契約を違えることがあれば、命を失うことになりますので、お気をつけください」
ゴクリと唾を飲み込み、ベリアルを見上げる。
「それは……あなたも?」
ベリアルが優美に微笑んだ。
「えぇ。私が契約を違えるようであれば、当然私も命を失うことになります。そんな失態は、犯しませんがね」
ベリアルが身を翻した。
「では、またお会いしましょう。ご機嫌よう」
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