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決意
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「美姫?どうかしましたか?」
グラスに手をつけず、物思いに耽っていた美姫はその声に弾かれたように顔を上げた。
「いえ、何でも……」
「美姫、私にだけは本当の貴女を見せてください、とお話しましたよね?」
秀一の端正な顔が寄せられ、間近で見つめられる。だが、あの時のように手を握ってはくれない。
秀一さんは、ズルい。
私は何も言わなくても秀一さんに心のうちを見透かされてしまう、のに……私には、秀一さんの考えを見透かすことなんて、出来ない……
「兄様達のことを考えていたのですか?」
確かに、お父様達のことも考えていた。私達の関係を隠してお父様達にウィーンで会うこと。まだあの事件のことを話せていないこと。
けれど……今、私の心の中を一番支配しているのはどうして秀一さんが、私に触れることを避けているのか。
秀一さんは、気づいている。分かっているはず、なのに……わざと、その話題を逸らそうとしている。
「美姫?」
美姫は深い溜息を吐いた。
怖い…やっぱり、無理……一番聞きたいことなのに、聞くことが出来ない……それを聞いて、秀一さんが私から離れてしまったらと思うと怖くて、言葉に出来ない。
それは、私が今...秀一さんの愛情が本当に私に向けられているのか、確信を持てない、自信が持てないから聞くことが出来ない。
だったら......秀一さんは今でも私を好きなのか、まだ愛情を持っているのか、確かめてみよう。今まで...ずっと言えなくて胸の内に秘めていた苦しい想いを吐き出してしまおう。
そうしたら、見極められるかもしれない……秀一さんが、私達の未来を見据えているのか、どうか……本当に、私のことを…愛しているのか……
それが分かれば、秀一さんが私を避けているのに何か理由があるのだと納得出来るはずだ。
美姫は決意を胸に震える指先でグラスを手に取り、乾いた口の中を潤すようにカクテルをくいっと飲んだ。
「……わかっているんです。私たちの関係が、お父様たちに知られてはいけないこと。秀一さんがそのために色々と考えてくれた事は……本当に嬉しかったんです。
でも、どうしても……後ろめたい気持ちで…罪悪感で心を覆い尽くされてしまうんです。お父様たちに申し訳なくて……それでも秀一さんを愛する気持ちは止められなくて……
苦しい…苦しいんです……考えても仕方ないことだと分かっているのに…...変えることの出来ない事実だと分かっているのに…いつも思ってしまうんです。
どうして私は、秀一さんの姪として生まれてきてしまったんだろうって……何も関係ない…ただの他人として生まれてきたかった、って……」
グラスに手をつけず、物思いに耽っていた美姫はその声に弾かれたように顔を上げた。
「いえ、何でも……」
「美姫、私にだけは本当の貴女を見せてください、とお話しましたよね?」
秀一の端正な顔が寄せられ、間近で見つめられる。だが、あの時のように手を握ってはくれない。
秀一さんは、ズルい。
私は何も言わなくても秀一さんに心のうちを見透かされてしまう、のに……私には、秀一さんの考えを見透かすことなんて、出来ない……
「兄様達のことを考えていたのですか?」
確かに、お父様達のことも考えていた。私達の関係を隠してお父様達にウィーンで会うこと。まだあの事件のことを話せていないこと。
けれど……今、私の心の中を一番支配しているのはどうして秀一さんが、私に触れることを避けているのか。
秀一さんは、気づいている。分かっているはず、なのに……わざと、その話題を逸らそうとしている。
「美姫?」
美姫は深い溜息を吐いた。
怖い…やっぱり、無理……一番聞きたいことなのに、聞くことが出来ない……それを聞いて、秀一さんが私から離れてしまったらと思うと怖くて、言葉に出来ない。
それは、私が今...秀一さんの愛情が本当に私に向けられているのか、確信を持てない、自信が持てないから聞くことが出来ない。
だったら......秀一さんは今でも私を好きなのか、まだ愛情を持っているのか、確かめてみよう。今まで...ずっと言えなくて胸の内に秘めていた苦しい想いを吐き出してしまおう。
そうしたら、見極められるかもしれない……秀一さんが、私達の未来を見据えているのか、どうか……本当に、私のことを…愛しているのか……
それが分かれば、秀一さんが私を避けているのに何か理由があるのだと納得出来るはずだ。
美姫は決意を胸に震える指先でグラスを手に取り、乾いた口の中を潤すようにカクテルをくいっと飲んだ。
「……わかっているんです。私たちの関係が、お父様たちに知られてはいけないこと。秀一さんがそのために色々と考えてくれた事は……本当に嬉しかったんです。
でも、どうしても……後ろめたい気持ちで…罪悪感で心を覆い尽くされてしまうんです。お父様たちに申し訳なくて……それでも秀一さんを愛する気持ちは止められなくて……
苦しい…苦しいんです……考えても仕方ないことだと分かっているのに…...変えることの出来ない事実だと分かっているのに…いつも思ってしまうんです。
どうして私は、秀一さんの姪として生まれてきてしまったんだろうって……何も関係ない…ただの他人として生まれてきたかった、って……」
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