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決意
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美姫はピアノの側板に少し寄りかかるようにして、斜め前から秀一の表情と指先を見つめる。曲線を滑らかになぞるような指先の動き。ピアノの曲調によって微妙に変化する秀一の美しくも切ない表情。美姫の心臓が捩られるように苦しくて、熱い。指先を見つめているだけで美姫の秘部は熱く潤み、欲情が高ぶってくるのを抑えられない。
秀一さんに触れたい……
でも……拒否、されたら?
怖い…怖くて……堪らない……
高校に入ってから二十歳の誕生日を迎える前まで、美姫は秀一に避けられていた。その時も辛くて、苦しかった。秀一への恋心をどこに持って行ったらいいのか途方に暮れ、逃げてしまった時もあった。
けれど、今は状況が違う。優しい表情と口調、繰り返される甘やかな言葉で想いが通じ合っていることを感じさせ、美姫を幸福に導きながらも触れることを躊躇い、避けるその仕草は残酷で、もっと苦しい痛みを与えられた。
もし、この関係がずっと続いていくとしたら……それは、
触れられてフラッシュバックを起こすこと。あんなに……恐怖心に支配されて、二度と体験したくない……そう、思っていたことよりも……秀一さんに触れてもらえないことは私にとって、何よりも…怖い。
この愛がなければ…私は、生きている価値を見い出せない。
美姫はそう確信すると、深い決意が心の中に満ちてきた。
秀一さんの愛情の籠もった表情や口調や言葉だけじゃ、足りない……強欲だと思われても私は……秀一さんの全てが欲しい。だから このままでは、嫌……ちゃんと、確かめたい……なぜ、私を…避けるのか……
たとえそれが、ショックを受けるような言葉でも、何も聞かされずに避けられるよりはずっと、いい……
曲が、もうすぐ終わる……
美姫はゆっくりと秀一の背後に回った。躰はフワフワしているが、心は研ぎ澄まされたように緊張している。震える指先を伸ばし、そっと秀一の背中に掌で触れ、瞼を閉じてその熱を感じる。
秀一の指が、ピアノの鍵盤から離れた。
秀一さん……
美姫は柔らかく腕を回し、背中から秀一に抱きついた。うなじからラストノートの鼻腔を擽る官能的な匂いがして、吸い込まれるように瞳を閉じた。心臓が破裂しそうにバクバクと鳴っている。
怖い…怖い……秀一さんが、どんな反応をするのか……
「……相当、酔ってしまったようですね。今夜はもう、おやすみになってはいかがですか?」
「!!!」
心臓を一突きされたような尖い痛みの後、濁った血がドクドクと流れるような鈍い痛みが広がる。絶望感が津波のように押し寄せてくる。だが、美姫はその波に呑み込まれないように必死に藻掻いた。
まだ、分からない……何も…分かっていない……
負けない……言わ、なきゃ……後悔、したくない……
朽ちていきそうな勇気を奮い立たせるように美姫は秀一に抱きついた腕にギュッと力を込め、緊張で乾き切った震える唇を彼の耳に寄せ、願いを込めて囁いた。
「秀一さん……抱いて、下さい……」
秀一さんに触れたい……
でも……拒否、されたら?
怖い…怖くて……堪らない……
高校に入ってから二十歳の誕生日を迎える前まで、美姫は秀一に避けられていた。その時も辛くて、苦しかった。秀一への恋心をどこに持って行ったらいいのか途方に暮れ、逃げてしまった時もあった。
けれど、今は状況が違う。優しい表情と口調、繰り返される甘やかな言葉で想いが通じ合っていることを感じさせ、美姫を幸福に導きながらも触れることを躊躇い、避けるその仕草は残酷で、もっと苦しい痛みを与えられた。
もし、この関係がずっと続いていくとしたら……それは、
触れられてフラッシュバックを起こすこと。あんなに……恐怖心に支配されて、二度と体験したくない……そう、思っていたことよりも……秀一さんに触れてもらえないことは私にとって、何よりも…怖い。
この愛がなければ…私は、生きている価値を見い出せない。
美姫はそう確信すると、深い決意が心の中に満ちてきた。
秀一さんの愛情の籠もった表情や口調や言葉だけじゃ、足りない……強欲だと思われても私は……秀一さんの全てが欲しい。だから このままでは、嫌……ちゃんと、確かめたい……なぜ、私を…避けるのか……
たとえそれが、ショックを受けるような言葉でも、何も聞かされずに避けられるよりはずっと、いい……
曲が、もうすぐ終わる……
美姫はゆっくりと秀一の背後に回った。躰はフワフワしているが、心は研ぎ澄まされたように緊張している。震える指先を伸ばし、そっと秀一の背中に掌で触れ、瞼を閉じてその熱を感じる。
秀一の指が、ピアノの鍵盤から離れた。
秀一さん……
美姫は柔らかく腕を回し、背中から秀一に抱きついた。うなじからラストノートの鼻腔を擽る官能的な匂いがして、吸い込まれるように瞳を閉じた。心臓が破裂しそうにバクバクと鳴っている。
怖い…怖い……秀一さんが、どんな反応をするのか……
「……相当、酔ってしまったようですね。今夜はもう、おやすみになってはいかがですか?」
「!!!」
心臓を一突きされたような尖い痛みの後、濁った血がドクドクと流れるような鈍い痛みが広がる。絶望感が津波のように押し寄せてくる。だが、美姫はその波に呑み込まれないように必死に藻掻いた。
まだ、分からない……何も…分かっていない……
負けない……言わ、なきゃ……後悔、したくない……
朽ちていきそうな勇気を奮い立たせるように美姫は秀一に抱きついた腕にギュッと力を込め、緊張で乾き切った震える唇を彼の耳に寄せ、願いを込めて囁いた。
「秀一さん……抱いて、下さい……」
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