<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

文字の大きさ
269 / 1,014
すれ違う思い

しおりを挟む
 翌日、美姫と両親は朝食をホテルで済ませた後、昨日回りきれなかったホーフブルク王宮の近くにあるマリア・テレジア広場へと向かった。

 燦然と輝く堂々としたマリア・テレジア像を中心として左右に整備された芝生と美術史美術館、自然史博物館が建っており、まずそちらを見学した後で、広場で行われているクリスマスマーケットを覗くことにした。

 美術史美術館はルーブル美術館と並び、ヨーロツパを代表する美術館と言われている。建物に入ると正面には総大理石の階段があり、高い天井には細密で美しい装飾が施されており、膨大な絵画や美術品だけでなく、建物にも圧倒された。

 あまりにも膨大な美術品のため予定よりもまわるのに時間がかかり、「世界で最も美しいカフェ」と称される2階のカフェでいったん休憩することにした。常に父と自然に距離を取り、近づくことのないように気を張っていた美姫は、そこで気を抜くことができるとこっそり安堵した。

 美姫は緑の「Mozart bomb」というケーキとメランジェを頼んだ。ケーキは上品な甘さで、美姫はすっかりウィーンのカフェのケーキの美味しさの虜になった。

「いやぁ、ドイツには何度も来ていたが、なんでもっと早くオーストリアに来なかったのかと悔やまれるな。秀一の留学していた時にでも遊びに来ればよかったなぁ、ははっ」

 誠一郎はすっかりウィーンが気に入ったようで、上機嫌にそう言った。

「うふふ、本当ですわね。いつも仕事のスケジュールに追われて、ドイツですらゆっくり観光する暇などなかったですものね」

 凛子はチーズケーキを上品にフォークで切り分けると、誠一郎に頷いた。

「あぁ、だが、これからは海外の支店は下のものに全て任せるからな。たまに海外に視察にいくことがあるかもしれんが、その時は旅行の時間をたっぷり取ることにしよう」

 誠一郎はメランジェを口すると満足そうに赤いビロードのチェアに背を預けた。

「え...お父様。今、なんて......?」

 すると誠一郎が改まったような様子で美姫を見つめた。

「実はな、ようやく海外の支社や傘下に入れている企業も体制が整ってきたので、これから私は日本を基点にして活動するつもりだ。ここまで来るのに20年も経ってしまって、美姫には今更と思われるかもしれないが、これからはもっと家族の時間を大切にしたいと考えている。
 今まで寂しい思いをさせてきて、すまなかった......」

 誠一郎の言葉に、美姫に戸惑いの気持ちが広がっていく。美姫を思う父の気持ちはもちろん嬉しかったが、なによりも先に思い浮かんだのは秀一のことだ。

 これから家族の時間が増えるとしたら、秀一さんとの関係に気付かれてしまう可能性が高くなってしまう......

 暗雲が心を占めていき、顔を俯かせた美姫を誠一郎が心配そうに覗き込んだ。

「美姫?」

 その声に弾かれたように顔を上げると、美姫は笑顔を作った。

「ご、ごめんなさい。今までのことを思い出してしまって。お父様とお母様ともっと一緒に過ごせるようになれるなんて、とても嬉しいです」

 凛子は気遣うように、美姫を優しく見つめた。

「美姫、貴女にも貴女の生活があると分かっています。大学の勉強やお友達とのお付き合いもあるでしょうし。でも、これからは時々実家に泊まったりして、家族の時間を過ごせたらと思っているんですよ」

 だい、がく......

 その言葉を聞いて、美姫の心が沈んでいった。

 大学でのフラッシュバックを機に、逃げるように退寮し、秀一とともにオーストリアに来た。

 大学には礼音はいないものの、男性恐怖症は未だ克服しておらず、以前大学でパニックを起こした際に大勢の人に来栖秀一という有名人に抱き上げられて階段を下りる姿を目撃されていたので噂にもなっているだろう。そして、大学の友人たちは美姫が長い間大学を休んでいることを訝しんでいるに違いない。

 美姫は、退寮する際に会った久美のことを思い出していた。久美は、なぜ礼音が退学になったのか美姫に問いただし、その途中で美姫はパニックを起こし、意識を失った。

 また久美に会えば、礼音のことを聞かれるかもしれない......いや、あの鬼気迫る久美の様子からして、聞きたくて仕方ないに違いない......

 美姫は、山積みになった問題を置き去りにしていただけだということを改めて気付かされた。

 大学に戻りたい気持ちはあるし、戻らなければ両親に何かあったのかと疑われてしまう。けれど、美姫は大学に戻ることに恐怖を感じ、考えるだけで足が竦んでしまっていた。

 オーストリアに来て、何もかもが前進したような気分になっていたけど、日本に戻れば何も変わらない。
 また私は、様々な問題に直面しなければならないんだ......
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

処理中です...