358 / 1,014
成人式
7
しおりを挟む
そんな美姫の気持ちなど知らない遼が、美姫に話しかけた。
「そーいや、美姫。この前せっかくクリスマスパーティーやったのにオーストラリア行ってて来られなかっただろ」
「遼ちゃん...オーストラリアじゃなくて、オーストリアだよ」
『俺、知ってんだぜ』というような得意そうな態度の遼に、美姫が思わず苦笑する。
「あ?ラがあるかないかの違いだけだろが。と、とにかく!今度なんかやる時はお前も来いよな!」
「香西くん、強引過ぎ……」
間違いを指摘されて真っ赤になる遼と、突っ込みを入れる陽子の対比がおかしてくて、思わず笑みが零れた。
遼ちゃん、強引なところはあるけど、いい人なのに……傷つけたくないな。
そんな思いが込み上がってくる。
ガチャンと音がして振り返ると、薫子がスマホを落としたようだった。
「ったく、相変わらずどんくせーな」
遼が薫子のスマホを拾い上げ、渡した。
「んじゃ、俺そろそろ行くわ。またパーティーでな!」
そして、美姫の方に向き直る。
「美姫、おまえ今度の集まりには絶対に参加しろよ!」
「う、うん……分かったよ」
「ぜっったいだかんな!!」
そう念押しすると、遼が去っていった。
嵐みたいな人だな、遼ちゃんって。
遼を目で追っていると、悠へと歩み寄っていくのが見えた。
そして、悠の隣には大和が立っていた。
やま、と……
そのまま、3人で会場を後にしてほしい……そう願っていたが、遼は悠を誘って会場を出ていき、大和はふたりに手を振った。
その後、大和も会場の外に向かっているのを見てホッとした矢先、陽子が大和に向かって手を挙げた。
「あっ、羽鳥くん!」
その声に薫子と美姫はビクリと肩を震わせた。
大和が陽子の大声に気づき、振り向いた。そこに薫子だけでなく美姫も立っているのを見て、一瞬躊躇するが、陽子の声がけに無視するわけにもいかず、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
どう、しよう……大和が、来る。
でも、ここで逃げ出すわけにはいかないよね。
「一緒に成人式出てるんだから、声ぐらい掛けてくれてもよかったのに」
人懐っこく話しかけた陽子に対し、大和は困惑しながら答えた。
「あぁ......だよ、な。ごめん」
美姫は薫子の陰に隠れるようにして立ち、顔を俯かせた。
どうか、私の存在を無視して。いないことにして……
陽子がデジカメをチラつかせた。
「ねぇ、せっかくだから一緒に写真撮らない?」
一緒、に……
美姫が小さく声を上げた。
「じゃ、私撮ってあげるよ」
振り返った陽子は、美姫が大和の元カノであることを知っているのか、罰の悪そうな顔をした。
「えと、じゃぁ...お願い出来るかな」
陽子は気まずさを誤魔化すように、明るく薫子に呼び掛けた。
「ほらほら、薫子も入って!」
「うん」
大和を真ん中にして薫子と陽子が立つ。
「両手に花ー、なんてね」
陽子が戯けて言ったが、大和は笑いもせず、カメラを持って立つ美姫をじっと見つめている。
その視線に、焦される。
「撮るよー」
合図をかけ、シャッターを切るものの、手先が狂ってブレてしまった。
「ご、ごめん...ブレちゃったみたい。もう一回、撮らせて......」
大和の顔を見ないようにして、なんとかシャッターを押した。
写真を撮り終えると、一気に緊張感が抜けた。
「はい、カメラ」
「ありがとう!」
美姫は陽子にカメラを渡すと、大和と目を合わせないよう、再び顔を俯かせた。
大和が薫子に呼びかけているのが聞こえた。
「薫子...大丈夫か?」
「うん......」
「じゃ、後でな」
大和は悠と空港に向かうので、そこで再び顔を合わせることになる。
あと、少し。
今日さえ乗り切れば、もう大和と関わることはなくなる……
美姫はギュッと拳を硬く握り締めた。
「そーいや、美姫。この前せっかくクリスマスパーティーやったのにオーストラリア行ってて来られなかっただろ」
「遼ちゃん...オーストラリアじゃなくて、オーストリアだよ」
『俺、知ってんだぜ』というような得意そうな態度の遼に、美姫が思わず苦笑する。
「あ?ラがあるかないかの違いだけだろが。と、とにかく!今度なんかやる時はお前も来いよな!」
「香西くん、強引過ぎ……」
間違いを指摘されて真っ赤になる遼と、突っ込みを入れる陽子の対比がおかしてくて、思わず笑みが零れた。
遼ちゃん、強引なところはあるけど、いい人なのに……傷つけたくないな。
そんな思いが込み上がってくる。
ガチャンと音がして振り返ると、薫子がスマホを落としたようだった。
「ったく、相変わらずどんくせーな」
遼が薫子のスマホを拾い上げ、渡した。
「んじゃ、俺そろそろ行くわ。またパーティーでな!」
そして、美姫の方に向き直る。
「美姫、おまえ今度の集まりには絶対に参加しろよ!」
「う、うん……分かったよ」
「ぜっったいだかんな!!」
そう念押しすると、遼が去っていった。
嵐みたいな人だな、遼ちゃんって。
遼を目で追っていると、悠へと歩み寄っていくのが見えた。
そして、悠の隣には大和が立っていた。
やま、と……
そのまま、3人で会場を後にしてほしい……そう願っていたが、遼は悠を誘って会場を出ていき、大和はふたりに手を振った。
その後、大和も会場の外に向かっているのを見てホッとした矢先、陽子が大和に向かって手を挙げた。
「あっ、羽鳥くん!」
その声に薫子と美姫はビクリと肩を震わせた。
大和が陽子の大声に気づき、振り向いた。そこに薫子だけでなく美姫も立っているのを見て、一瞬躊躇するが、陽子の声がけに無視するわけにもいかず、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
どう、しよう……大和が、来る。
でも、ここで逃げ出すわけにはいかないよね。
「一緒に成人式出てるんだから、声ぐらい掛けてくれてもよかったのに」
人懐っこく話しかけた陽子に対し、大和は困惑しながら答えた。
「あぁ......だよ、な。ごめん」
美姫は薫子の陰に隠れるようにして立ち、顔を俯かせた。
どうか、私の存在を無視して。いないことにして……
陽子がデジカメをチラつかせた。
「ねぇ、せっかくだから一緒に写真撮らない?」
一緒、に……
美姫が小さく声を上げた。
「じゃ、私撮ってあげるよ」
振り返った陽子は、美姫が大和の元カノであることを知っているのか、罰の悪そうな顔をした。
「えと、じゃぁ...お願い出来るかな」
陽子は気まずさを誤魔化すように、明るく薫子に呼び掛けた。
「ほらほら、薫子も入って!」
「うん」
大和を真ん中にして薫子と陽子が立つ。
「両手に花ー、なんてね」
陽子が戯けて言ったが、大和は笑いもせず、カメラを持って立つ美姫をじっと見つめている。
その視線に、焦される。
「撮るよー」
合図をかけ、シャッターを切るものの、手先が狂ってブレてしまった。
「ご、ごめん...ブレちゃったみたい。もう一回、撮らせて......」
大和の顔を見ないようにして、なんとかシャッターを押した。
写真を撮り終えると、一気に緊張感が抜けた。
「はい、カメラ」
「ありがとう!」
美姫は陽子にカメラを渡すと、大和と目を合わせないよう、再び顔を俯かせた。
大和が薫子に呼びかけているのが聞こえた。
「薫子...大丈夫か?」
「うん......」
「じゃ、後でな」
大和は悠と空港に向かうので、そこで再び顔を合わせることになる。
あと、少し。
今日さえ乗り切れば、もう大和と関わることはなくなる……
美姫はギュッと拳を硬く握り締めた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる