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悍しい記憶 ー秀一回想ー
7
それから幾日も経たないある日、義母であるあの女が私の部屋にいた。
「なに、これは?」
差し出された白い布。まだ洗う前のシーツだった。そこには、ドロッとした液体が張り付いている。
冷水を浴びせられたかのように、全身が凍りついた。
「メイドが隠れてこそこそしてるかと思ったら……まったく、汚らわしい子供。
さぁ、自分で洗いなさい!」
シーツを差し出され、無言で受け取る。
洗面所へ向かおうとする背中に、矢のような鋭い声が刺さった。
「何してるの!」
「え……洗濯、を」
小さく呟いた私に、女が鼻を鳴らした。
「舌で、舐めとりなさい」
舌、で……
絶句する私に、女が声を荒げる。
「何突っ立ってんの! 早くやりなさいよ!」
無言で女を見上げると、背中をハイヒールで蹴られた。
「ヴっ……」
思わず跪く。
「あんたがメイドに世話してもらうなんて、何様のつもり? ここに置いてやってるだけでもありがたいと思いなさいよ!」
今度は、肩にヒールの踵が食い込む。
「ック」
シーツの汚れている部分を両手で広げ、おそるおそる顔を近づける。
ペカペカに乾いた部分の上に、ドロっとした液体が覆っている。時間とともに臭気を濃くしたそこは、カルキのような強い塩素臭を放っていた。
思わず吐き気を催して顔を背けると、女の指が頭を掴み、グイと戻された。
「ちゃんと綺麗に舐めとりなさいよ」
女は近くの椅子に腰掛け、足を組んだ。
それでも躊躇っていると、女のヒールが飛んできた。
「ウッ!」
腹を押さえ、それから意を決して舌を伸ばした。
「ッグゥ……」
込み上げてくる吐き気を抑えながら、心の中で唱える。
こんなの、なんでもない。心を無にしていれば、すぐに過ぎ去ること……
そう、いつものように。
舌をシーツに這わせ、ドロリとした液体を舐め上げる。触覚、味覚を伝達する神経を殺し、ただ言われた通りにシーツのシミを舌を這わしていく。
ふと、強い視線を感じてそちらに目線を上げた。
ッッ……!!
あの女が、食い入るように私の行動を見つめている。喉が上下し、唾を嚥下する音まで聞こえてきそうだった。それは、いつもの汚いものをみるような嫌悪に満ちた眼差しとは異なっていた。
女教師やメイドの瞳の奥に揺れる欲情の炎に似た、それ。
全身に怖気が走った。
ーーあの女に、性欲の対象として見られている。
それは、暴力を振るわれることよりも怖ろしく感じた。
舐めている部分を隠すようにして躰を捻ると、すぐに女の怒声が上がった。
「何してるの! こちらを向きなさい!」
その声に、躰がビクンと震える。
幼い頃から刻まれた、この女に対しての反応。抗うことが、出来ない。
無言のまま、女を斜め下から見上げるようにして、シーツを舐める。
あの女の喉が再び、上下するのが見えた。頬が紅潮し、僅かに腰を浮かしている。
「も……もう、いいわ……」
あの女の声が上擦っている。女は、戸惑っているようにも見えた。
今まで蔑み、虐げ続けてきた夫の愛人の子供に欲情を抱く。
プライドの高いあの女は、それを認めたくない。
だが、今そのプライドは大きく揺れているようだった。
「……ヒールを、履かせてちょうだい」
私の鼓動がトクンと跳ねた。
この女が、ヒールを履かせるだけで終わるのか。それとも、更なる命令が下されるのか。
シーツを畳んで横に置くと、投げ飛ばされて床に落ちていたヒールを取り上げ、女の元へと歩く。
跪くと、女の足にヒールを履かせた。女は、一連の動作を息を呑んで見つめていた。
やがて、決意したようにゴクリと生唾を飲み込む。
「ひ、ヒールを投げつけたら汚れたわ。舐めて、綺麗にしてちょうだい」
女の中で、プライドが崩れ始めた。
前髪を掻き上げ、女を見上げる。
「はい……」
視線が合わさった途端、女の体から熱気が湧いてくるのが分かった。
女の足を両掌の上に乗せ、顔の高さまで持ち上げると顔を横向きにしてヒールを舐める。冷たくザラザラした革の感触が舌に伝わってきた。
「ッハァ……」
女が恍惚の表情を浮かべ、口から息が漏れる。もう、そこにはいつもの鬼のような形相はなく、欲情を高ぶらせた雌の姿があった。
逃げ、たい。
今すぐ、この場から逃げ出したい……
そう思うのに、私の躰はあの女の命令に背くことが出来ない。
嫌だ……嫌、だ……性的にこの女に虐げられるなんて、絶対に、嫌だ!
心の奥底から、悲鳴が響く。
「なに、これは?」
差し出された白い布。まだ洗う前のシーツだった。そこには、ドロッとした液体が張り付いている。
冷水を浴びせられたかのように、全身が凍りついた。
「メイドが隠れてこそこそしてるかと思ったら……まったく、汚らわしい子供。
さぁ、自分で洗いなさい!」
シーツを差し出され、無言で受け取る。
洗面所へ向かおうとする背中に、矢のような鋭い声が刺さった。
「何してるの!」
「え……洗濯、を」
小さく呟いた私に、女が鼻を鳴らした。
「舌で、舐めとりなさい」
舌、で……
絶句する私に、女が声を荒げる。
「何突っ立ってんの! 早くやりなさいよ!」
無言で女を見上げると、背中をハイヒールで蹴られた。
「ヴっ……」
思わず跪く。
「あんたがメイドに世話してもらうなんて、何様のつもり? ここに置いてやってるだけでもありがたいと思いなさいよ!」
今度は、肩にヒールの踵が食い込む。
「ック」
シーツの汚れている部分を両手で広げ、おそるおそる顔を近づける。
ペカペカに乾いた部分の上に、ドロっとした液体が覆っている。時間とともに臭気を濃くしたそこは、カルキのような強い塩素臭を放っていた。
思わず吐き気を催して顔を背けると、女の指が頭を掴み、グイと戻された。
「ちゃんと綺麗に舐めとりなさいよ」
女は近くの椅子に腰掛け、足を組んだ。
それでも躊躇っていると、女のヒールが飛んできた。
「ウッ!」
腹を押さえ、それから意を決して舌を伸ばした。
「ッグゥ……」
込み上げてくる吐き気を抑えながら、心の中で唱える。
こんなの、なんでもない。心を無にしていれば、すぐに過ぎ去ること……
そう、いつものように。
舌をシーツに這わせ、ドロリとした液体を舐め上げる。触覚、味覚を伝達する神経を殺し、ただ言われた通りにシーツのシミを舌を這わしていく。
ふと、強い視線を感じてそちらに目線を上げた。
ッッ……!!
あの女が、食い入るように私の行動を見つめている。喉が上下し、唾を嚥下する音まで聞こえてきそうだった。それは、いつもの汚いものをみるような嫌悪に満ちた眼差しとは異なっていた。
女教師やメイドの瞳の奥に揺れる欲情の炎に似た、それ。
全身に怖気が走った。
ーーあの女に、性欲の対象として見られている。
それは、暴力を振るわれることよりも怖ろしく感じた。
舐めている部分を隠すようにして躰を捻ると、すぐに女の怒声が上がった。
「何してるの! こちらを向きなさい!」
その声に、躰がビクンと震える。
幼い頃から刻まれた、この女に対しての反応。抗うことが、出来ない。
無言のまま、女を斜め下から見上げるようにして、シーツを舐める。
あの女の喉が再び、上下するのが見えた。頬が紅潮し、僅かに腰を浮かしている。
「も……もう、いいわ……」
あの女の声が上擦っている。女は、戸惑っているようにも見えた。
今まで蔑み、虐げ続けてきた夫の愛人の子供に欲情を抱く。
プライドの高いあの女は、それを認めたくない。
だが、今そのプライドは大きく揺れているようだった。
「……ヒールを、履かせてちょうだい」
私の鼓動がトクンと跳ねた。
この女が、ヒールを履かせるだけで終わるのか。それとも、更なる命令が下されるのか。
シーツを畳んで横に置くと、投げ飛ばされて床に落ちていたヒールを取り上げ、女の元へと歩く。
跪くと、女の足にヒールを履かせた。女は、一連の動作を息を呑んで見つめていた。
やがて、決意したようにゴクリと生唾を飲み込む。
「ひ、ヒールを投げつけたら汚れたわ。舐めて、綺麗にしてちょうだい」
女の中で、プライドが崩れ始めた。
前髪を掻き上げ、女を見上げる。
「はい……」
視線が合わさった途端、女の体から熱気が湧いてくるのが分かった。
女の足を両掌の上に乗せ、顔の高さまで持ち上げると顔を横向きにしてヒールを舐める。冷たくザラザラした革の感触が舌に伝わってきた。
「ッハァ……」
女が恍惚の表情を浮かべ、口から息が漏れる。もう、そこにはいつもの鬼のような形相はなく、欲情を高ぶらせた雌の姿があった。
逃げ、たい。
今すぐ、この場から逃げ出したい……
そう思うのに、私の躰はあの女の命令に背くことが出来ない。
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心の奥底から、悲鳴が響く。
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