430 / 1,014
密告
2
「これ……は?」
美姫は口にしながらも、先程壁越しに聞いた父の言葉が耳にこだましていた。
『無理だ……誰かに知られてしまったのだ。
お前たちは、別れるしかない』
恐らく、この中には……秀一さんと私が恋人関係であることを示すような証拠が、入っているんだ。
秀一は何も言わず、ただ目線で開けるようにと指示するだけだった。美姫はこわごわながらも茶封筒を開き、中身を取り出した。
「ッ!!」
封筒の中に入っていたのは、写真だった。
美姫が大学でパニックを起こした際に、秀一に横抱きにされて講堂から出て行く写真。秀一のマンションの地下駐車場から出て行く、車に乗ったふたりの写真。秀一の仕事の現場で寄り添い、歩いている写真。
写真を捲り、驚愕しながらも、美姫は心の中で安堵の息を吐いた。
これぐらいなら、まだなんとでも言い逃れはできる。
だが、次の写真を捲った瞬間、美姫の動きが止まる。
大勢の人々の中に立つ、二人の男女。男の腕が二人の頭をすっぽりと隠し、覆っているので、写真ではよく分からない。
けれど美姫にはそれが、大晦日のウィーンの英雄広場でのカウントダウンの際の口づけの写真だとはっきり分かった。
ウィーンにまで、つけてきていたなんて……
自分たちのいく先々に黒い影が追っていたのかと思うと、ショックだった。
だが、これは本人だけが分かるのであって、他人から見たら決して分からない。ズームされているとはいえ、ふたりは大勢のひしめき合う人々の中におり、しかも暗い。この写真から秀一の姿を見つけ出すのでさえも困難なのに、ましてや彼の腕に隠れた美姫の姿など見つけ出せるはずなどない。
いくらお父様でさえも、これが私たちだとは分からないはず……
そう思いながら、美姫は次の写真を捲る。
「ッグ」
そこには、ウィーンで滞在したホテルの最上階であるペントハウスのガラス窓に手をつき、後ろを振り返って抱きついている秀一と口づけを交わす美姫の写真があった。
そして、もう1枚。
美姫が腰を低くした姿勢で両手をつき、後ろに立つ秀一の手が美姫の腰に絡みつき、ドレスが上に捲られた状態になっている。秀一ははっきりと写っているものの、美姫は後ろを向いていたり、腰を低くして頭を項垂れているので、他人から見たら相手の女性が誰かは分からない。だが、身内である父には、秀一が抱いている女性が美姫だとはっきり分かっただろう。
しかも、父はそのホテルに滞在していたのだ。言い逃れなど、出来るはずない。
打ちのめされている美姫に、秀一が低い声で告げた。
「まだ……もう1枚、あります」
震える指で、次の写真を捲った美姫は……
「ヒッ……!!」
秀一の控室でネクタイで口を塞がれ、壁に手をつき、上半身はニットを着ているものの、捲られたスカートからははっきりと丸みを帯びた曲線が露出している。それを見せつけるようにして腰を突き出し、秀一に後ろから蹂躙される美姫の姿が写し出されていた。
こ、れを……お父様に、見られたなんて……
美姫は、目の前が真っ暗になった。
父が秀一に対して激昂し、手さえも上げたことに驚いたが、今ようやくその行動の意味が理解できた。
美姫は口にしながらも、先程壁越しに聞いた父の言葉が耳にこだましていた。
『無理だ……誰かに知られてしまったのだ。
お前たちは、別れるしかない』
恐らく、この中には……秀一さんと私が恋人関係であることを示すような証拠が、入っているんだ。
秀一は何も言わず、ただ目線で開けるようにと指示するだけだった。美姫はこわごわながらも茶封筒を開き、中身を取り出した。
「ッ!!」
封筒の中に入っていたのは、写真だった。
美姫が大学でパニックを起こした際に、秀一に横抱きにされて講堂から出て行く写真。秀一のマンションの地下駐車場から出て行く、車に乗ったふたりの写真。秀一の仕事の現場で寄り添い、歩いている写真。
写真を捲り、驚愕しながらも、美姫は心の中で安堵の息を吐いた。
これぐらいなら、まだなんとでも言い逃れはできる。
だが、次の写真を捲った瞬間、美姫の動きが止まる。
大勢の人々の中に立つ、二人の男女。男の腕が二人の頭をすっぽりと隠し、覆っているので、写真ではよく分からない。
けれど美姫にはそれが、大晦日のウィーンの英雄広場でのカウントダウンの際の口づけの写真だとはっきり分かった。
ウィーンにまで、つけてきていたなんて……
自分たちのいく先々に黒い影が追っていたのかと思うと、ショックだった。
だが、これは本人だけが分かるのであって、他人から見たら決して分からない。ズームされているとはいえ、ふたりは大勢のひしめき合う人々の中におり、しかも暗い。この写真から秀一の姿を見つけ出すのでさえも困難なのに、ましてや彼の腕に隠れた美姫の姿など見つけ出せるはずなどない。
いくらお父様でさえも、これが私たちだとは分からないはず……
そう思いながら、美姫は次の写真を捲る。
「ッグ」
そこには、ウィーンで滞在したホテルの最上階であるペントハウスのガラス窓に手をつき、後ろを振り返って抱きついている秀一と口づけを交わす美姫の写真があった。
そして、もう1枚。
美姫が腰を低くした姿勢で両手をつき、後ろに立つ秀一の手が美姫の腰に絡みつき、ドレスが上に捲られた状態になっている。秀一ははっきりと写っているものの、美姫は後ろを向いていたり、腰を低くして頭を項垂れているので、他人から見たら相手の女性が誰かは分からない。だが、身内である父には、秀一が抱いている女性が美姫だとはっきり分かっただろう。
しかも、父はそのホテルに滞在していたのだ。言い逃れなど、出来るはずない。
打ちのめされている美姫に、秀一が低い声で告げた。
「まだ……もう1枚、あります」
震える指で、次の写真を捲った美姫は……
「ヒッ……!!」
秀一の控室でネクタイで口を塞がれ、壁に手をつき、上半身はニットを着ているものの、捲られたスカートからははっきりと丸みを帯びた曲線が露出している。それを見せつけるようにして腰を突き出し、秀一に後ろから蹂躙される美姫の姿が写し出されていた。
こ、れを……お父様に、見られたなんて……
美姫は、目の前が真っ暗になった。
父が秀一に対して激昂し、手さえも上げたことに驚いたが、今ようやくその行動の意味が理解できた。
あなたにおすすめの小説
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!