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崩れゆく世界
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秀一の首にかかる美姫の指が、小刻みに震える。秀一のライトグレーの瞳が美姫を射抜き、低く重い声が落とされる。
「さぁ......私は、抵抗しませんよ。
貴女の好きなように、してください」
「ハァッ、ハァッ......」
美姫の呼吸が乱れ、蒼白になる。
「あぁ......これでは、力は込められませんね」
秀一は笑みを浮かべ、美姫の腰を抱いて反転させた。下になった秀一は、美姫の瞳を捉えたまま離さない。
「これでやりやすくなったでしょう?
女の貴女でも体重をかけて首を絞めれば、確実に殺せます」
怖ろしいほどに冷静に告げ、秀一は長い睫毛を落とすと瞼を閉じた。
私、が......秀一さんを、手に掛ける?
私が、愛しい人の息の、根を......
美姫は、自分の下で瞼を閉じている秀一を見下ろした。自分の指は未だ、秀一の首に掛かったままだ。
秀一の言う通り、全体重をかけて上から思い切り絞めれば、秀一は息の根が止まり、死ぬだろう。
「ハァッハァッ...ハァッ、ハァッ......ッグ、ウゥッ......」
美姫は、秀一の躰に覆い被さった。
秀一の睫毛はぴくりともせず、微動だにしない。全てを、美姫に預けきっている。
走馬灯のように、瞬く間にふたりの思い出が美姫の脳裏を駆け巡る。熱い感情が溢れ出し、涙が止めどなく流れ、指先の震えが全身へと伝わる。
美姫は耐え切れず、秀一の胸に倒れ込んだ。彼女の指は、秀一の首から外れていた。
「ッグ出来、ない......ウッ、ウッ秀一、さんを...ヒグッ殺すなん、てェ......ック私、には......」
「美姫......」
秀一が、美姫の髪を優しく撫で、梳いていく。
「私は、貴女と共に生きていきたい。どんな苦境にあっても、貴女さえいれば......私は、幸せでいられるのです。
心中などという馬鹿げた考えは、捨てて下さい」
「ッグ...ご、めんなさヒグッ......い...ッハァ」
美姫は、秀一の胸を涙で濡らした。
「美姫、愛しています。たとえ貴女が、この言葉を聞くのが苦しいと思っても......私は言わずにはいられない。
貴女を心の底から、愛しているのです。
私の愛は、苦しいですか? 貴女にとって、重荷ですか?」
秀一が不安げな表情を浮かべて、美姫を見上げた。それを見るとき、美姫の胸は絞られるように痛む。
美姫は涙を堪え、低くゆっくりと噛み締めるように言葉を繋いだ。
「く、るしい...です。貴方の愛は私を雁字搦めにし、重い足枷となって私を苦しめます。
でも、秀一さんと同じくらいの愛情で私は貴方を愛し、鎖で繋ぎとめ、足枷となっているのです。
私たちの愛に......未来なんて、ない」
秀一が、美姫の華奢な躰を腕の中に包み込んだ。
「未来など、なくてもいいのです。今こうして貴女がここにいることだけが、私の全てですから」
「しゅ、いちさん......ッグ、ウクッ......」
美姫は再び嗚咽を漏らし、呻いた。秀一の甘美な言葉も、美姫の心を蕩かすことはなかった。
美姫は......桃源郷が崩壊した後の、荒廃した中に佇んでいた。
死ぬことも出来ない私たちは......これから先、狂気と欲情に塗れたこの世界で......獣のように交わるしかないんだ。
ーーこれが、私たちの辿りついた、愛のカタチなんだ......
「ッフゥ......」
美姫は躰を起こし、涙に濡れた唇で秀一のそれと重ねた。
「さぁ......私は、抵抗しませんよ。
貴女の好きなように、してください」
「ハァッ、ハァッ......」
美姫の呼吸が乱れ、蒼白になる。
「あぁ......これでは、力は込められませんね」
秀一は笑みを浮かべ、美姫の腰を抱いて反転させた。下になった秀一は、美姫の瞳を捉えたまま離さない。
「これでやりやすくなったでしょう?
女の貴女でも体重をかけて首を絞めれば、確実に殺せます」
怖ろしいほどに冷静に告げ、秀一は長い睫毛を落とすと瞼を閉じた。
私、が......秀一さんを、手に掛ける?
私が、愛しい人の息の、根を......
美姫は、自分の下で瞼を閉じている秀一を見下ろした。自分の指は未だ、秀一の首に掛かったままだ。
秀一の言う通り、全体重をかけて上から思い切り絞めれば、秀一は息の根が止まり、死ぬだろう。
「ハァッハァッ...ハァッ、ハァッ......ッグ、ウゥッ......」
美姫は、秀一の躰に覆い被さった。
秀一の睫毛はぴくりともせず、微動だにしない。全てを、美姫に預けきっている。
走馬灯のように、瞬く間にふたりの思い出が美姫の脳裏を駆け巡る。熱い感情が溢れ出し、涙が止めどなく流れ、指先の震えが全身へと伝わる。
美姫は耐え切れず、秀一の胸に倒れ込んだ。彼女の指は、秀一の首から外れていた。
「ッグ出来、ない......ウッ、ウッ秀一、さんを...ヒグッ殺すなん、てェ......ック私、には......」
「美姫......」
秀一が、美姫の髪を優しく撫で、梳いていく。
「私は、貴女と共に生きていきたい。どんな苦境にあっても、貴女さえいれば......私は、幸せでいられるのです。
心中などという馬鹿げた考えは、捨てて下さい」
「ッグ...ご、めんなさヒグッ......い...ッハァ」
美姫は、秀一の胸を涙で濡らした。
「美姫、愛しています。たとえ貴女が、この言葉を聞くのが苦しいと思っても......私は言わずにはいられない。
貴女を心の底から、愛しているのです。
私の愛は、苦しいですか? 貴女にとって、重荷ですか?」
秀一が不安げな表情を浮かべて、美姫を見上げた。それを見るとき、美姫の胸は絞られるように痛む。
美姫は涙を堪え、低くゆっくりと噛み締めるように言葉を繋いだ。
「く、るしい...です。貴方の愛は私を雁字搦めにし、重い足枷となって私を苦しめます。
でも、秀一さんと同じくらいの愛情で私は貴方を愛し、鎖で繋ぎとめ、足枷となっているのです。
私たちの愛に......未来なんて、ない」
秀一が、美姫の華奢な躰を腕の中に包み込んだ。
「未来など、なくてもいいのです。今こうして貴女がここにいることだけが、私の全てですから」
「しゅ、いちさん......ッグ、ウクッ......」
美姫は再び嗚咽を漏らし、呻いた。秀一の甘美な言葉も、美姫の心を蕩かすことはなかった。
美姫は......桃源郷が崩壊した後の、荒廃した中に佇んでいた。
死ぬことも出来ない私たちは......これから先、狂気と欲情に塗れたこの世界で......獣のように交わるしかないんだ。
ーーこれが、私たちの辿りついた、愛のカタチなんだ......
「ッフゥ......」
美姫は躰を起こし、涙に濡れた唇で秀一のそれと重ねた。
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