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葛藤
2
美姫は、反論出来なかった。
秘書の仕事は好きというよりは義務として感じていたし、それが好きだと思ったことはなかった。デザインや生地を考えたり、ファッションを学ぶことは自分の好きなことだし、興味のあることだと美姫ははっきり分かる。
「せっかく与えられた大きなチャンスなんだから、挑戦してみろよ」
大和が気軽に言った。
「大和......」
「結婚して一緒に住んでんだし、大学も同じ学部なんだし、仕事でも顔を合わせる機会はあるだろうから、心配することないって。見張られてなくても、ちゃんと勉強も仕事もするから」
「そ、そんな意味で言ったんじゃないよ!」
焦ってムキになる美姫の頭を、大和は笑顔でポンポンと撫でた。
「ハハッ、分かってるって。
美姫、制服とか結婚式の衣装のデザイン見せてくれて、俺に話してた時、すげぇ楽しそうにしてたのが印象的でさ。好きなこと仕事に出来るなんて、ほんとラッキーじゃん。頑張ってみろよ」
「う、うん......」
大和に背中を押され、美姫はまだ不安な表情を見せながらも頷いた。
凛子はそんな二人を見て母親の表情を見せた後、大和に向き直ると仕事での表情に切り替えた。
「大和くんの秘書は、当面は村田さんにお願いすることにします。今の本業は学生ですしね。近いうちにもうひとり秘書を配属して、少しずつ村田さんから引き継ぎをしてもらうことにしますから」
大和に、新しい秘書がつくんだ......
美姫は、胸が痛んだ。
「その時は、男性の秘書にしてくださいね」
渋々言った美姫に、凛子と大和は微笑んだ。京香は、美姫の決意に満足そうに頷いた。
京香がふたりをソファへ座るように指示し、自らも向かいにどっかりと座ると煙草を手にした。
「あなたたちが旅行に行っている間に、衆議院議員で内閣不信任案が可決されて衆議院が解散することになったの。
これから総選挙に向けて羽鳥大蔵の議員返り咲きをかけた選挙活動が始まるわ。そこで、ふたりには応援演説してもらうから」
「はぁ!? なんで俺たちが親父の応援演説なんてしなくちゃいけねぇんだ!」
「当たり前でしょ。なんのためにあんな大きいリスク犯して、来栖財閥の婿養子にやらせたと思ってんの」
京香は、美姫と凛子の前で平然と言ってのけた。
「あなたたちも仕事と大学の両立で忙しいことは分かってるから、演説は1回だけでいいわ。それだけでも、マスコミの話題になることは確実だから。
じゃ、よろしくね」
京香は煙草を灰皿に押し付けると立ち上がり、さっさと出て行った。
秘書の仕事は好きというよりは義務として感じていたし、それが好きだと思ったことはなかった。デザインや生地を考えたり、ファッションを学ぶことは自分の好きなことだし、興味のあることだと美姫ははっきり分かる。
「せっかく与えられた大きなチャンスなんだから、挑戦してみろよ」
大和が気軽に言った。
「大和......」
「結婚して一緒に住んでんだし、大学も同じ学部なんだし、仕事でも顔を合わせる機会はあるだろうから、心配することないって。見張られてなくても、ちゃんと勉強も仕事もするから」
「そ、そんな意味で言ったんじゃないよ!」
焦ってムキになる美姫の頭を、大和は笑顔でポンポンと撫でた。
「ハハッ、分かってるって。
美姫、制服とか結婚式の衣装のデザイン見せてくれて、俺に話してた時、すげぇ楽しそうにしてたのが印象的でさ。好きなこと仕事に出来るなんて、ほんとラッキーじゃん。頑張ってみろよ」
「う、うん......」
大和に背中を押され、美姫はまだ不安な表情を見せながらも頷いた。
凛子はそんな二人を見て母親の表情を見せた後、大和に向き直ると仕事での表情に切り替えた。
「大和くんの秘書は、当面は村田さんにお願いすることにします。今の本業は学生ですしね。近いうちにもうひとり秘書を配属して、少しずつ村田さんから引き継ぎをしてもらうことにしますから」
大和に、新しい秘書がつくんだ......
美姫は、胸が痛んだ。
「その時は、男性の秘書にしてくださいね」
渋々言った美姫に、凛子と大和は微笑んだ。京香は、美姫の決意に満足そうに頷いた。
京香がふたりをソファへ座るように指示し、自らも向かいにどっかりと座ると煙草を手にした。
「あなたたちが旅行に行っている間に、衆議院議員で内閣不信任案が可決されて衆議院が解散することになったの。
これから総選挙に向けて羽鳥大蔵の議員返り咲きをかけた選挙活動が始まるわ。そこで、ふたりには応援演説してもらうから」
「はぁ!? なんで俺たちが親父の応援演説なんてしなくちゃいけねぇんだ!」
「当たり前でしょ。なんのためにあんな大きいリスク犯して、来栖財閥の婿養子にやらせたと思ってんの」
京香は、美姫と凛子の前で平然と言ってのけた。
「あなたたちも仕事と大学の両立で忙しいことは分かってるから、演説は1回だけでいいわ。それだけでも、マスコミの話題になることは確実だから。
じゃ、よろしくね」
京香は煙草を灰皿に押し付けると立ち上がり、さっさと出て行った。
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