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家族としての愛情
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だが、そんなことで引き下がる京香ではない。
「子供はね、絶対に若いうちに産んどいた方が楽なの。
大丈夫よ。産むだけ産んだら、後は家政婦とか周りの人間が世話してくれるから。
そしたら美姫さんはまた、仕事に集中すればいいんだから」
そ、んな......酷い。
美姫は反論したい気持ちでいっぱいだったが、反論すればその倍以上の言葉で返ってくることは分かっている。黙っている方が、得策だ。唇を噛み締め、嵐が過ぎ去るのをひたすら待った。
「ところであなた達、お互い忙しいって言ってたけど、セックスしてるの?」
気軽にサラッと言われ、美姫は開いた口が塞がらなかった。深刻な状況を抱えている今、そんな事情をもちろん話せるはずなどないが、もし夫婦関係が良好だったとしても話したくない。
答えない美姫を見て、京香はタバコの煙を吐き出すと、まだ半分以上残っているそれを灰皿に押し付けた。
「まぁ、いいわ。別に、排卵期が分かればいいんだから。
とりあえず、なんの問題もないのか検査に行っといて頂戴ね」
「もし...... 問題があれば、どうするつもりですか」
珍しく歯向かう姿勢を見せた美姫に、京香は顔を上げた。
「不妊ってこと? もちろん、不妊治療して、それでもダメなら代理母でも頼むしかないわね。
もし、それも出来ないなら、他の女に産ませるしかないかもね」
私、ではなく......
息子さんに問題があると分かったら、お義母様はどう仰るおつもりですか。
その言葉を呑み込み、美姫は俯いた。
京香は、ハァーッと大きく息を吐いた。
「子供は、いた方がいいわ。なるべく多く。
いなくなってしまっても、その痛みを癒してくれる存在が他にもあるように」
美姫が京香をじっと見つめると、自嘲したように笑った。
「酷い母親でしょ?
大地を殺したかもしれない男を庇って、大和を平手打ちして。あの子は私を一生許さないでしょうね。
でも、それでいいわ。どこかで生きていてくれさえいれば、それでいい。
羽鳥家の三男として生まれたのに、正義感ばかり強くて政治家に向かないあの子が来栖に拾われて、財閥の跡取りとして立派にやってるのが救いだわ」
「お義母様は、あの時わざと平手打ちしたんですよね?
大和を、守るために......」
だって、あの時のお義母様の躰は頼りないぐらい震えてた。
京香はタバコの火を灰皿に押し付けた。
「親の心、子知らずってね。私が言えた義理ではないけれど。
あの子は分かってないのよ、大瀧先生を敵に回すことの恐ろしさを。未だに色々嗅ぎ回ってるみたいだけど、探偵ごっこはやめて欲しいわね。
まぁ今日は珍しく大人しく従ってくれて、安心したけど」
美姫は返す言葉がなかった。
もう、起こってしまったのだ......
大瀧は灰龍会に指示し、美姫を拉致して大和を脅迫し、地検に訴えるための証拠を渡させた。美姫だけでなく、大和も今は大瀧の恐ろしさを嫌という程感じている。二度と、大地の死に疑問を持つような発言を表沙汰にすることはないだろう。
「えぇ......そうですね」
答えながら、美姫の心が薄暗く曇っていく。
大地を殺したかもしれない大瀧を相手に酒を酌み交わさなければならない大和は、いったいどんな思いでいるだろう......
そう考えると、早くこの会食が終わって欲しいと、大和の側にいてあげたいと思った。
「子供はね、絶対に若いうちに産んどいた方が楽なの。
大丈夫よ。産むだけ産んだら、後は家政婦とか周りの人間が世話してくれるから。
そしたら美姫さんはまた、仕事に集中すればいいんだから」
そ、んな......酷い。
美姫は反論したい気持ちでいっぱいだったが、反論すればその倍以上の言葉で返ってくることは分かっている。黙っている方が、得策だ。唇を噛み締め、嵐が過ぎ去るのをひたすら待った。
「ところであなた達、お互い忙しいって言ってたけど、セックスしてるの?」
気軽にサラッと言われ、美姫は開いた口が塞がらなかった。深刻な状況を抱えている今、そんな事情をもちろん話せるはずなどないが、もし夫婦関係が良好だったとしても話したくない。
答えない美姫を見て、京香はタバコの煙を吐き出すと、まだ半分以上残っているそれを灰皿に押し付けた。
「まぁ、いいわ。別に、排卵期が分かればいいんだから。
とりあえず、なんの問題もないのか検査に行っといて頂戴ね」
「もし...... 問題があれば、どうするつもりですか」
珍しく歯向かう姿勢を見せた美姫に、京香は顔を上げた。
「不妊ってこと? もちろん、不妊治療して、それでもダメなら代理母でも頼むしかないわね。
もし、それも出来ないなら、他の女に産ませるしかないかもね」
私、ではなく......
息子さんに問題があると分かったら、お義母様はどう仰るおつもりですか。
その言葉を呑み込み、美姫は俯いた。
京香は、ハァーッと大きく息を吐いた。
「子供は、いた方がいいわ。なるべく多く。
いなくなってしまっても、その痛みを癒してくれる存在が他にもあるように」
美姫が京香をじっと見つめると、自嘲したように笑った。
「酷い母親でしょ?
大地を殺したかもしれない男を庇って、大和を平手打ちして。あの子は私を一生許さないでしょうね。
でも、それでいいわ。どこかで生きていてくれさえいれば、それでいい。
羽鳥家の三男として生まれたのに、正義感ばかり強くて政治家に向かないあの子が来栖に拾われて、財閥の跡取りとして立派にやってるのが救いだわ」
「お義母様は、あの時わざと平手打ちしたんですよね?
大和を、守るために......」
だって、あの時のお義母様の躰は頼りないぐらい震えてた。
京香はタバコの火を灰皿に押し付けた。
「親の心、子知らずってね。私が言えた義理ではないけれど。
あの子は分かってないのよ、大瀧先生を敵に回すことの恐ろしさを。未だに色々嗅ぎ回ってるみたいだけど、探偵ごっこはやめて欲しいわね。
まぁ今日は珍しく大人しく従ってくれて、安心したけど」
美姫は返す言葉がなかった。
もう、起こってしまったのだ......
大瀧は灰龍会に指示し、美姫を拉致して大和を脅迫し、地検に訴えるための証拠を渡させた。美姫だけでなく、大和も今は大瀧の恐ろしさを嫌という程感じている。二度と、大地の死に疑問を持つような発言を表沙汰にすることはないだろう。
「えぇ......そうですね」
答えながら、美姫の心が薄暗く曇っていく。
大地を殺したかもしれない大瀧を相手に酒を酌み交わさなければならない大和は、いったいどんな思いでいるだろう......
そう考えると、早くこの会食が終わって欲しいと、大和の側にいてあげたいと思った。
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