<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

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退行

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「美姫、家に帰ろう」

 大和が優しく声をかけ、美姫の手を引いて立ち上がった。

「や、やだ!!
 だれ、このおにーちゃん? しゅーちゃん!!しゅーちゃん!!
 こわい……」

 怯えて震え、秀一に縋り付こうとする美姫。

「な、に言ってんだ、美姫……
 なんの冗談だよ」

 大和はカーッと頭に血が上り、思わず美姫の手を引っ張った。

「いた、いたいっっ!! やめてよぉー!!
 しゅーちゃ、しゅーちゃぁんっっ!! たすけてぇっ!!」
「止めて下さい」

 秀一が大和の手を制し、美姫から引き離した。

 その途端、美姫は逃げるようにして秀一の背中に隠れ、抱きついた。

「美姫……」

 ショックを受け、青褪めた顔で見つめる大和に、美姫は秀一の陰に隠れ、震えながら怯えている。その表情からはとても演技とは思えず、本当に大和が分からないのだということが伝わってきた。

 それでも、大和はその事実を信じたくなくて、秀一の陰に隠れる美姫の方へ回り込んだ。

「なぁ、嘘だろ。そんな、悪い冗談……やめてくれよ。
 早く、俺たちの家に帰ろう。な、美姫?」

 手を差し伸べるものの、美姫は泣きそうな顔でブンブンと首を大きく振った。

 大和は呆然とし、手から力が抜けた。

「しゅーちゃん……」

 美姫が小さく縮こまり、不安そうにギュッと秀一の服を掴む。

「美姫、大丈夫ですよ。ここにいますから……」

 秀一はまるで美姫を幼児のように頭を撫でて抱き締めると、真剣な表情で大和を見上げた。

「医者を、呼んでください」

 訪れた心理学専門の医師が一通りの診察とカウンセリングを終えると、静かに告げた。

「これは、退行現象ですね」
「たいこう、ですか?」

 大和の言葉に、医師は頷いた。

「『幼児退行』または、『子供返り』とも言います。
 つまり、年齢が子どもや赤ちゃんに逆戻りしたような行動をとることです。殆どの場合、本人は無意識に、そうした行為をしています。

 来栖さんは、記憶が3歳にまで遡って退行しているようです」

 大和は愕然とした。

 本当に、そんなこと……ありえんのか?

 3歳と言えば幼稚舎入学前なので、本当に美姫が退行現象で3歳以降の記憶を封じ込めてしまっているのであれば、彼女の行動は納得がいく。

 けれど、目の前で美姫の言動を見ても、医者の説明を聞いても、大和には目の前で起きていることを未だ現実として受け止められなかった。

 いい大人である美姫が、まるで幼児のように喋り、行動する様は異様な光景で、愛する人でありながらも不気味な恐ろしさすら感じてしまった。それを自然と受け入れられる秀一すら、おかしいと思ってしまった。

 大和は無邪気に秀一の首にしがみつく美姫から目を逸らし、俯いた。

「なぜ、美姫は……退行現象を突然起こしてしまったのでしょうか」

 知らない大人の会話を聞いているような表情の美姫を見つめながら、秀一は尋ねた。

「詳しい原因や脳のメカリズムは完全に解明されていませんが、それを起こした原因のひとつに現実逃避があげられています。あまりにも自分では抱えきれないほどの現実に行き詰まり、不安になった自我が自分の過去に救いを求めたのでしょう。
 退行と一言で言っても、一時避難的なものや慢性的、急性的なもの等、さまざまなタイプがあります。

 来栖さんがどの程度で、どのくらいこの状態が続くのかは分かりません。毎日カウンセリングをし、様子を見ていきましょう」

 それを聞き、大和と秀一は黙り込んだ。

 美姫を追い詰めてしまったのは、大和であり秀一だ。そして、父親の死をきっかけにして美姫の心が行き場を失くし、幸せだった幼年時代へと意識が遡ってしまったのだ。

 秀一の首にしがみついていた美姫は、気がついたように顔を上げた。

「ねぇ、しゅーちゃん! おかーさまはどこ?」
「姉様は……気分が悪いので、寝室で寝ています」

 心配そうな表情で、美姫が秀一の顔に近づいて覗き込んだ。

「おかーさま、おからだわるいの?」

 秀一が安心させるように笑みを浮かべ、美姫の頭を優しく撫でる。

「大丈夫ですよ、すぐに治ります」

 美姫がキョロキョロと周りを見回した。

「おとーさまは? おとーさまは、どこにいるの?」

 喉を突かれたように、秀一が言葉を失う。

 何も答えない秀一に痺れを切らし、美姫が立ちあがった。

「おとーさまぁ? おとーさまー、どこぉ?」

 リビングからキッチン、庭へおり、また戻ると階段へ向かう。

「み、美姫! 待ってください」

 秀一が立ち上がって追いかけるが、美姫は軽やかに階段を駆け上がった。

「おとーさまぁ? おとーさまぁ!」

 すると、寝室から青褪めた顔の凛子が出てきた。

 美姫は凛子を見ると、駆け寄った。

「あ、おかあさまぁ! おからだ、だいじょぉぶ?」

 あまりにも無邪気な美姫の様子に茫然としている母の様子に構わず、美姫は小さく「ぁ!」と言った。

「おかぁさま、おとーさまどこかしってる? しゅーちゃんにきいたのに、おしえてくれないの。
 おかーさまぁ、どこぉ?」

 首を傾げて凛子を見つめる美姫に、凛子は抱きついた。

「ウッ、ウゥッ……ウッウッ……」

 凛子の重みで二人とも膝から崩れ、床に座り込んだ。

 美姫が、抱きついて泣き崩れる凛子を覗き込む。

「おかーさま、いたいの? いたくてないてるの?
 みきが、『いたいのいたいのとんでけー』してあげる。
 いたいのいたいの、とんでけー! とおーい、とおーいおやまに、とんでけー!」
「ウッ、ウゥッ……み、きぃぃぃぃぃぃ……ウゥゥッ」

 美姫が掌で優しく、優しく凛子の頭を撫でた。

「もぉ、だいじょーぶよ。いたいのいたいの、とんでったよ」

 遠くから二人を見つめる秀一が俯き、肩を大きく震わせた。
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