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頼りになる会社の先輩に告白したら、彼のお母さんからお返事もらいました
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「吉中、まだ残業してたのか?」
声を掛けられて振り向くと、沢尻さんが営業から戻ってきたところだった。
「はい。明日までに提出しないといけない見積書が終わってなくて……」
「ちょっと見せて」
沢尻さんに軽く肩を触れられ、席をどく。
代わりに座った沢尻さんが、私の温もりが残ってる椅子に座り、パソコンにカタカタと指を向かわせる。
は、はや……
画面を見ていると、あっという間にデータが打ち込まれ、仕上がっていく。
ものの10分も経たないうちに作業を終えると、沢尻さんが振り向いた。
「これ、課長にデータ飛ばしとけばいい?」
「あ、はい……お願い、します」
沢尻さんがマウスをクリックすると、立ち上がった。
「吉中、仕事が溜まってる時はひとりで抱え込まずに、みんなに助けを求めればいいんだからな」
「沢尻さん、ありがとうございます」
「おー、おつかれ」
爽やかな笑顔をみせられて、心臓がドクンと波打った。
こんなの、反則だよ……好きになっちゃうに、決まってるじゃん。
沢尻さんは5つ上の先輩で、営業を担当してる。私は今年入った新人で、営業事務をしてるんだけど、まだ商品のことや仕様が分からない私に、沢尻さんは仕事が忙しい中でも嫌な顔ひとつせずに教えてくれる。
学生時代はラグビーをやっていたらしく、背が高くてがっしりしていて、精悍な顔付きとマッチしてる。それに性格も男らしくて面倒見がよく、同性からも慕われてる。
それなのに……噂では、今まで誰とも付き合ったことがないらしい。そんな意外な面にも、キュンとする。
きっと、学生のうちはラグビー一筋で、入社してからは仕事に情熱を傾けてたせいで、女性と付き合うとか考えられなかったんだろうな。
もし……私が、沢尻さんの初めての彼女になれたら、嬉しいのに。
そんなある日、チャンスが訪れた。あの日と同じように、私が残業していると、沢尻さんが営業から帰ってきた。
課長もさっき帰ったばっかりだし、他には誰も残っていなかった。
「なんだー、また残業してんのか」
沢尻さんがそう声を掛けると、私の机に缶コーヒーを置いた。
「さ、沢尻さんっっ!!」
「ん、なんだ?」
私は立ち上がると、背の高い沢尻さんを見上げた。
もし、断られたら……気まずくなるけど、それでもこのチャンスを逃したくない!!
「わ、私……沢尻さんのことが好きなんです!
そ、その……もし良かったら、彼女にしてもらえませんか?」
すると、沢尻さんが顔を赤らめ、頭をかいた。
「そ、その……考えさせてくれないか。すぐには、決められないから」
男らしい沢尻さんならすぐに答えてくれると期待してたけど、そりゃそうだよね。社内恋愛となれば、色々考えちゃうよね。
「は、はいっっ。もちろんです!! 返事は急ぎませんので!!
では、失礼します。おつかれさまでした!」
恥ずかしくなって、逃げるように帰っていった。
それから1週間が経ち、沢尻さんは私からの告白などなかったかのように接していた。
返事、いつくれるつもりなんだろう……
ダメならダメで、早く言ってくれないと、気になって仕事が手につかないよ。
ハァ、と溜息を吐きながら仕事を終えて会社を出ると、上品な雰囲気の年配の女性に声を掛けられた。
「すみません。貴女が、吉中加奈子さんですね?」
「えぇ、そうですが……」
なんでこの人、私の名前知ってるんだろ……
「私、沢尻直人の母です」
「ぇ……沢尻さんの、お母様ですか!?
あ、あの……いつも、お世話になっております」
どうして、沢尻さんのお母さんが会いにきたの?
不安に思ってると、声をかけられた。
「こんなところでは何ですので、場所を変えませんか?」
「は、はい……」
カフェに入り、沢尻さんのお母さんと向かい合って座る。
いったい、なんなのこの状況。
「吉中さん、先日うちの息子にお付き合いを申し込んだとか?」
「え!? あ、はい……」
まさかとは思ってたけど……普通、あの年で告白されたとか母親に言う?
「直人に相談されてから、貴女の様子を1週間見させてもらったんですが……」
「えっ!?」
様子を、見させてもらった!?
「それで……まぁ、良家のお嬢さんではないですけど、まぁ特に問題はないようですし、直人もそろそろお付き合いを経験して、結婚のことを考えなくてはいけない年齢ですので……お付き合いを受けさせていただきます」
これって……告白の返事ってこと!?
なんで私、沢尻さんのお母さんから聞かなきゃいけないわけ!?
沢尻さんのお母さんが、じっと私を見つめた。
「ただし……結婚するまでは、清い交際をお願いしますね。授かり婚なんてことになったら、世間に顔向けできませんから」
なっ……なんで、まだ付き合ってもないのに、そこまで言われなくちゃいけないのよ!!
「……せっかくのお返事ですが、遠慮させていただきます」
「何ですって!? 告白してきたのは、貴女の方でしょう?」
「えぇ、ですが……沢尻さんが、こんなマザコンだったなんて知りませんでしたから。
こんな、告白の返事も自分で出来ないような人とのお付き合いなんて、お断りします!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
その言葉を無視して席を立ち上がると、レシートを手に取り、去っていった。
沢尻さんがなんで今まで誰とも付き合ったことがなかったのか、これで分かったわ……まさか、あんなマザコンだったなんて。
後日、沢尻さんから呼び出されて「付き合ってほしい」って言われたけど、たぶんそれもお母さんからの指示に違いない。
丁重にお断りしといた。
あぁ、もう……あんな人だったなんて、思わなかった!!
声を掛けられて振り向くと、沢尻さんが営業から戻ってきたところだった。
「はい。明日までに提出しないといけない見積書が終わってなくて……」
「ちょっと見せて」
沢尻さんに軽く肩を触れられ、席をどく。
代わりに座った沢尻さんが、私の温もりが残ってる椅子に座り、パソコンにカタカタと指を向かわせる。
は、はや……
画面を見ていると、あっという間にデータが打ち込まれ、仕上がっていく。
ものの10分も経たないうちに作業を終えると、沢尻さんが振り向いた。
「これ、課長にデータ飛ばしとけばいい?」
「あ、はい……お願い、します」
沢尻さんがマウスをクリックすると、立ち上がった。
「吉中、仕事が溜まってる時はひとりで抱え込まずに、みんなに助けを求めればいいんだからな」
「沢尻さん、ありがとうございます」
「おー、おつかれ」
爽やかな笑顔をみせられて、心臓がドクンと波打った。
こんなの、反則だよ……好きになっちゃうに、決まってるじゃん。
沢尻さんは5つ上の先輩で、営業を担当してる。私は今年入った新人で、営業事務をしてるんだけど、まだ商品のことや仕様が分からない私に、沢尻さんは仕事が忙しい中でも嫌な顔ひとつせずに教えてくれる。
学生時代はラグビーをやっていたらしく、背が高くてがっしりしていて、精悍な顔付きとマッチしてる。それに性格も男らしくて面倒見がよく、同性からも慕われてる。
それなのに……噂では、今まで誰とも付き合ったことがないらしい。そんな意外な面にも、キュンとする。
きっと、学生のうちはラグビー一筋で、入社してからは仕事に情熱を傾けてたせいで、女性と付き合うとか考えられなかったんだろうな。
もし……私が、沢尻さんの初めての彼女になれたら、嬉しいのに。
そんなある日、チャンスが訪れた。あの日と同じように、私が残業していると、沢尻さんが営業から帰ってきた。
課長もさっき帰ったばっかりだし、他には誰も残っていなかった。
「なんだー、また残業してんのか」
沢尻さんがそう声を掛けると、私の机に缶コーヒーを置いた。
「さ、沢尻さんっっ!!」
「ん、なんだ?」
私は立ち上がると、背の高い沢尻さんを見上げた。
もし、断られたら……気まずくなるけど、それでもこのチャンスを逃したくない!!
「わ、私……沢尻さんのことが好きなんです!
そ、その……もし良かったら、彼女にしてもらえませんか?」
すると、沢尻さんが顔を赤らめ、頭をかいた。
「そ、その……考えさせてくれないか。すぐには、決められないから」
男らしい沢尻さんならすぐに答えてくれると期待してたけど、そりゃそうだよね。社内恋愛となれば、色々考えちゃうよね。
「は、はいっっ。もちろんです!! 返事は急ぎませんので!!
では、失礼します。おつかれさまでした!」
恥ずかしくなって、逃げるように帰っていった。
それから1週間が経ち、沢尻さんは私からの告白などなかったかのように接していた。
返事、いつくれるつもりなんだろう……
ダメならダメで、早く言ってくれないと、気になって仕事が手につかないよ。
ハァ、と溜息を吐きながら仕事を終えて会社を出ると、上品な雰囲気の年配の女性に声を掛けられた。
「すみません。貴女が、吉中加奈子さんですね?」
「えぇ、そうですが……」
なんでこの人、私の名前知ってるんだろ……
「私、沢尻直人の母です」
「ぇ……沢尻さんの、お母様ですか!?
あ、あの……いつも、お世話になっております」
どうして、沢尻さんのお母さんが会いにきたの?
不安に思ってると、声をかけられた。
「こんなところでは何ですので、場所を変えませんか?」
「は、はい……」
カフェに入り、沢尻さんのお母さんと向かい合って座る。
いったい、なんなのこの状況。
「吉中さん、先日うちの息子にお付き合いを申し込んだとか?」
「え!? あ、はい……」
まさかとは思ってたけど……普通、あの年で告白されたとか母親に言う?
「直人に相談されてから、貴女の様子を1週間見させてもらったんですが……」
「えっ!?」
様子を、見させてもらった!?
「それで……まぁ、良家のお嬢さんではないですけど、まぁ特に問題はないようですし、直人もそろそろお付き合いを経験して、結婚のことを考えなくてはいけない年齢ですので……お付き合いを受けさせていただきます」
これって……告白の返事ってこと!?
なんで私、沢尻さんのお母さんから聞かなきゃいけないわけ!?
沢尻さんのお母さんが、じっと私を見つめた。
「ただし……結婚するまでは、清い交際をお願いしますね。授かり婚なんてことになったら、世間に顔向けできませんから」
なっ……なんで、まだ付き合ってもないのに、そこまで言われなくちゃいけないのよ!!
「……せっかくのお返事ですが、遠慮させていただきます」
「何ですって!? 告白してきたのは、貴女の方でしょう?」
「えぇ、ですが……沢尻さんが、こんなマザコンだったなんて知りませんでしたから。
こんな、告白の返事も自分で出来ないような人とのお付き合いなんて、お断りします!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
その言葉を無視して席を立ち上がると、レシートを手に取り、去っていった。
沢尻さんがなんで今まで誰とも付き合ったことがなかったのか、これで分かったわ……まさか、あんなマザコンだったなんて。
後日、沢尻さんから呼び出されて「付き合ってほしい」って言われたけど、たぶんそれもお母さんからの指示に違いない。
丁重にお断りしといた。
あぁ、もう……あんな人だったなんて、思わなかった!!
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