27 / 37
第27話
(泰輝の言う通り、妊娠のことを言うべきなのだろうか?)
そんな考えが頭をぐるぐる回り、俺は目の前の歩夢の表情を無意識に伺っていた。
けれど、俺があまりにもじっと見つめてしまっていたのか、歩夢が不思議そうに声をかけてきた。
「裕貴、どうしたの?」
「えっ、いや?何でもないよ。」
「あやしいな、本当に?」
「ほんとほんと、大丈夫。」
「ふーん。」
歩夢は疑うように俺をじっと見つめた後、ふっと微笑んだ。その笑顔がなんだか余計に胸を締め付けて、言葉が詰まった。
「ねぇ、先輩。やっぱ何か隠してるよね?」
歩夢の声が少し低くなり、その真剣な響きに思わず肩が跳ねた。
「な、何も隠してないよ。」
慌てて否定するものの、視線は泳ぎ、言葉に自信がなかった。
「先輩、嘘つくの下手だよ。」
歩夢は俺の顔をじっと見つめる。その目が鋭くも優しくて、逃げ道をふさがれるようだった。
「俺、先輩のこと大事だからさ。何かあったらちゃんと言ってほしい。」
その一言に胸が痛くなる。歩夢のまっすぐな気持ちが伝わるほど、自分が黙っていることが罪のように感じた。だけど、言えるはずがない。
「本当に何でもないってば。」
かろうじて搾り出した声は震えていた。
歩夢は少し眉をひそめたけれど、それ以上追及はしてこなかった。ただ、ゆっくりと俺の手を取って握りしめる。
「……わかった。でも、先輩が話したくなったときは、ちゃんと聞くから。それだけは覚えておいて。」
温かい手の感触に、胸がぎゅっと締め付けられる。話したい気持ちと話せない現実の間で揺れる俺は、ただうなずくことしかできなかった。
裕貴はそわそわと落ち着かない気持ちを紛らわすように台所に向かった。冷蔵庫を開けて食材を取り出し、手早く準備を始める。包丁を握る手元に集中しようとするが、どうしても頭の片隅には歩夢の顔が浮かんでしまう。
「はぁ……」
自然とため息が漏れる。
そのときだった。不意に背後から温かい気配を感じ、次の瞬間、歩夢の腕が後ろからしっかりと裕貴の体を包み込んでいた。
「えっ!?歩夢くん!?」
驚いて声を上げる裕貴の耳元で、低く甘い声が囁かれる。
「先輩、最近ため息ばっかりついてるね。俺のこと、そんなに気になる?」
耳元に息がかかるその感触に、裕貴は思わず肩をすくめた。火が点いたままだったことに気づき、慌てて手を伸ばそうとするが、その手を歩夢がそっと止める。
「火は消すから大丈夫。それより、先輩が危ないんだよ。」
歩夢がさっと火を止めると、そのまま腕を強く締め、裕貴を逃がさないようにした。
「な、何言ってるの!?料理中だってば!」
裕貴は必死に抵抗するが、歩夢の腕の中で動けなくなってしまう。
「俺ね、先輩がこうやって動揺してる顔、大好きなんだよ。」
歩夢の手がゆっくりと裕貴のシャツの裾に忍び込み、素肌をなぞる。その冷たい指先に思わず息が詰まる裕貴。
「や、やめてってば、歩夢くん……!」
裕貴の声は震えていて、もはや説得力がない。それを分かっているのか、歩夢はさらに手を滑らせ、腰から背中へ、そして腹部へと動かしていく。
「先輩、俺だけのものなんだよね?ねぇ、他の誰にも触れさせたくない。」
そう言いながら、歩夢の手はさらに下へと伸び、裕貴の下着の中に侵入する。指先が肌に触れるその瞬間、裕貴の全身が震えた。
「ちょ、ちょっと!ほんとにやめて……!」
裕貴の抗議は力を失い、声が裏返る。歩夢は耳元でさらに甘い声を囁く。
「先輩が可愛いから悪いんだよ。俺、もっと先輩を感じたい。」
その一言に裕貴は顔を真っ赤にし、背中を反らせるように反応してしまう。全身が熱くなり、抵抗する力さえ湧いてこない。
「……歩夢くんの馬鹿……」
ようやく出たその言葉に、歩夢は微笑んだ。首筋に優しく唇を押し当て、囁く。
「先輩、俺だけを見てよ。俺だけのものなんだから。」
裕貴の全身がビクンと震え、ただ歩夢の腕の中でじっとしていた。
「ねぇ、先輩キスしていい?」
歩夢は俺の頬を掴むと、何も言わずに顔を近づけてきた。その動きに気づいた瞬間、心臓が喉元まで跳ね上がる。
「……えっ、ちょ、歩夢く――」
言いかけた俺の言葉は、歩夢の唇に塞がれた。
突然のキスに頭が真っ白になる。柔らかくて温かい感触が、俺の唇をしっかりと捕まえて離さない。抵抗しようと思っても、彼の手がそっと俺の頬を包んでいて、逃げることもできなかった。
それどころか、歩夢の優しいけれど強い気持ちがそのキスから伝わってきて、俺はただその場で固まるしかなかった。
時間が止まったように感じる。実際には数秒だったのかもしれないけれど、俺には永遠のように長く感じられた。
ようやく歩夢が唇を離すと、彼の瞳が俺をじっと見つめていた。言葉なんていらない。歩夢の瞳には、すべてが詰まっていた。
「……なんで、いきなり……」
俺が消えそうな声で問いかけると、歩夢は軽く笑った。
「先輩が、可愛すぎるから。」
その言葉に胸がズキンと痛む。こんな風に真っ直ぐ向けられる気持ちが、眩しくてどうしようもない。
「ずるいよ……そんなの……」
顔を真っ赤にしながら俯く俺を、歩夢はそっと抱きしめた。彼の体温がじんわりと伝わってきて、どうしようもなく安心すると同時に、胸がまた締め付けられるように苦しくなった。
「先輩、俺、本当に先輩のことが好きだから。」
その一言に、俺はまた何も言えなくなる。ただ抱きしめられながら、歩夢の鼓動を感じていた。
そんな考えが頭をぐるぐる回り、俺は目の前の歩夢の表情を無意識に伺っていた。
けれど、俺があまりにもじっと見つめてしまっていたのか、歩夢が不思議そうに声をかけてきた。
「裕貴、どうしたの?」
「えっ、いや?何でもないよ。」
「あやしいな、本当に?」
「ほんとほんと、大丈夫。」
「ふーん。」
歩夢は疑うように俺をじっと見つめた後、ふっと微笑んだ。その笑顔がなんだか余計に胸を締め付けて、言葉が詰まった。
「ねぇ、先輩。やっぱ何か隠してるよね?」
歩夢の声が少し低くなり、その真剣な響きに思わず肩が跳ねた。
「な、何も隠してないよ。」
慌てて否定するものの、視線は泳ぎ、言葉に自信がなかった。
「先輩、嘘つくの下手だよ。」
歩夢は俺の顔をじっと見つめる。その目が鋭くも優しくて、逃げ道をふさがれるようだった。
「俺、先輩のこと大事だからさ。何かあったらちゃんと言ってほしい。」
その一言に胸が痛くなる。歩夢のまっすぐな気持ちが伝わるほど、自分が黙っていることが罪のように感じた。だけど、言えるはずがない。
「本当に何でもないってば。」
かろうじて搾り出した声は震えていた。
歩夢は少し眉をひそめたけれど、それ以上追及はしてこなかった。ただ、ゆっくりと俺の手を取って握りしめる。
「……わかった。でも、先輩が話したくなったときは、ちゃんと聞くから。それだけは覚えておいて。」
温かい手の感触に、胸がぎゅっと締め付けられる。話したい気持ちと話せない現実の間で揺れる俺は、ただうなずくことしかできなかった。
裕貴はそわそわと落ち着かない気持ちを紛らわすように台所に向かった。冷蔵庫を開けて食材を取り出し、手早く準備を始める。包丁を握る手元に集中しようとするが、どうしても頭の片隅には歩夢の顔が浮かんでしまう。
「はぁ……」
自然とため息が漏れる。
そのときだった。不意に背後から温かい気配を感じ、次の瞬間、歩夢の腕が後ろからしっかりと裕貴の体を包み込んでいた。
「えっ!?歩夢くん!?」
驚いて声を上げる裕貴の耳元で、低く甘い声が囁かれる。
「先輩、最近ため息ばっかりついてるね。俺のこと、そんなに気になる?」
耳元に息がかかるその感触に、裕貴は思わず肩をすくめた。火が点いたままだったことに気づき、慌てて手を伸ばそうとするが、その手を歩夢がそっと止める。
「火は消すから大丈夫。それより、先輩が危ないんだよ。」
歩夢がさっと火を止めると、そのまま腕を強く締め、裕貴を逃がさないようにした。
「な、何言ってるの!?料理中だってば!」
裕貴は必死に抵抗するが、歩夢の腕の中で動けなくなってしまう。
「俺ね、先輩がこうやって動揺してる顔、大好きなんだよ。」
歩夢の手がゆっくりと裕貴のシャツの裾に忍び込み、素肌をなぞる。その冷たい指先に思わず息が詰まる裕貴。
「や、やめてってば、歩夢くん……!」
裕貴の声は震えていて、もはや説得力がない。それを分かっているのか、歩夢はさらに手を滑らせ、腰から背中へ、そして腹部へと動かしていく。
「先輩、俺だけのものなんだよね?ねぇ、他の誰にも触れさせたくない。」
そう言いながら、歩夢の手はさらに下へと伸び、裕貴の下着の中に侵入する。指先が肌に触れるその瞬間、裕貴の全身が震えた。
「ちょ、ちょっと!ほんとにやめて……!」
裕貴の抗議は力を失い、声が裏返る。歩夢は耳元でさらに甘い声を囁く。
「先輩が可愛いから悪いんだよ。俺、もっと先輩を感じたい。」
その一言に裕貴は顔を真っ赤にし、背中を反らせるように反応してしまう。全身が熱くなり、抵抗する力さえ湧いてこない。
「……歩夢くんの馬鹿……」
ようやく出たその言葉に、歩夢は微笑んだ。首筋に優しく唇を押し当て、囁く。
「先輩、俺だけを見てよ。俺だけのものなんだから。」
裕貴の全身がビクンと震え、ただ歩夢の腕の中でじっとしていた。
「ねぇ、先輩キスしていい?」
歩夢は俺の頬を掴むと、何も言わずに顔を近づけてきた。その動きに気づいた瞬間、心臓が喉元まで跳ね上がる。
「……えっ、ちょ、歩夢く――」
言いかけた俺の言葉は、歩夢の唇に塞がれた。
突然のキスに頭が真っ白になる。柔らかくて温かい感触が、俺の唇をしっかりと捕まえて離さない。抵抗しようと思っても、彼の手がそっと俺の頬を包んでいて、逃げることもできなかった。
それどころか、歩夢の優しいけれど強い気持ちがそのキスから伝わってきて、俺はただその場で固まるしかなかった。
時間が止まったように感じる。実際には数秒だったのかもしれないけれど、俺には永遠のように長く感じられた。
ようやく歩夢が唇を離すと、彼の瞳が俺をじっと見つめていた。言葉なんていらない。歩夢の瞳には、すべてが詰まっていた。
「……なんで、いきなり……」
俺が消えそうな声で問いかけると、歩夢は軽く笑った。
「先輩が、可愛すぎるから。」
その言葉に胸がズキンと痛む。こんな風に真っ直ぐ向けられる気持ちが、眩しくてどうしようもない。
「ずるいよ……そんなの……」
顔を真っ赤にしながら俯く俺を、歩夢はそっと抱きしめた。彼の体温がじんわりと伝わってきて、どうしようもなく安心すると同時に、胸がまた締め付けられるように苦しくなった。
「先輩、俺、本当に先輩のことが好きだから。」
その一言に、俺はまた何も言えなくなる。ただ抱きしめられながら、歩夢の鼓動を感じていた。
あなたにおすすめの小説
溺愛アルファの完璧なる巣作り
夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です)
ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。
抱き上げて、すぐに気づいた。
これは僕のオメガだ、と。
ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。
やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。
こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定)
※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。
話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。
クラウス×エミールのスピンオフあります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
妖艶幽玄絵巻
樹々
BL
舞台は江戸風味。
人を嫌い、人から離れて生きていた紫藤蘭丸は、倒れていた侍・清次郎を気まぐれに拾う。
すぐに帰すつもりだったけれど。
清次郎の真っ直ぐな青い瞳に惹かれ、その心に惹かれ。
人に惹かれていく。
霊媒師・紫藤蘭丸と、彼に拾われた貧乏侍・清次郎の。
和風ファンタジー物語。
物語はここから始まる。
*大人度高め。着物度高め。
*この物語は昔の日本の世界をベースにした、和風BLファンタジーです。歴史小説のような難しい話ではありません。また、この物語は大人描写が所々に出てきます。戦闘シーンもあります。苦手な方はご注意を。*以前、ポケクリというサイトで【第二回ポケスペ小説大賞BL賞受賞作品】を受賞した作品です。
クローゼットは宝箱
織緒こん
BL
てんつぶさん主催、オメガの巣作りアンソロジー参加作品です。
初めてのオメガバースです。
前後編8000文字強のSS。
◇ ◇ ◇
番であるオメガの穣太郎のヒートに合わせて休暇をもぎ取ったアルファの将臣。ほんの少し帰宅が遅れた彼を出迎えたのは、溢れかえるフェロモンの香気とクローゼットに籠城する番だった。狭いクローゼットに隠れるように巣作りする穣太郎を見つけて、出会ってから想いを通じ合わせるまでの数年間を思い出す。
美しく有能で、努力によってアルファと同等の能力を得た穣太郎。正気のときは決して甘えない彼が、ヒート期間中は将臣だけにぐずぐずに溺れる……。
年下わんこアルファ×年上美人オメガ。
すれ違い夫夫は発情期にしか素直になれない
和泉臨音
BL
とある事件をきっかけに大好きなユーグリッドと結婚したレオンだったが、番になった日以来、発情期ですらベッドを共にすることはなかった。ユーグリッドに避けられるのは寂しいが不満はなく、これ以上重荷にならないよう、レオンは受けた恩を返すべく日々の仕事に邁進する。一方、レオンに軽蔑され嫌われていると思っているユーグリッドはなるべくレオンの視界に、記憶に残らないようにレオンを避け続けているのだった。
お互いに嫌われていると誤解して、すれ違う番の話。
===================
美形侯爵長男α×平凡平民Ω。本編24話完結。それ以降は番外編です。
オメガバース設定ですが独自設定もあるのでこの世界のオメガバースはそうなんだな、と思っていただければ。
落ちこぼれβの恋の諦め方
めろめろす
BL
αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。
努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。
世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。
失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。
しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。
あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?
コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。
小説家になろうにも掲載。