僕がそばにいる理由

腐男子ミルク

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第27話

(泰輝の言う通り、妊娠のことを言うべきなのだろうか?)
そんな考えが頭をぐるぐる回り、俺は目の前の歩夢の表情を無意識に伺っていた。
けれど、俺があまりにもじっと見つめてしまっていたのか、歩夢が不思議そうに声をかけてきた。

「裕貴、どうしたの?」
「えっ、いや?何でもないよ。」
「あやしいな、本当に?」
「ほんとほんと、大丈夫。」
「ふーん。」
歩夢は疑うように俺をじっと見つめた後、ふっと微笑んだ。その笑顔がなんだか余計に胸を締め付けて、言葉が詰まった。

「ねぇ、先輩。やっぱ何か隠してるよね?」
歩夢の声が少し低くなり、その真剣な響きに思わず肩が跳ねた。
「な、何も隠してないよ。」
慌てて否定するものの、視線は泳ぎ、言葉に自信がなかった。

「先輩、嘘つくの下手だよ。」

歩夢は俺の顔をじっと見つめる。その目が鋭くも優しくて、逃げ道をふさがれるようだった。

「俺、先輩のこと大事だからさ。何かあったらちゃんと言ってほしい。」

その一言に胸が痛くなる。歩夢のまっすぐな気持ちが伝わるほど、自分が黙っていることが罪のように感じた。だけど、言えるはずがない。

「本当に何でもないってば。」
かろうじて搾り出した声は震えていた。

歩夢は少し眉をひそめたけれど、それ以上追及はしてこなかった。ただ、ゆっくりと俺の手を取って握りしめる。

「……わかった。でも、先輩が話したくなったときは、ちゃんと聞くから。それだけは覚えておいて。」

温かい手の感触に、胸がぎゅっと締め付けられる。話したい気持ちと話せない現実の間で揺れる俺は、ただうなずくことしかできなかった。





   裕貴はそわそわと落ち着かない気持ちを紛らわすように台所に向かった。冷蔵庫を開けて食材を取り出し、手早く準備を始める。包丁を握る手元に集中しようとするが、どうしても頭の片隅には歩夢の顔が浮かんでしまう。

「はぁ……」


自然とため息が漏れる。
そのときだった。不意に背後から温かい気配を感じ、次の瞬間、歩夢の腕が後ろからしっかりと裕貴の体を包み込んでいた。

「えっ!?歩夢くん!?」 

驚いて声を上げる裕貴の耳元で、低く甘い声が囁かれる。

「先輩、最近ため息ばっかりついてるね。俺のこと、そんなに気になる?」

耳元に息がかかるその感触に、裕貴は思わず肩をすくめた。火が点いたままだったことに気づき、慌てて手を伸ばそうとするが、その手を歩夢がそっと止める。

「火は消すから大丈夫。それより、先輩が危ないんだよ。」

歩夢がさっと火を止めると、そのまま腕を強く締め、裕貴を逃がさないようにした。

「な、何言ってるの!?料理中だってば!」

裕貴は必死に抵抗するが、歩夢の腕の中で動けなくなってしまう。

「俺ね、先輩がこうやって動揺してる顔、大好きなんだよ。」

歩夢の手がゆっくりと裕貴のシャツの裾に忍び込み、素肌をなぞる。その冷たい指先に思わず息が詰まる裕貴。

「や、やめてってば、歩夢くん……!」

裕貴の声は震えていて、もはや説得力がない。それを分かっているのか、歩夢はさらに手を滑らせ、腰から背中へ、そして腹部へと動かしていく。

「先輩、俺だけのものなんだよね?ねぇ、他の誰にも触れさせたくない。」

そう言いながら、歩夢の手はさらに下へと伸び、裕貴の下着の中に侵入する。指先が肌に触れるその瞬間、裕貴の全身が震えた。

「ちょ、ちょっと!ほんとにやめて……!」

裕貴の抗議は力を失い、声が裏返る。歩夢は耳元でさらに甘い声を囁く。

「先輩が可愛いから悪いんだよ。俺、もっと先輩を感じたい。」

その一言に裕貴は顔を真っ赤にし、背中を反らせるように反応してしまう。全身が熱くなり、抵抗する力さえ湧いてこない。

「……歩夢くんの馬鹿……」

ようやく出たその言葉に、歩夢は微笑んだ。首筋に優しく唇を押し当て、囁く。

「先輩、俺だけを見てよ。俺だけのものなんだから。」

裕貴の全身がビクンと震え、ただ歩夢の腕の中でじっとしていた。

「ねぇ、先輩キスしていい?」


歩夢は俺の頬を掴むと、何も言わずに顔を近づけてきた。その動きに気づいた瞬間、心臓が喉元まで跳ね上がる。

「……えっ、ちょ、歩夢く――」

言いかけた俺の言葉は、歩夢の唇に塞がれた。

突然のキスに頭が真っ白になる。柔らかくて温かい感触が、俺の唇をしっかりと捕まえて離さない。抵抗しようと思っても、彼の手がそっと俺の頬を包んでいて、逃げることもできなかった。

それどころか、歩夢の優しいけれど強い気持ちがそのキスから伝わってきて、俺はただその場で固まるしかなかった。

時間が止まったように感じる。実際には数秒だったのかもしれないけれど、俺には永遠のように長く感じられた。

ようやく歩夢が唇を離すと、彼の瞳が俺をじっと見つめていた。言葉なんていらない。歩夢の瞳には、すべてが詰まっていた。

「……なんで、いきなり……」

俺が消えそうな声で問いかけると、歩夢は軽く笑った。

「先輩が、可愛すぎるから。」

その言葉に胸がズキンと痛む。こんな風に真っ直ぐ向けられる気持ちが、眩しくてどうしようもない。

「ずるいよ……そんなの……」

顔を真っ赤にしながら俯く俺を、歩夢はそっと抱きしめた。彼の体温がじんわりと伝わってきて、どうしようもなく安心すると同時に、胸がまた締め付けられるように苦しくなった。

「先輩、俺、本当に先輩のことが好きだから。」

その一言に、俺はまた何も言えなくなる。ただ抱きしめられながら、歩夢の鼓動を感じていた。





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